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2 睦美視点
睦美の操縦
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それならばと睦美は、級友と連絡先を交換しても良いが遊びに行くな、と一昔前みたいな厳しい躾をしていた。
自分のエゴによって浩太を振り回している自覚こそある。携帯電話を持たせたくなかった理由は、いるであろう友人と学校の外でも接して欲しくなかったからだ。食事中や二人で部屋に籠もっている時でも着信音が鳴ると、携帯電話の画面を確認する浩太の横顔に苛立ちを覚えていた。
メッセージだって制限させたかったが、「浩太が学校に馴染めないようになってしまうと、いじめに発展してしまう」と母から不吉な可能性を示唆される。
全てを考慮すれば睦美は許さないといけない。だから、すんでの所で否定の声が口から出ないよう、自分の喉元を締めて抑えていた。
もしも、浩太が自分たちの関係を、ネットで検索でもしたらどうしよう。『兄弟でセックスってするの? お兄ちゃんのちんちんを舐めたり、お尻にいれたりするのは普通なの?』なんて、友人に聞いたらどうしようか。
そう、自分は犯罪者で、自己保身に走る卑劣な男なのだと、見たくないと恐れていた現実がチラつく。他者が介在して、浩太から離されたくない。そのためならば、卑怯な手だって取るつもりだ。
「お兄ちゃん?」
機嫌を伺うような浩太の声で我に返る。
「嫌だったらごめんね、勝手に先生に見せたりして、断るから」
浩太の顔に陰りが差す。それなのに睦美は、眼下に見える浩太の赤い乳首に視線を下ろしていた。舌を這わせたい思いを抑え、喉を上下させる。
「断ってくれ、俺はあまり好きじゃないから・・・・・・」
我ながら低い声だ。不機嫌さを感じさせてしまわないか恐れて、浩太の双眸に視線を戻す。
「お兄ちゃんは浩太と一緒にいる時間を減らしたくないんだ」
浩太の瞳は黒目がちだ。鼻先が触れる近さでも、自分の姿を映さないほど暗い。
「うん、分かった」
素直な浩太の返事を耳にする。この子はなんと健気でいて可哀想なのか。必死に睦実に笑顔を向ける精神と、自身に降りかかっている悲劇にも気づけないでいる。睦美の欲望を煽り、こんなにも簡単に受け入れてしまう、そんな浩太が心配であった。
気を取り直そうと、ベッドサイドの机に置いた浩太の携帯電話を手に取る。ロック画面解除の暗証番号は睦美の誕生日であった。慣れた手つきでホーム画面を開く。
浩太に一言も了承を求めないまま、写真アプリを立ち上げて、画像欄をスクロールする。自分が映った画像を探しだすと、即座に削除をした。続けて画像を目で追い、他者が眉をひそめる物、自分たちの関係を害する類いの画像がないか眼を光らせる。
浩太は年相応の感性を持っている。教室で友人が映り込むものや、学校の帰りに撮ったであろう見慣れた風景が保存されていた。
一方、睦美の携帯電話に保存している写真は、浩太で溢れかえっていた。自然の風景や季節の流れなんて、浩太の背景としてのおまけ程度であった。この先、浩太が自分の傍から逃げだそうとしたときの保険として、きわどい写真も撮りためてある。
「お兄ちゃんの写真も見せて」
「・・・・・・いいよ」
浩太に乗りかかったままの身体を起こして、脱ぎ散らかした服の下に置いた鞄の中から、携帯電話を取り出す。浩太に見せても問題はなかった。ただ、これが日常であり、普通なのだと教え込ませるために丁度良いツールであった。
「ほら」
「うん、ありがとう」
浩太が受け取ると、仰向けのまま画面に視線を移す。
「体育の着替えの時にね気をつけてるんだよ、だから、あまり跡を付けないで」
睦美との行為を意識する浩太の背伸びした口調は、ゾクッとくるものがある。
「・・・・・・ああ、分かった」
自分のエゴによって浩太を振り回している自覚こそある。携帯電話を持たせたくなかった理由は、いるであろう友人と学校の外でも接して欲しくなかったからだ。食事中や二人で部屋に籠もっている時でも着信音が鳴ると、携帯電話の画面を確認する浩太の横顔に苛立ちを覚えていた。
メッセージだって制限させたかったが、「浩太が学校に馴染めないようになってしまうと、いじめに発展してしまう」と母から不吉な可能性を示唆される。
全てを考慮すれば睦美は許さないといけない。だから、すんでの所で否定の声が口から出ないよう、自分の喉元を締めて抑えていた。
もしも、浩太が自分たちの関係を、ネットで検索でもしたらどうしよう。『兄弟でセックスってするの? お兄ちゃんのちんちんを舐めたり、お尻にいれたりするのは普通なの?』なんて、友人に聞いたらどうしようか。
そう、自分は犯罪者で、自己保身に走る卑劣な男なのだと、見たくないと恐れていた現実がチラつく。他者が介在して、浩太から離されたくない。そのためならば、卑怯な手だって取るつもりだ。
「お兄ちゃん?」
機嫌を伺うような浩太の声で我に返る。
「嫌だったらごめんね、勝手に先生に見せたりして、断るから」
浩太の顔に陰りが差す。それなのに睦美は、眼下に見える浩太の赤い乳首に視線を下ろしていた。舌を這わせたい思いを抑え、喉を上下させる。
「断ってくれ、俺はあまり好きじゃないから・・・・・・」
我ながら低い声だ。不機嫌さを感じさせてしまわないか恐れて、浩太の双眸に視線を戻す。
「お兄ちゃんは浩太と一緒にいる時間を減らしたくないんだ」
浩太の瞳は黒目がちだ。鼻先が触れる近さでも、自分の姿を映さないほど暗い。
「うん、分かった」
素直な浩太の返事を耳にする。この子はなんと健気でいて可哀想なのか。必死に睦実に笑顔を向ける精神と、自身に降りかかっている悲劇にも気づけないでいる。睦美の欲望を煽り、こんなにも簡単に受け入れてしまう、そんな浩太が心配であった。
気を取り直そうと、ベッドサイドの机に置いた浩太の携帯電話を手に取る。ロック画面解除の暗証番号は睦美の誕生日であった。慣れた手つきでホーム画面を開く。
浩太に一言も了承を求めないまま、写真アプリを立ち上げて、画像欄をスクロールする。自分が映った画像を探しだすと、即座に削除をした。続けて画像を目で追い、他者が眉をひそめる物、自分たちの関係を害する類いの画像がないか眼を光らせる。
浩太は年相応の感性を持っている。教室で友人が映り込むものや、学校の帰りに撮ったであろう見慣れた風景が保存されていた。
一方、睦美の携帯電話に保存している写真は、浩太で溢れかえっていた。自然の風景や季節の流れなんて、浩太の背景としてのおまけ程度であった。この先、浩太が自分の傍から逃げだそうとしたときの保険として、きわどい写真も撮りためてある。
「お兄ちゃんの写真も見せて」
「・・・・・・いいよ」
浩太に乗りかかったままの身体を起こして、脱ぎ散らかした服の下に置いた鞄の中から、携帯電話を取り出す。浩太に見せても問題はなかった。ただ、これが日常であり、普通なのだと教え込ませるために丁度良いツールであった。
「ほら」
「うん、ありがとう」
浩太が受け取ると、仰向けのまま画面に視線を移す。
「体育の着替えの時にね気をつけてるんだよ、だから、あまり跡を付けないで」
睦美との行為を意識する浩太の背伸びした口調は、ゾクッとくるものがある。
「・・・・・・ああ、分かった」
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