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師匠のおうちは
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「じゃあ、家の形は?」
「形状に特徴を持たせるっていうざっくりした風習があるらしいね。もちろん厳密なルールではないようだけど、全体的に丸っこいとか、高いとか、鱗模様とか、貝が埋め込んであるとか、何かしら特徴があるだろう?」
「あー、なるほどな! のっぽの赤い家! とか一目でわかるようにってことか」
アルマさんの説明に、コーチが納得! と頷く。
「本当に実用的な理由なのね。靄がかかってもわかりやすいっていうのが全ての基準なのに、結果的にオシャレな街並みになるだなんて、なんだか面白いわね」
「ということは俺が目指すのは、あの真っ青な、縦にひょろ長い建物だな!」
リーナさんがまだまだ楽しそうに建物たちを眺めているのに、コーチときたらもう飽きたらしい。
まあ、あの青い建物、剣のマークついてるもんね。多分武器屋さんだから、そりゃあ早く行きたいよね……。
「はいはい」
アルマさんも苦笑しつつ、ポシェットからお財布を取り出している。
「はい、この予算内ならお好きにどうぞ」
「うおおおおおお! アルマ、ふとっぱら!」
「活躍してくれたからね」
そう、コーチがいなかったら、あたしだって今頃ここにいることさえできなかったんだもんね……。その結果、剣までなくしちゃったんだから、ぜひともスッゴイ剣を手に入れて欲しい。
「無駄遣いしちゃダメよ」
「子供か。分かってるっつうの」
アルマさんから手渡されたコインと紙幣を見て、リーナさんが注意すれば、コーチは唇を尖らせて反論する。その反抗的な態度がすでに子供っぽいと思うんだけど。
ただ、残念なことにでっかくて筋肉もりもりだから子供のように可愛らしくはない。
「トマは武器だけは時間かけて選ぶからねぇ、僕はその間に師匠のところに行ってくるよ」
「おー、行ってこい! スラ吉のこと、色々聞くんだろ?」
「ああ、師匠なら有効な話が聞けると思うんだ」
「剣買ったら俺も行くからよ、どの家目指せばいい?」
そう言われた途端、アルマさんの顔が微妙に気まずそうに歪んだ。
「……あの、異彩を放ってる、真っ黒な」
「おーあれか! あの、ガーゴイルみたいなおどろおどろしい屋根飾りの!」
「プチ魔王城みたい」
本当だ。遠くからでもよくわかる。だって、真っ黒い建物なんて他にないし、でっかい歪んだ樹もあるし、建物もちっちゃなお城みたいな形。
確かに、他の建物とは路線が違う。
「ファンシーな町の中で、圧倒的な違和感ね」
「こりゃー師匠ってのは変わりモンなんだろうなぁ! 会うのが楽しみだ」
「形状に特徴を持たせるっていうざっくりした風習があるらしいね。もちろん厳密なルールではないようだけど、全体的に丸っこいとか、高いとか、鱗模様とか、貝が埋め込んであるとか、何かしら特徴があるだろう?」
「あー、なるほどな! のっぽの赤い家! とか一目でわかるようにってことか」
アルマさんの説明に、コーチが納得! と頷く。
「本当に実用的な理由なのね。靄がかかってもわかりやすいっていうのが全ての基準なのに、結果的にオシャレな街並みになるだなんて、なんだか面白いわね」
「ということは俺が目指すのは、あの真っ青な、縦にひょろ長い建物だな!」
リーナさんがまだまだ楽しそうに建物たちを眺めているのに、コーチときたらもう飽きたらしい。
まあ、あの青い建物、剣のマークついてるもんね。多分武器屋さんだから、そりゃあ早く行きたいよね……。
「はいはい」
アルマさんも苦笑しつつ、ポシェットからお財布を取り出している。
「はい、この予算内ならお好きにどうぞ」
「うおおおおおお! アルマ、ふとっぱら!」
「活躍してくれたからね」
そう、コーチがいなかったら、あたしだって今頃ここにいることさえできなかったんだもんね……。その結果、剣までなくしちゃったんだから、ぜひともスッゴイ剣を手に入れて欲しい。
「無駄遣いしちゃダメよ」
「子供か。分かってるっつうの」
アルマさんから手渡されたコインと紙幣を見て、リーナさんが注意すれば、コーチは唇を尖らせて反論する。その反抗的な態度がすでに子供っぽいと思うんだけど。
ただ、残念なことにでっかくて筋肉もりもりだから子供のように可愛らしくはない。
「トマは武器だけは時間かけて選ぶからねぇ、僕はその間に師匠のところに行ってくるよ」
「おー、行ってこい! スラ吉のこと、色々聞くんだろ?」
「ああ、師匠なら有効な話が聞けると思うんだ」
「剣買ったら俺も行くからよ、どの家目指せばいい?」
そう言われた途端、アルマさんの顔が微妙に気まずそうに歪んだ。
「……あの、異彩を放ってる、真っ黒な」
「おーあれか! あの、ガーゴイルみたいなおどろおどろしい屋根飾りの!」
「プチ魔王城みたい」
本当だ。遠くからでもよくわかる。だって、真っ黒い建物なんて他にないし、でっかい歪んだ樹もあるし、建物もちっちゃなお城みたいな形。
確かに、他の建物とは路線が違う。
「ファンシーな町の中で、圧倒的な違和感ね」
「こりゃー師匠ってのは変わりモンなんだろうなぁ! 会うのが楽しみだ」
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