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しおりを挟むマリオン・クラークは貴族同士とはいえ、顔もろくに知らない男の婚約者になるかどうか直ぐに決めなくてはならないのは酷だろうから、とクリスティーナに配慮して顔合わせの為の茶会を開いてくれた。
クリスティーナは彼を初めて見たとき、こんなに美しい男性が本当に存在したのかと驚いた。
柔らかな亜麻色の髪に、輝く水面のような優し気な薄青の瞳。
マリオンは腕の立つ騎士でもあるというが、想像していたようなむさ苦しい感じなど微塵も感じさせず、それどころか線が細く、どこか少年のような儚い美しささえ感じさせた。
年齢不詳の妖精のようでもあり、とても彼女よりも十も年上の男性とは思えなかった。
彼は噂通りの人当たりの良さで、始終柔らかい笑顔を絶やさず、洗練された話術を交えながら、クリスティーナの話を穏やかに聞いてくれた。
茶会で出されたお茶は柑橘の香りがほんのりと香る上品なもので、それに合わせた菓子の選択も間違いがなく、茶器のセンスも、何もかもが完璧だった。
そして、どこか彼女の思い人を思い出させるような雰囲気がマリオンにはあった。
クリスティーナはマリオンに今日会ったばかりにも関わらず、一瞬の内に彼に強く惹かれたのだった。
しかし、彼は本当に自分のような、子爵令嬢とは名ばかりの野暮ったい小娘が相手で良いのだろうか、とクリスティーナは疑問に思った。
だが、特段断る理由も見つからず、実家の為にもなるということもあり、彼女はマリオンとの婚約を快諾したのだった。
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