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第三章 農民が動かす物語
髪
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「ロイ君に髪を梳いて貰うの、いつぶりだったかな」
「もう5年近く前じゃ無かったかな?」
今僕とソフィは布団の上に座っている。
「それじゃあ始めるね」
「うん!」
僕は櫛をいれる前に一声掛けてから目の粗い櫛で毛先から梳く。
これをめんどうくさがると絡まった髪を抜いてしまうのでかなり痛いのだ。
そして黙々と絡んでしまわないよう注意しながら梳いているとソフィが笑う。
「えへへ、やっぱりロイ君って上手だね」
「そうかな?ミリィの髪を梳くのと同じ感じなんだけど」
「そうだよ、だってお兄ちゃんに頼むと雑にするから痛いの」
それを聞いて剣が好きで裁縫などといった事がからっきしだったことを思い出す。
「あはは、確かにレン兄はそんなに器用な方じゃないもんね」
ちなみにレン兄と呼ぶのは昔そう呼べと言われてからずっと続けているからだ。
「でもロイ君のは凄く丁寧で全く痛くなくて、とても気持ちがいいの」
「それなら良かった。とりあえずこんなものかな」
僕はある程度整った髪を見て今度は目の細かい櫛と持ち替える。
そしてもう一度毛先から梳いていく。
先程までのは髪をほぐすため、今のは髪を綺麗に整えるためだ。
「ソフィの髪って綺麗だよね」
僕は前々から思っていたことを言う。
「そうかな?」
「うん!凄くサラサラしてて触り心地いいし、それに僕はこのソフィの髪の色が好きなんだ」
そう何気なく言った途端、ソフィの肩がビクッと跳ねた。
「い、今ロイ君なんて……?」
「ん?ソフィの髪は凄くサラサラしてるなぁって」
「そ、そのあと」
「僕はソフィの髪の色、好きだなぁって」
よく聞こえなかったのかなと首を捻りながらそう言うと、ソフィが少しだけ俯いて黙り込んでしまった。
「どうかしたの?」
「う、ううん!何でもないよ!」
明らかに何でも無くは無さそうだな反応だったけど、どことなく嬉しそうな感じだったのでそれ以上聞くことはせずに髪を梳く。
それから少しして根元から毛先までスーッと櫛が通る事を確認して手を離す。
「終わったよ」
「ありがとうロイ君」
そう言って僕の方に振り向く。
その時、梳いたばかりの髪がサラサラと流れる。
ソフィの艶のある薄い水色の髪が流れる様はとても美しくてつい見惚れてしまう。
「どうしたの?」
「えっと、ちょっとソフィの髪が凄く綺麗で見惚れてたの」
そう素直に答えたらソフィは何故かすぐに顔を前に向けてしまった。
その時にまた揺れる髪を見て僕は笑顔になる。
「えっと、そろそろ下に降りよう?もうご飯の準備も出来てるはずだよ」
「うんわかった!」
《コンside》
我は今少しばかり考え事をしていた。
目の前では何処か嬉しそうな横顔を見せるソフィと、その髪を梳いているロイが居る。
(ふむ、毛づくろいか……)
全身が硬い鱗に包まれた毛の無い竜種にとっては縁のない行為だが、勿論そのような行為がこの世にあることぐらいは知っている。
竜種は体を洗う目的なら水浴びをすればいいだけなので、生まれて間もない子を洗う以外では仲間内でそういう目的で触れ合うことはない。
(しかし人という生き物が髪を触られることはあまり好まないと聞いたのだが)
人と竜が交わって出来た竜人は人に近い姿の際には髪の毛がある。
しかし幾ら同じ仲間でも余程気を許していなければ触られることを嫌うのだ。
竜はただ触られるだけならあまり気にする事はないが竜人は気にする者がほとんどだ。
それもオスよりメスの方が触られるのを嫌う傾向が顕著に現れており、それは恐らく竜ではなく人から来た性質のはずである。
であればロイに髪を触らせるというのはかなり気を許していると予想出来る。
(その上、嫌がるどころか触られてすごく嬉しそうにしておる。これは確か……ああ、そういうことだったか)
と、そこでようやくその理由に思い至った。
(ソフィはロイの事が好きなのだな)
メスはオスに比べ触られる事への拒否感が強い。
しかしそれは同性においては拒否感が薄い傾向にあり、異性に対しては特定の人物にのみ触らせる事が多かったのだ。
そして異性に触ることを良しとするのは自身の家族、もしくは子を成す事を望む相手なのだ。
(ふむ、これは面白そうだ)
しかし、気づいた事をロイに告げるのはソフィの本意ではない筈。
その上我が気づいた事を告げれば我がロイに告げぬか心配になるはずなので黙っておくことが得策だろうと考える。
(ふふ、さてロイは何時になれば気付くのか、楽しみにさせて貰おうではないか)
「もう5年近く前じゃ無かったかな?」
今僕とソフィは布団の上に座っている。
「それじゃあ始めるね」
「うん!」
僕は櫛をいれる前に一声掛けてから目の粗い櫛で毛先から梳く。
これをめんどうくさがると絡まった髪を抜いてしまうのでかなり痛いのだ。
そして黙々と絡んでしまわないよう注意しながら梳いているとソフィが笑う。
「えへへ、やっぱりロイ君って上手だね」
「そうかな?ミリィの髪を梳くのと同じ感じなんだけど」
「そうだよ、だってお兄ちゃんに頼むと雑にするから痛いの」
それを聞いて剣が好きで裁縫などといった事がからっきしだったことを思い出す。
「あはは、確かにレン兄はそんなに器用な方じゃないもんね」
ちなみにレン兄と呼ぶのは昔そう呼べと言われてからずっと続けているからだ。
「でもロイ君のは凄く丁寧で全く痛くなくて、とても気持ちがいいの」
「それなら良かった。とりあえずこんなものかな」
僕はある程度整った髪を見て今度は目の細かい櫛と持ち替える。
そしてもう一度毛先から梳いていく。
先程までのは髪をほぐすため、今のは髪を綺麗に整えるためだ。
「ソフィの髪って綺麗だよね」
僕は前々から思っていたことを言う。
「そうかな?」
「うん!凄くサラサラしてて触り心地いいし、それに僕はこのソフィの髪の色が好きなんだ」
そう何気なく言った途端、ソフィの肩がビクッと跳ねた。
「い、今ロイ君なんて……?」
「ん?ソフィの髪は凄くサラサラしてるなぁって」
「そ、そのあと」
「僕はソフィの髪の色、好きだなぁって」
よく聞こえなかったのかなと首を捻りながらそう言うと、ソフィが少しだけ俯いて黙り込んでしまった。
「どうかしたの?」
「う、ううん!何でもないよ!」
明らかに何でも無くは無さそうだな反応だったけど、どことなく嬉しそうな感じだったのでそれ以上聞くことはせずに髪を梳く。
それから少しして根元から毛先までスーッと櫛が通る事を確認して手を離す。
「終わったよ」
「ありがとうロイ君」
そう言って僕の方に振り向く。
その時、梳いたばかりの髪がサラサラと流れる。
ソフィの艶のある薄い水色の髪が流れる様はとても美しくてつい見惚れてしまう。
「どうしたの?」
「えっと、ちょっとソフィの髪が凄く綺麗で見惚れてたの」
そう素直に答えたらソフィは何故かすぐに顔を前に向けてしまった。
その時にまた揺れる髪を見て僕は笑顔になる。
「えっと、そろそろ下に降りよう?もうご飯の準備も出来てるはずだよ」
「うんわかった!」
《コンside》
我は今少しばかり考え事をしていた。
目の前では何処か嬉しそうな横顔を見せるソフィと、その髪を梳いているロイが居る。
(ふむ、毛づくろいか……)
全身が硬い鱗に包まれた毛の無い竜種にとっては縁のない行為だが、勿論そのような行為がこの世にあることぐらいは知っている。
竜種は体を洗う目的なら水浴びをすればいいだけなので、生まれて間もない子を洗う以外では仲間内でそういう目的で触れ合うことはない。
(しかし人という生き物が髪を触られることはあまり好まないと聞いたのだが)
人と竜が交わって出来た竜人は人に近い姿の際には髪の毛がある。
しかし幾ら同じ仲間でも余程気を許していなければ触られることを嫌うのだ。
竜はただ触られるだけならあまり気にする事はないが竜人は気にする者がほとんどだ。
それもオスよりメスの方が触られるのを嫌う傾向が顕著に現れており、それは恐らく竜ではなく人から来た性質のはずである。
であればロイに髪を触らせるというのはかなり気を許していると予想出来る。
(その上、嫌がるどころか触られてすごく嬉しそうにしておる。これは確か……ああ、そういうことだったか)
と、そこでようやくその理由に思い至った。
(ソフィはロイの事が好きなのだな)
メスはオスに比べ触られる事への拒否感が強い。
しかしそれは同性においては拒否感が薄い傾向にあり、異性に対しては特定の人物にのみ触らせる事が多かったのだ。
そして異性に触ることを良しとするのは自身の家族、もしくは子を成す事を望む相手なのだ。
(ふむ、これは面白そうだ)
しかし、気づいた事をロイに告げるのはソフィの本意ではない筈。
その上我が気づいた事を告げれば我がロイに告げぬか心配になるはずなので黙っておくことが得策だろうと考える。
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