19 / 29
18
しおりを挟む
メリダはエレーヌにしか話したことが無いはずの『聖女』について、目の前にいる得体のしれない男が、唐突に質問してきたことを不審に思った。
わざわざ『メリダの家に伝わっているか』と訊いてくる意図も不明だ。
「その話はお嬢様にしかしたことがないのに・・・。なぜ、知っているのです!?」
「ほう、やはりお前の家には伝わっていたか。それでは『西の王子』に聞き覚えは?」
「銀の髪に赤い瞳・・・まさか・・・!」
メリダは、上から下まで探るようにカノンを見た。
「私が、『西の王子』カノンだ。そして、エレーヌは・・・」
「お嬢様があの『聖女』・・・?あの話はおとぎ話ではなく、本当にあったと・・・」
カノンは頷いて続ける。
「そういうことだ。だが、私の言葉など、お前にはにわかには信じられまい」
「自覚はあるようですね。確かにそれらしい話ではありますが、よくよく考えれば、あの『西の王子』が目の前にいるなど、冗談にしても質が悪い・・・信用するに値しません!」
「そうだろうな。ならば、私は今この身に誓約魔術を掛けよう。そして、お前に一切の嘘はつかぬと誓う」
カノンはそう告げると、空中に複雑な図形を描いて浮かび上がらせ、そこへ静かに手を添えた。
それを見たメリダは胡散臭いものでも眺めるような表情で、カノンに言い放った。
「それらしい動きも交えながら、巧妙に嘘をつくのが常套手段なのですか?確かに、それらしく見えますね。
こんな見事な手品まで使えるのならば、私を騙すことなど容易いでしょう。なぜなら、私には魔術が掛ったかどうかなど確認する術が無いのですから・・・」
どこまでも疑いの姿勢を解かないメリダに溜息をつくカノン。
「自業自得とはいえ、そこまで信用が無いとはな・・・。だが、お前には私が魔術を掛けたかどうか、真偽を見分ける力が既に備わっている、と言ったらどうする?」
「それは嫌味ですか?私は魔力も持たないただの人間ですが・・・」
「ただの人間が、私の力に抵抗する素養を持っていたとは笑わせてくれる。
メリダ、お前は私と聖女の最期の縁を繋いだ『司祭』の末裔だ。ならば、自覚がなくとも、あの男が聖女から受けた『祝福』の力を受け継いでいるだろう?意識してみるが良い」
わざわざ『メリダの家に伝わっているか』と訊いてくる意図も不明だ。
「その話はお嬢様にしかしたことがないのに・・・。なぜ、知っているのです!?」
「ほう、やはりお前の家には伝わっていたか。それでは『西の王子』に聞き覚えは?」
「銀の髪に赤い瞳・・・まさか・・・!」
メリダは、上から下まで探るようにカノンを見た。
「私が、『西の王子』カノンだ。そして、エレーヌは・・・」
「お嬢様があの『聖女』・・・?あの話はおとぎ話ではなく、本当にあったと・・・」
カノンは頷いて続ける。
「そういうことだ。だが、私の言葉など、お前にはにわかには信じられまい」
「自覚はあるようですね。確かにそれらしい話ではありますが、よくよく考えれば、あの『西の王子』が目の前にいるなど、冗談にしても質が悪い・・・信用するに値しません!」
「そうだろうな。ならば、私は今この身に誓約魔術を掛けよう。そして、お前に一切の嘘はつかぬと誓う」
カノンはそう告げると、空中に複雑な図形を描いて浮かび上がらせ、そこへ静かに手を添えた。
それを見たメリダは胡散臭いものでも眺めるような表情で、カノンに言い放った。
「それらしい動きも交えながら、巧妙に嘘をつくのが常套手段なのですか?確かに、それらしく見えますね。
こんな見事な手品まで使えるのならば、私を騙すことなど容易いでしょう。なぜなら、私には魔術が掛ったかどうかなど確認する術が無いのですから・・・」
どこまでも疑いの姿勢を解かないメリダに溜息をつくカノン。
「自業自得とはいえ、そこまで信用が無いとはな・・・。だが、お前には私が魔術を掛けたかどうか、真偽を見分ける力が既に備わっている、と言ったらどうする?」
「それは嫌味ですか?私は魔力も持たないただの人間ですが・・・」
「ただの人間が、私の力に抵抗する素養を持っていたとは笑わせてくれる。
メリダ、お前は私と聖女の最期の縁を繋いだ『司祭』の末裔だ。ならば、自覚がなくとも、あの男が聖女から受けた『祝福』の力を受け継いでいるだろう?意識してみるが良い」
1
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
義姉でも妻になれますか? 第一王子の婚約者として育てられたのに、候補から外されました
甘い秋空
恋愛
第一王子の婚約者として育てられ、同級生の第二王子のお義姉様だったのに、候補から外されました! え? 私、今度は第二王子の義妹ちゃんになったのですか! ひと風呂浴びてスッキリしたら…… (全4巻で完結します。サービスショットがあるため、R15にさせていただきました。)
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
【完結】運命の番じゃないけれど
凛蓮月
恋愛
人間の伯爵令嬢ヴィオラと、竜人の侯爵令息ジャサントは幼い頃に怪我を負わせた為に結ばれた婚約者同士。
竜人には運命の番と呼ばれる唯一無二の存在がいる。
二人は運命の番ではないけれど――。
※作者の脳内異世界の、全五話、一万字越の短いお話です。
※シリアス成分は無いです。
※魔女のいる世界観です。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
私、異世界で獣人になりました!
星宮歌
恋愛
昔から、人とは違うことを自覚していた。
人としておかしいと思えるほどの身体能力。
視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。
早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。
ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。
『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。
妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。
父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。
どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。
『動きたい、走りたい』
それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。
『外に、出たい……』
病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。
私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。
『助、けて……』
救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。
「ほぎゃあ、おぎゃあっ」
目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。
「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」
聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。
どうやら私は、異世界に転生したらしかった。
以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。
言うなれば、『新片翼シリーズ』です。
それでは、どうぞ!
誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。
それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。
誰にも信じてもらえず、罵倒される。
そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。
実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。
彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。
故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。
彼はミレイナを快く受け入れてくれた。
こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。
そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。
しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。
むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる