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第一章 僕は普通の農民です

少しだけ変わった日常

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 従魔召喚の儀から3日目の朝4時半、僕はいつも通りの時間に目を覚ます。
「ん、ふああぁぁぁ……よし!」
 2度寝の誘惑を振り切り、ちょっとだけ勢いをつけて布団から立ち上がる。
「む、もう起きるのか。本当にロイは朝早いな」
 隣に母に頼んで昨日完成したコン専用のクッション兼寝床からコンが首を持ち上げる。
「コンはまだ寝てていいよ?」
「ロイが起きるのであれば我も起きよう」
    僕は寝間着から作業服に着替えて顔を洗い、5時に庭に出て家の裏にある家畜小屋に向かう。
 コンには同じ時間に起きるのならと、昨日野菜へ水をやる量を教えてあるのでそちらの作業を頼んでいる。

「よいしょっと。ふぅ、次は乳搾り……」
 朝の水やりをコンに任せた分、何時もより早く餌やりを終わらせる。
「おはよ、ロイ」
「おはよう父さん」
「おお、もう餌やり終わったのか」
 と、父さんが来た所でコンも家畜小屋に飛んできた。
「ロイ、水やり終わらせてきたぞ」
「お疲れ様」
「なるほど、コンが水やりをしていたのか!流石はコンってところだな!」
 父さんはそう言ってはっはっはと笑う。
「父さん、笑うのはいいけど先にちゃんと乳搾りは終わらせてからね」
「おお、そうだったそうだった」
 そして僕と父さんはいそいそと作業に勤しみ、その間コンはずっと作業が終わるのを待っていた。

 そして朝の作業を終わらせて家に戻ると、何時もより早く終わったためまだ母と妹は朝食を作っている所だった。
「あ、おはよ~お兄ちゃん、コンちゃん」
「おはようミリィ、母さん」
「あら、おはよう」
 ちなみに父さんは母さん達と同じ時間に起床するため先に挨拶はしている。
 それから少ししてご飯が出来上がり、机の上に並べていく。
「「「「「いただきます」」」」」

 そして何時もの食卓の僕の右側にはコンが居た。 
 ちなみにコンが言うには普通の従魔は主の魔力をエネルギーに変換するとか、コン自身はそもそもエネルギー補給が必要でないから食事は必要でないとか言っていたが、もう家族の一員という事で食べる量は少しではあるが、コンも食卓を一緒に囲んでいる。

 そしてご飯を食べ終えたら畑へ向かい、残り少しの耕し終えていない土地を耕し始める。
「毎日毎日辛くはないのか?」
 コンには別にどこかで遊んでてもいいよとは言っているのだが、耕している間もずっと側に居ると言うのでまあそれでもいいかと放置している。
「そりゃ毎日大変だけどさ、でも辛くはないよ。こうして汗水たらして働いて育てた野菜はとっても美味しいんだから」
「そうなのか?」
「それに、もう耕すのは今日で終わり!明日には色んな野菜の苗を植えるよ。今朝水やりをしたあの苗はここに移し替えるんだ」
「ここに直接種をまくのではいけないのか?」
「もちろん野菜によってはそうなんだけど、家は夏に育ててる野菜は苗を別で育てた方が楽なのが多いから」
「なかなか難しいのだな」
「冬は寒さに強い根菜を植えるから、その時はまた別の畑に直接撒くけどね」
「別の畑を使うのか?」
「そうだよ。一年中同じ畑を使い続けてたら土の栄養が枯れて美味しい野菜が育たないからね」
「ふぅむ、難しいな……」
「いきなり全部理解しなくてもいいよ。もっとゆっくりと覚えたらいいと思うよ」
 そんなことを話している内に畑を耕し終わり、丁度お昼になった。

「ロイくーん、ご飯持ってきたよー!」
「お兄ちゃーん、一緒に食べよー!」
 今日はソフィと、珍しく一緒に妹のミリィが来た。
「こんにちはソフィ。ミリィ、今日学校はどうしたんだ?」
 この国では12歳までの子供は皆学校に通い必要最低限の知識とマナーを学ぶ事になっている。
 そのため卒業した僕とソフィはさておき、本来ミリィは学校に居るはずである。
「昨日言ったじゃん、今日は先生が午後から近くの街まで行くから午前中までだって」
「あ、そうだったね」
「それより早く食べないと、あんまり美味しくなくなっちゃうよ?」
 と、虹亀を抱いているソフィが言う。
「あれ、持ってきたんじゃないんだ。まあ丁度終わったから家に……」
「ちゃんと持って来てるよ、もう。ルーちゃんの闇魔法でしまって貰ってるの」
 ルーちゃんとはソフィの抱いている虹亀のことで、名前の理由は何となく浮かんだからだそう。
「ルーちゃんお願い」
 とソフィがルーに言うと、ルーは口を開けてその先に黒い穴が出来上がる。
 ソフィがその中に手を入れてから抜くと、そこには昼食を入れたバスケットが握られていた。
「それじゃあお昼にしようか」

 そして俺がコンに水生成魔法で出してもらった水で手を洗い、3人で手を合わせる。
「「「「「いただきます(キュルル)」」」」」

 そうして3人と2匹でわいわいと昼食を楽しみ、食べ終えたあと家に帰ろうとしたのだ。
 今こちらに全力で走ってくる父さんが来るまでは。



 僕はコンが来たのはたったの3日前であったというのに、コンのいる生活に慣れきってしまいすっかり忘れてしまっていたのだ。

 コンは世界中で有名な混沌竜であったことを。
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