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4.甘い味
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宏也の頭の中が白く弾けるまでそれは続き、ベッドで目を覚ましたら外は暗かった。ずるりと雄が抜き出され、全身をけいれんさせて精液の臭いを吸いながら、懸命に呼吸をした。
「明日の仕事は休みなさい、少々酷くしてしまった」
言われなくても、月曜日の休みは決まっていた。二年間、毎週これだ。流石に月曜日に休む宏也を快く思っていない同僚もいて、社内の昇進話とは縁がなかった。上司の文人が説明を入れてくれていると分かっていても、呑気に休んでいられない。
「もう、大丈夫です、月曜日は出ます」
肩を小刻みに揺らしながら、文人の胸の中で答えた。
「なら、宏也くんは家を引き払って、俺の家に越して来るんだよな」
すかさず交換条件を持ち出してくる辺り、文人は恋愛に慣れている。宏也の胸の炎がちりつく。
「それよりケーキを食べましょう」
話を逸らした。
「そうだな、宏也くんの買ってきてくれたケーキだ、有り難くいただくよ、同居の話はその後だ、不動産に連絡を入れておくよ」
約束を紡いでくれる。律儀なところは出会ってから変わらない。こちらの意見をくみ取る振りして、平然と事を進めようとする強引なところも好きだが。
二人でケーキの箱を開き、最初に宏也が選ぶことになった。
「文人さんはなにがいいですか?」
「俺はいいから、宏也くんの好きなモンブランを選びなさい」
「でも、文人さんもモンブランお好きでしたよね」
「ショートケーキの気分なんだ、正統派を堪能しようかな」
そう言った文人はショートケーキを鷲掴みにして、行儀悪く口に含んだ。それがあまりに美味しそうなものだから、宏也も続いてモンブランに手をつける。
「美味しい」
頬が落ちる甘さを喉に流し込む。宏也は指についた生クリームを舐めた。それを横から文人にかすめ取られ、口に頬張られた。優しくねぶるように丹念に味わう彼の横顔に、愛が溢れていた。
「食べさせてください」
白いホイップクリームがついた文人の指を、宏也も口に含んだ。定番の味はまるで自分みたいだ。会社でいつでも顔を見られるから、平気な顔をして、さようならを言おうとする。
「いたずらっ子だな」
文人の舌が宏也の指から腕へと流れ、脇に辿り着く。乳首をしゃぶったら、鎖骨から喉仏、顎の骨を堪能して、下唇を舐め上げる。
「文人さんの好きなお味ですか?」
膝をこすり合わせた宏也は、文人の乱れた髪を後ろに撫でつける。
「ああ、この味を探していた」
少しの間も惜しくて、宏也は願いを込めた。
「僕もです」
まだ不安に支配されている文人よりも先に唇を重ねた。それはとても優しくて甘い味だった。手をつないだまま、愛していますと笑いかけた。
終わり
「明日の仕事は休みなさい、少々酷くしてしまった」
言われなくても、月曜日の休みは決まっていた。二年間、毎週これだ。流石に月曜日に休む宏也を快く思っていない同僚もいて、社内の昇進話とは縁がなかった。上司の文人が説明を入れてくれていると分かっていても、呑気に休んでいられない。
「もう、大丈夫です、月曜日は出ます」
肩を小刻みに揺らしながら、文人の胸の中で答えた。
「なら、宏也くんは家を引き払って、俺の家に越して来るんだよな」
すかさず交換条件を持ち出してくる辺り、文人は恋愛に慣れている。宏也の胸の炎がちりつく。
「それよりケーキを食べましょう」
話を逸らした。
「そうだな、宏也くんの買ってきてくれたケーキだ、有り難くいただくよ、同居の話はその後だ、不動産に連絡を入れておくよ」
約束を紡いでくれる。律儀なところは出会ってから変わらない。こちらの意見をくみ取る振りして、平然と事を進めようとする強引なところも好きだが。
二人でケーキの箱を開き、最初に宏也が選ぶことになった。
「文人さんはなにがいいですか?」
「俺はいいから、宏也くんの好きなモンブランを選びなさい」
「でも、文人さんもモンブランお好きでしたよね」
「ショートケーキの気分なんだ、正統派を堪能しようかな」
そう言った文人はショートケーキを鷲掴みにして、行儀悪く口に含んだ。それがあまりに美味しそうなものだから、宏也も続いてモンブランに手をつける。
「美味しい」
頬が落ちる甘さを喉に流し込む。宏也は指についた生クリームを舐めた。それを横から文人にかすめ取られ、口に頬張られた。優しくねぶるように丹念に味わう彼の横顔に、愛が溢れていた。
「食べさせてください」
白いホイップクリームがついた文人の指を、宏也も口に含んだ。定番の味はまるで自分みたいだ。会社でいつでも顔を見られるから、平気な顔をして、さようならを言おうとする。
「いたずらっ子だな」
文人の舌が宏也の指から腕へと流れ、脇に辿り着く。乳首をしゃぶったら、鎖骨から喉仏、顎の骨を堪能して、下唇を舐め上げる。
「文人さんの好きなお味ですか?」
膝をこすり合わせた宏也は、文人の乱れた髪を後ろに撫でつける。
「ああ、この味を探していた」
少しの間も惜しくて、宏也は願いを込めた。
「僕もです」
まだ不安に支配されている文人よりも先に唇を重ねた。それはとても優しくて甘い味だった。手をつないだまま、愛していますと笑いかけた。
終わり
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