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一晩だけだと思われていたエレーヌの王宮への滞在は、幾日も続き、ついに七日が経とうとしていた。

それは、どこかエレーヌを手放しがたく思った国王が、彼女を引き留め続けたからだった。

カノンと国王の思惑の間で板挟みになり、その精神的な重圧から食事も喉を通らなくなったバートンは、その朝げっそりとした顔で王に進言した。

「陛下・・・そろそろ、エレーヌ嬢を返して差し上げないと・・・」

(私が死にそうです・・・)

王は、バートンの発言を聞き、それは尤もだという表情をした。

「そうか、そろそろ覚悟を決めなくてはならんな」

「何のお覚悟を・・・?」

「決めたぞ、バートン!私はエレーヌ嬢を妃にしようと思う!!」

バートンは驚きから目を丸くして、思わず声を上げた。

「はいっ?!」

(うわぁ・・・何ということに!聖女様はただでさえ引きが強いのに・・・カノン様がぐずぐずしているから、こうなってしまったんですからね・・・)





「エレーヌよ、今日でそなたを一度屋敷に返そうと思う」

「はい、陛下」

「だが、その前に一つ私の話を聞いてほしい。
私はこの数日、そなたと共に過ごし、こんな時間がいつまでも続けば良いと感じた。
エレーヌ、幸か不幸か、今そなたには婚約者がおらぬと聞いている。そして私は年齢や立場上、近いうちに妃を迎え入れねばならぬ身だ。私は妃にするならば、そなたを望みたいと思う。エレーヌよ、どうか、私の妃になってはもらえないだろうか?」

「・・・!」

エレーヌは、王からの唐突な申し出に対する返事に困ってしまった。

「陛下のお気持ちはありがたいのですが、私は男爵家の、それも新興の家の者ですし、自分がそのようなお立場にふさわしいとは思えません・・・」

「なに、今は偉そうな扱いを受けてはいるが、数代遡り、もとを正せばこの王家も平民のようなものだ。そう考えれば、その点は何の問題もなかろう?」

どこか超然とした歴史家としての一面を持つ、この人の王にとっては、自らの王家が勃興した百年前のことなど、つい最近という感覚らしい。

「・・・」

「エレーヌ、相手が私では不満だろうか?」

「あの・・・私一人ですぐには決められることではありませんので、どうか一度お返事を預からせてはいただけないでしょうか・・・」

「そうか・・・仕方ない、分かった。二つ返事で受けてもらえることを期待したのだが、それは欲が過ぎたようだな。色よい返事を待っているぞ、エレーヌ」
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