88 / 125
第三章 農民が動かす物語
親族襲来
しおりを挟む
今現在僕とお父さんは、村の北門で到着を待っていた。
「ロイよ、大丈夫か?」
すると僕の肩に乗っていたコンが顔を覗き込んで言った。
今コンはおじいさん達がもしかしたらコンの事は知らないかもと思い、鳥の姿になっている。
「大丈夫だよ」
「ふむ、大丈夫であれば良いのだが、ロイにしては珍しく笑っておらんかった気がしてな」
「え、そう?」
そう言われて顔を触ってみるものの、意識したからか何時もの顔に戻っていた。
「うむ。最近は疲れておるようだったがまだ笑っておったからな、それ程までに心配なのか?」
「う~ん、どうなんだろう?」
「ふむ、まあすぐに戻ったのであればまだ大丈夫だろう」
コンはそう言うと門の向こうにある道を見る。
「それに、もうすぐ到着するようだ」
コンがそう言ってから大体10分程が経った頃、ようやく僕にもこちらへと向かう牛馬車が目に入る。
それは王都から僕を迎えに来た牛馬車と同じような形をしている人を乗せるための物で、重量が増え過ぎない為に材質は木のはずだけど、そうとわからないぐらい真っ白な塗料を塗られた牛馬車に金色の模様で丁寧に装飾された牛馬車はとても綺麗だった。
その牛馬車は門の前まで来ると、中から2人の年配の夫婦が降りてきた。
2人は60近くだろうと思うけど背筋がしゃんと伸びていて、特におじいさんの方は体つきが細めだけど結構ガッシリしている強面の人だった。
それとは対象的におばあさんの方はにこやかに笑っていて一見優しそうに見えたけど、目を合わせると何処か怖くてすぐに逸らしてしまった。
白地のシャツに茶色の革のジャケットというとても地味な服を着ていたけど、その服は僕が着るような少しごわつく物ではなく、とても滑らかそうな生地は高いものだとすぐにわかる。
「ゼン」
その降りて来た年配の男性……僕のおじいさんがお父さんの名を呼んだ。
「親父……」
もう10年以上は会っていなかった親との再会に、お父さんは複雑な顔でそう言った。
そしておじいさんはコチラへと歩いて……僕の右肩に手を乗せた。
「君が儂の孫のロイか?」
「え、は、はい」
おじいさんがお父さんを気にする様子もなくそう話しかけて来たことに戸惑う。
「君の事は王都でよく聞く。今は君が開発したと言う揚げパンだが、何処に販売しても非常に売れ行きが良くてな」
僕とおじいさんのすぐ側で、お父さんはその光景にどうしたらいいのかと戸惑っていた。
「それと君があの有名な混沌竜と契約している事も知っておるぞ」
そう言って笑うおじいさん。
「ロイや、こんな所で立ち話をするのは疲れますし、家へ案内しては貰えますか?」
そこへ今まで入村の手続きをしていたおばあさんが微笑みながら言った。
「そうじゃな、孫よ案内して貰えんか」
おじいさんもそれがいいとばかりに頷く。
その、あまりに徹底したお父さんの無視にどうしたらいいのかとお父さんとおじいさんを交互に見る。
「儂がアヤツのことを無視しておるのがそんなに気になるか?」
それに気づいたらしいおじいさんは、どこか渋々と言った様子で不機嫌そうな顔になる。
「はい」
僕はその事を素直に認めると、おじいさんはため息をつく。
「アヤツにはバートン家の跡継ぎとして、儂らが散々金に時間に労力をかけてきたというのに、その全てを無駄にしおったのだ。その後一度だけチャンスをくれてやったにも関わらず、ここに居残る事を決めたのだ。今更何を話す事がある」
おじいさんはそう冷たく言い放つ。
「さぁ、早く案内してはくれぬか?」
「はい……」
僕はそう頷くと、村の門を潜って中に入る。
「ふむ、やはりそこらの村と何も変わらぬな」
「そうですねぇ、元、私達の息子がこの様な場所に住むなんて」
入った途端におじいさんとおばあさんがそう言い放つ。
「確かこの村は野菜中心の出荷であったはずだが、この様な場所で作れるものなど儂らが口にするには値しないな」
更に、おじいさんがそう言った。
ギリィ、とその言葉を聞いた瞬間、何かよくわからない感情が湧き上がって来て、僕は強く歯を噛みしめていた。
(……何でだろ?)
今、何でそんなことをしたのかわからなかった僕は、何も言わずに家まで歩く。
「まあ南の村の野菜は庶民からの売上は良いのだがな。儂らや貴族なんかはここのように状態の悪い実のみを落として全て育てるのではなく、1つの苗に数個だけを残して全て落として育てた高級品を食べるのだよ」
そんな事に気付かないおじいさんは話を続ける。
それは僕がこの村を出てバートン家に来た方がより良い生活が出来ると言いたいんだとは思う。
それから少しするとすぐに家に着いてしまった。
小さな村だから仕方ないけど、これからこの人達と話す事がとても不安で仕方なかった。
これからの話次第で僕の人生だけではなく、家族皆の人生がを左右する。
僕はこの村を出るつもりはないことを、ちゃんと伝えなければと思い直す。
(僕はこの村と、この村の皆との生活が大好きだから)
「ロイよ、大丈夫か?」
すると僕の肩に乗っていたコンが顔を覗き込んで言った。
今コンはおじいさん達がもしかしたらコンの事は知らないかもと思い、鳥の姿になっている。
「大丈夫だよ」
「ふむ、大丈夫であれば良いのだが、ロイにしては珍しく笑っておらんかった気がしてな」
「え、そう?」
そう言われて顔を触ってみるものの、意識したからか何時もの顔に戻っていた。
「うむ。最近は疲れておるようだったがまだ笑っておったからな、それ程までに心配なのか?」
「う~ん、どうなんだろう?」
「ふむ、まあすぐに戻ったのであればまだ大丈夫だろう」
コンはそう言うと門の向こうにある道を見る。
「それに、もうすぐ到着するようだ」
コンがそう言ってから大体10分程が経った頃、ようやく僕にもこちらへと向かう牛馬車が目に入る。
それは王都から僕を迎えに来た牛馬車と同じような形をしている人を乗せるための物で、重量が増え過ぎない為に材質は木のはずだけど、そうとわからないぐらい真っ白な塗料を塗られた牛馬車に金色の模様で丁寧に装飾された牛馬車はとても綺麗だった。
その牛馬車は門の前まで来ると、中から2人の年配の夫婦が降りてきた。
2人は60近くだろうと思うけど背筋がしゃんと伸びていて、特におじいさんの方は体つきが細めだけど結構ガッシリしている強面の人だった。
それとは対象的におばあさんの方はにこやかに笑っていて一見優しそうに見えたけど、目を合わせると何処か怖くてすぐに逸らしてしまった。
白地のシャツに茶色の革のジャケットというとても地味な服を着ていたけど、その服は僕が着るような少しごわつく物ではなく、とても滑らかそうな生地は高いものだとすぐにわかる。
「ゼン」
その降りて来た年配の男性……僕のおじいさんがお父さんの名を呼んだ。
「親父……」
もう10年以上は会っていなかった親との再会に、お父さんは複雑な顔でそう言った。
そしておじいさんはコチラへと歩いて……僕の右肩に手を乗せた。
「君が儂の孫のロイか?」
「え、は、はい」
おじいさんがお父さんを気にする様子もなくそう話しかけて来たことに戸惑う。
「君の事は王都でよく聞く。今は君が開発したと言う揚げパンだが、何処に販売しても非常に売れ行きが良くてな」
僕とおじいさんのすぐ側で、お父さんはその光景にどうしたらいいのかと戸惑っていた。
「それと君があの有名な混沌竜と契約している事も知っておるぞ」
そう言って笑うおじいさん。
「ロイや、こんな所で立ち話をするのは疲れますし、家へ案内しては貰えますか?」
そこへ今まで入村の手続きをしていたおばあさんが微笑みながら言った。
「そうじゃな、孫よ案内して貰えんか」
おじいさんもそれがいいとばかりに頷く。
その、あまりに徹底したお父さんの無視にどうしたらいいのかとお父さんとおじいさんを交互に見る。
「儂がアヤツのことを無視しておるのがそんなに気になるか?」
それに気づいたらしいおじいさんは、どこか渋々と言った様子で不機嫌そうな顔になる。
「はい」
僕はその事を素直に認めると、おじいさんはため息をつく。
「アヤツにはバートン家の跡継ぎとして、儂らが散々金に時間に労力をかけてきたというのに、その全てを無駄にしおったのだ。その後一度だけチャンスをくれてやったにも関わらず、ここに居残る事を決めたのだ。今更何を話す事がある」
おじいさんはそう冷たく言い放つ。
「さぁ、早く案内してはくれぬか?」
「はい……」
僕はそう頷くと、村の門を潜って中に入る。
「ふむ、やはりそこらの村と何も変わらぬな」
「そうですねぇ、元、私達の息子がこの様な場所に住むなんて」
入った途端におじいさんとおばあさんがそう言い放つ。
「確かこの村は野菜中心の出荷であったはずだが、この様な場所で作れるものなど儂らが口にするには値しないな」
更に、おじいさんがそう言った。
ギリィ、とその言葉を聞いた瞬間、何かよくわからない感情が湧き上がって来て、僕は強く歯を噛みしめていた。
(……何でだろ?)
今、何でそんなことをしたのかわからなかった僕は、何も言わずに家まで歩く。
「まあ南の村の野菜は庶民からの売上は良いのだがな。儂らや貴族なんかはここのように状態の悪い実のみを落として全て育てるのではなく、1つの苗に数個だけを残して全て落として育てた高級品を食べるのだよ」
そんな事に気付かないおじいさんは話を続ける。
それは僕がこの村を出てバートン家に来た方がより良い生活が出来ると言いたいんだとは思う。
それから少しするとすぐに家に着いてしまった。
小さな村だから仕方ないけど、これからこの人達と話す事がとても不安で仕方なかった。
これからの話次第で僕の人生だけではなく、家族皆の人生がを左右する。
僕はこの村を出るつもりはないことを、ちゃんと伝えなければと思い直す。
(僕はこの村と、この村の皆との生活が大好きだから)
2
お気に入りに追加
4,073
あなたにおすすめの小説

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)
屯神 焔
ファンタジー
魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』
この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。
そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。
それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。
しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。
正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。
そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。
スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。
迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。
父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。
一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。
そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。
毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。
そんなある日。
『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』
「・・・・・・え?」
祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。
「祠が消えた?」
彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。
「ま、いっか。」
この日から、彼の生活は一変する。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【完結】ゲーム転生、死んだ彼女がそこにいた〜死亡フラグから救えるのは俺しかいない〜
たけのこ
ファンタジー
恋人だったミナエが死んでしまった。葬式から部屋に戻ると、俺はすぐにシミュレーションRPG「ハッピーロード」の電源を入れた。このゲーム、なぜかヒロインのローラ姫が絶対に死ぬストーリーになっている。世界中のゲーマーがローラ姫の死なない道を見つけようとしているが、未だそれを達成したものはいない。そんなゲームに、気がつけば俺は転生していた。しかも、生まれ変わった俺の姿は、盗賊団の下っ端ゴブリンだった。俺は、ゲームの運命に抗いながら、なんとかこの世界で生き延び、死の運命にあるローラ姫を救おうとする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる