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第二章 寒凪
旅館
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遠くに富士山を眺めながら、吹き出す煙をバックに写真を数枚撮った。
四人で自撮りをしたり、なぜか俺とりょうやだけで撮られたり。
さすがに店長と鈴音も限界だろうから、りょうやを間に挟んだ二人の写真も撮ってあげた。
俺ってば優しい。
「温泉卵買ってきたよ~」
店長が店の中から出てきた。手にはビニール袋に、黒い物体がいくつも入っているようだ。
「いやあ黒いねぇこれ~、いかにも温泉卵って感じがする。」
大脇谷の名物であるこの卵、正式名称を黒たまごといい、一つ食べると寿命が7年伸びると言われている。
こんなに重要なアイテムが安価で売られていていいのだろうか。
黒い殻を普通の煮卵のように割ると、中からは真っ白な卵白が顔を出した。
付属で一袋の塩が付いてくるようで、結晶状になっている塩の粒を卵にさっとかけ、そのまま半分ほどをかじりとる。
「おいし~!!」
「なかなかいける味だねぇ」
「はふっ…あついっ…」
半分になった卵は、綺麗な白と黄色のグラデーションを成している。
大きな湯気と比例するように、小さな湯気が卵から立っている。
「さっき調べたんですけど、どうやら黒い殻は、大脇谷から湧き出ている鉄分と、卵の殻の硫化水素が反応して、硫化鉄になるからだそうなんです!」
「りょうやくんは詳しいね」
「一応理系なので…」
大学生はいいよな。うん。
りょうやの豆知識を聞いたところで、そろそろ帰り支度をしなければいけない。腕時計はすでに13時を指していた。
帰りは
「お腹すいた~」
と言う鈴音に合わせて時間的にもちょっとだけ早いバスを選択。ICカードをかざして乗車する。
30分の道のりで14時すぎに湯本駅に到着、駅の前にあった蕎麦屋でさっと昼飯を済ませる。
かけそばをすすっていると、15時になった。
徒歩で5分ほどのホテルでチェックインをして部屋へと向かう。
「うわ~広い…」
「一応2部屋取ってあるから、組み分けは2・2でどうかな?」
部屋に入るなり店長がそういった。
2部屋…となると、こいつらをりょうやと一緒にしてはいけないな…
どっちも寝込みを襲いそうだ。恐ろしい。
「えっと…メンバーはどうするおつもりで?」
「もちろんりょうやくんとわたs」
「りょうやと僕でいいですよね?」
「えっ、でも」
「いいですよね???」
「ああ…そう言うことで…」
「え~私もりょうやくんと寝たい~」
「鈴音さんもダメ!青少年の健全な発育に支障をきたすから」
「僕もう大人なんだけどな…」
などと一悶着あったが、二人に圧をかけて電車と同じようにりょうやと俺、店長と鈴音と言う組み分けになった。
これが一番だ。俺は悪くない。青少年は守らないとな。
荷物を部屋へと運んでいると、
「はぁ…はぁ…」
りょうやが少し苦しそうにしていたので声を掛ける。
「大丈夫か?」
「バスで車酔いしたのがまだ続いてて、頭痛が…」
そういえばバスの中ではりょうやは疲れたといって寝ていたが…まさか車酔いだったか。
箱葉の山の険しさをなめていた…酔い止めを買ってこればよかったか。
「酔い止め買ってこよっか?」
「多分少し休めば…うぅ」
そう言って自分のリュックを持とうとしたのをすかさず止める。
「ほらほら気分悪かったら休む~」
「はい…」
店長にもその旨を伝えると、りょうやは軽装に着替え、部屋で少し仮眠を取ることになった。
俺はもちろん付き添いとして部屋に残った。
「僕のせいで先輩まで…ごめんなさい…」
「車酔いなんて誰にでもあることだって。」
「ご飯食べたら元気になると思ったんだけどな…」
「寝たらスッキリするよ。キツかったら頭痛薬もあるからな。」
「ありがとうございます…多分まだ大丈夫です…。ではお言葉に甘えて、、おやすみなさい…」
「ああ。」
少ししないうちにスースーと寝息を立て始めたので、俺は持ってきていたラノベを窓際の椅子に腰掛けながら読み始めた。
続く
四人で自撮りをしたり、なぜか俺とりょうやだけで撮られたり。
さすがに店長と鈴音も限界だろうから、りょうやを間に挟んだ二人の写真も撮ってあげた。
俺ってば優しい。
「温泉卵買ってきたよ~」
店長が店の中から出てきた。手にはビニール袋に、黒い物体がいくつも入っているようだ。
「いやあ黒いねぇこれ~、いかにも温泉卵って感じがする。」
大脇谷の名物であるこの卵、正式名称を黒たまごといい、一つ食べると寿命が7年伸びると言われている。
こんなに重要なアイテムが安価で売られていていいのだろうか。
黒い殻を普通の煮卵のように割ると、中からは真っ白な卵白が顔を出した。
付属で一袋の塩が付いてくるようで、結晶状になっている塩の粒を卵にさっとかけ、そのまま半分ほどをかじりとる。
「おいし~!!」
「なかなかいける味だねぇ」
「はふっ…あついっ…」
半分になった卵は、綺麗な白と黄色のグラデーションを成している。
大きな湯気と比例するように、小さな湯気が卵から立っている。
「さっき調べたんですけど、どうやら黒い殻は、大脇谷から湧き出ている鉄分と、卵の殻の硫化水素が反応して、硫化鉄になるからだそうなんです!」
「りょうやくんは詳しいね」
「一応理系なので…」
大学生はいいよな。うん。
りょうやの豆知識を聞いたところで、そろそろ帰り支度をしなければいけない。腕時計はすでに13時を指していた。
帰りは
「お腹すいた~」
と言う鈴音に合わせて時間的にもちょっとだけ早いバスを選択。ICカードをかざして乗車する。
30分の道のりで14時すぎに湯本駅に到着、駅の前にあった蕎麦屋でさっと昼飯を済ませる。
かけそばをすすっていると、15時になった。
徒歩で5分ほどのホテルでチェックインをして部屋へと向かう。
「うわ~広い…」
「一応2部屋取ってあるから、組み分けは2・2でどうかな?」
部屋に入るなり店長がそういった。
2部屋…となると、こいつらをりょうやと一緒にしてはいけないな…
どっちも寝込みを襲いそうだ。恐ろしい。
「えっと…メンバーはどうするおつもりで?」
「もちろんりょうやくんとわたs」
「りょうやと僕でいいですよね?」
「えっ、でも」
「いいですよね???」
「ああ…そう言うことで…」
「え~私もりょうやくんと寝たい~」
「鈴音さんもダメ!青少年の健全な発育に支障をきたすから」
「僕もう大人なんだけどな…」
などと一悶着あったが、二人に圧をかけて電車と同じようにりょうやと俺、店長と鈴音と言う組み分けになった。
これが一番だ。俺は悪くない。青少年は守らないとな。
荷物を部屋へと運んでいると、
「はぁ…はぁ…」
りょうやが少し苦しそうにしていたので声を掛ける。
「大丈夫か?」
「バスで車酔いしたのがまだ続いてて、頭痛が…」
そういえばバスの中ではりょうやは疲れたといって寝ていたが…まさか車酔いだったか。
箱葉の山の険しさをなめていた…酔い止めを買ってこればよかったか。
「酔い止め買ってこよっか?」
「多分少し休めば…うぅ」
そう言って自分のリュックを持とうとしたのをすかさず止める。
「ほらほら気分悪かったら休む~」
「はい…」
店長にもその旨を伝えると、りょうやは軽装に着替え、部屋で少し仮眠を取ることになった。
俺はもちろん付き添いとして部屋に残った。
「僕のせいで先輩まで…ごめんなさい…」
「車酔いなんて誰にでもあることだって。」
「ご飯食べたら元気になると思ったんだけどな…」
「寝たらスッキリするよ。キツかったら頭痛薬もあるからな。」
「ありがとうございます…多分まだ大丈夫です…。ではお言葉に甘えて、、おやすみなさい…」
「ああ。」
少ししないうちにスースーと寝息を立て始めたので、俺は持ってきていたラノベを窓際の椅子に腰掛けながら読み始めた。
続く
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