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バートンと国王の会談から数日後、男爵家に知らせがもたらされた。

「メリダ、どうしたらいいのかしら?私が王宮に呼び出しを受けるだなんて・・・しかも、件のドレスを着てくるようにという条件まで付いているし・・・。
何も良い理由が思い当たらないわ・・・宮廷魔術師様に失礼な態度をとってしまったのが原因かしら?」

「お嬢様、お気を確かになさってください。あの小娘はともかく、お嬢様に限って瑕疵などあるはずがありません」

「メリダ、またそんなことを・・・。カノンは私を助けてくれたのよ?」

エレーヌの言葉に顔を顰めるメリダ。

「どこまで信じていいのやら、疑わしいものです。助けたように見せかけて、どんな下心があるか知れませんし」






あの日から考え続けた挙句、エレーヌにまだ何も告げることが出来ないでいたカノンは、二人の様子を隣の部屋から伺っていた。

今まで、エレーヌとの間に入ってくる邪魔者としか認識していなかった侍女のメリダだが、こうしてあらためてみると、エレーヌへの忠誠心が頼もしくさえある。


「それにしても、国王からの呼び出しだと・・・バートンは何をしている?何か嫌な予感しかしない・・・。私も隠れて付いていくか」





王宮にやってきたエレーヌを王は、歓迎した。

「おお、よく来てくれたな!エレーヌよ」

「国王陛下、この度はお招きいただき・・・」

「堅苦しい挨拶はもうよい。さぁ、あちらへ座って話をしようではないか。私はあの舞踏会の夜にそなたを見かけてから、ずっとそなたと話をしてみたいと思っておったのだ。まずは、そのドレスについてだが・・・」

用意された茶器に口をつけることも忘れ、魔道具や魔術史について、一度話始めたら止めることができない様子で流暢に語り続ける国王。

普段、こういった話をできる者がバートンしかいないので、エレーヌがにこやかに話を聞いてくれることが余程嬉しいらしい。

エレーヌはその会話の中で、自身が身に着けているドレスが非常に歴史的資料としても貴重な品で、持ち主に降りかかるあらゆる災厄を弾く効果があるものだということを知った。

(メリダはあんな風に言うけれど・・・こんなに大切な物を私にくれるだなんて・・・やっぱり、カノンは優しい子じゃないの・・・)

ただ、王の隣に座っているバートンは始終渋い顔をして黙ったまま、時々相槌を求められた時だけ「はぁ・・・」と曖昧な返事を返すだけだった。





「エレーヌ、遅くまで引き留めてしまって悪かったな。楽しい時間だった」

王は満足げな顔で言った。

「いえ、こちらこそ貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。それでは私はこれで・・・」

「いや、待ってくれ。今夜はもう遅い。屋敷へは使いの者を出しておくから帰らずに、王宮へ泊っていくが良い」

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