誰にも言えないあなたへ

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子爵令嬢のクリスティーナ・オリベイル。

彼女には心に決めた思い人が居た。

だが、学園で知り合った彼は成績優秀とはいえ平民で、子爵家の令嬢であるクリスティーナとは家格が釣り合わなかった。

彼女の両親は、出来るだけクリスティーナ自身が慕った相手に彼女を嫁がせたいと考えていたが、今のオリベイル家の財政は逼迫しており、家柄も資産も無いような相手に娘を嫁がせられるほどの余裕はどこにもなかった。

そんな理由は彼女自身も承知していたので、クリスティーナは結局、彼の事を両親に紹介することは出来なかった。

せめて、平民と言っても裕福な商家か何かであれば何とかなったかもしれないのに、と彼女は思ったが、どうにもならないものは仕方なかった。


そこに、都合の良い婚約の申し込みが舞い込んだ。

相手は、マリオン・クラーク。

騎士で伯爵でもある彼は、家格も高いうえに潤沢な資産持ちで、クリスティーナがこの申し込みを承知してくれるのであれば、オリベイル家を金銭的に援助してくれるという。

直接会ったことは無かったが、いつでも女性への気遣いを忘れず、見目麗しいというマリオン。

彼が社交界で人気だという話は、金銭的な理由からろくに夜会に出席することもかなわないクリスティーナの耳にまで届いていた。

だが、クリスティーナより十は年上の彼は、適齢期が過ぎようとしているにも関わらず、長らく恋の噂も聞かず、独身のままだった。

そんな彼が自分のようなどこにでも居そうな平凡な令嬢などに、急に婚約を申し込んでくるなど、何かの間違いではないかと彼女は思った。

だが、彼は彼女に一目惚れしたのだという。

クラーク様・・・どこかでお会いしたことがあったかしら、私には覚えが無いのだけれども・・・