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メリダはエレーヌにしか話したことが無いはずの『聖女』について、目の前にいる得体のしれない男が、唐突に質問してきたことを不審に思った。
わざわざ『メリダの家に伝わっているか』と訊いてくる意図も不明だ。
「その話はお嬢様にしかしたことがないのに・・・。なぜ、知っているのです!?」
「ほう、やはりお前の家には伝わっていたか。それでは『西の王子』に聞き覚えは?」
「銀の髪に赤い瞳・・・まさか・・・!」
メリダは、上から下まで探るようにカノンを見た。
「私が、『西の王子』カノンだ。そして、エレーヌは・・・」
「お嬢様があの『聖女』・・・?あの話はおとぎ話ではなく、本当にあったと・・・」
カノンは頷いて続ける。
「そういうことだ。だが、私の言葉など、お前にはにわかには信じられまい」
「自覚はあるようですね。確かにそれらしい話ではありますが、よくよく考えれば、あの『西の王子』が目の前にいるなど、冗談にしても質が悪い・・・信用するに値しません!」
「そうだろうな。ならば、私は今この身に誓約魔術を掛けよう。そして、お前に一切の嘘はつかぬと誓う」
カノンはそう告げると、空中に複雑な図形を描いて浮かび上がらせ、そこへ静かに手を添えた。
それを見たメリダは胡散臭いものでも眺めるような表情で、カノンに言い放った。
「それらしい動きも交えながら、巧妙に嘘をつくのが常套手段なのですか?確かに、それらしく見えますね。
こんな見事な手品まで使えるのならば、私を騙すことなど容易いでしょう。なぜなら、私には魔術が掛ったかどうかなど確認する術が無いのですから・・・」
どこまでも疑いの姿勢を解かないメリダに溜息をつくカノン。
「自業自得とはいえ、そこまで信用が無いとはな・・・。だが、お前には私が魔術を掛けたかどうか、真偽を見分ける力が既に備わっている、と言ったらどうする?」
「それは嫌味ですか?私は魔力も持たないただの人間ですが・・・」
「ただの人間が、私の力に抵抗する素養を持っていたとは笑わせてくれる。
メリダ、お前は私と聖女の最期の縁を繋いだ『司祭』の末裔だ。ならば、自覚がなくとも、あの男が聖女から受けた『祝福』の力を受け継いでいるだろう?意識してみるが良い」
わざわざ『メリダの家に伝わっているか』と訊いてくる意図も不明だ。
「その話はお嬢様にしかしたことがないのに・・・。なぜ、知っているのです!?」
「ほう、やはりお前の家には伝わっていたか。それでは『西の王子』に聞き覚えは?」
「銀の髪に赤い瞳・・・まさか・・・!」
メリダは、上から下まで探るようにカノンを見た。
「私が、『西の王子』カノンだ。そして、エレーヌは・・・」
「お嬢様があの『聖女』・・・?あの話はおとぎ話ではなく、本当にあったと・・・」
カノンは頷いて続ける。
「そういうことだ。だが、私の言葉など、お前にはにわかには信じられまい」
「自覚はあるようですね。確かにそれらしい話ではありますが、よくよく考えれば、あの『西の王子』が目の前にいるなど、冗談にしても質が悪い・・・信用するに値しません!」
「そうだろうな。ならば、私は今この身に誓約魔術を掛けよう。そして、お前に一切の嘘はつかぬと誓う」
カノンはそう告げると、空中に複雑な図形を描いて浮かび上がらせ、そこへ静かに手を添えた。
それを見たメリダは胡散臭いものでも眺めるような表情で、カノンに言い放った。
「それらしい動きも交えながら、巧妙に嘘をつくのが常套手段なのですか?確かに、それらしく見えますね。
こんな見事な手品まで使えるのならば、私を騙すことなど容易いでしょう。なぜなら、私には魔術が掛ったかどうかなど確認する術が無いのですから・・・」
どこまでも疑いの姿勢を解かないメリダに溜息をつくカノン。
「自業自得とはいえ、そこまで信用が無いとはな・・・。だが、お前には私が魔術を掛けたかどうか、真偽を見分ける力が既に備わっている、と言ったらどうする?」
「それは嫌味ですか?私は魔力も持たないただの人間ですが・・・」
「ただの人間が、私の力に抵抗する素養を持っていたとは笑わせてくれる。
メリダ、お前は私と聖女の最期の縁を繋いだ『司祭』の末裔だ。ならば、自覚がなくとも、あの男が聖女から受けた『祝福』の力を受け継いでいるだろう?意識してみるが良い」
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