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カノンの問いかけが切っ掛けとなって、祝福の力を自覚したメリダは、胸の奥にじわりと熱が拡がっていくのを感じた。

同時に彼女の頭の中には、過去に司祭の見たはずの断片的な光景が、いくつも浮かんできたのだった。

その中には、今目の前に立っている嘗て西の王子と呼ばれていた男カノンと、仲睦まじく微笑む前世のエレーヌの姿もあった。

エレーヌと司祭の記憶に残る聖女の容姿は別人のようだったが、メリダは二人が同じ魂を持つのだということを一瞬で悟った。

「驚きました!あなたは本当に『西の王子』なのですね・・・そして、エレーヌ様も。説明しがたいような不思議な感覚ですが、今のあなたの言葉に嘘はないのだと、感情とは別次元で瞬間的に『理解』出来ました」

カノンの言葉にやっと得心がいったメリダは、しみじみと言った。

「ようやく分かってくれたらしいな」

「無知とはいえ、あなたを疑ってしまい申し訳ありませんでした。・・・とは言っても、何故、最愛の聖女であるはずのお嬢様に、あのような嫌がらせをされたのです?記憶を取り戻させる為ですか?」

「言いにくいのだが、それは独占欲というか・・・何と言えば良いか、悪気のかけらも無く、私にとってはただの善意のつもりだったのだが、どうやら方法が決定的に間違っていたらしい。私のことを古くから知る者からも非常識だと窘められた。結果的に、エレーヌとお前には不快な思いをさせてしまい、本当にすまなかったと思っている・・・」

申し訳なさそうに項垂れたカノンは、メリダに詳細を話し始めた。





「こちらからすれば、本当に理不尽な当てこすりとしか思えませんでした。そんな事情があったなら・・・初めからご自分のことも含めてお話してくだされば良かったのに・・・」

この目の前の情けない男の話を聞いた限りでは、どうやら物語の中の『西の王子』は美しさ以外はだいぶ脚色されているらしい、とメリダは思った。

戦時の彼を知らない彼女には、カノンには『武神のような』というよりも、『いじらしい』という枕詞の方が相応しいのではないかとも感じたられた。
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