58 / 80
ぶっ飛ばせ!
しおりを挟む
いやあ、当たる当たる!
攻撃しようと急降下してきたガーゴイルに狙いを定め、ジョットさんが全身のばねを使って飛び上がる。その最高点に達する瞬間に合わせて、ジョットさんの腕が精一杯伸ばされて、あたしのパンチをこれ以上ないくらいアシストしてくれた。
渾身の力で繰り出されたパンチ。
その先には鉄の堅いトゲがついたナックルがあるんだもの。
鈍い音と衝撃の後、ガーゴイルの体が空中で弾かれ、力なく墜落していく。その威力は、あたしが想像していた以上だった。
あれだけたくさんいたガーゴイル達を短時間で何体も仕留め、半数以上のガーゴイル達が動かなくなった時、奴らは慌てたように撤退していった。
数に物を言わせ、空中からの攻撃で攪乱してこちらを屠ろうと思っていたんだろうけど、こっちだってそう簡単にやられるわけにはいかないんだから!
「スゲーな、スラ吉!」
コーチがぐりぐりと撫でてくれる。
さっきまで剣を握った手で撫でるのやめてくれない? かなり汗臭いんですけど。
嬉しいけれど嬉しくない状況に若干身をよじったら、コーチに「反抗期か!」と怒られてしまった。
「あれ? スラちゃん、ちょっとおいで」
その声は!!!
アルマさんではないですか!!!
行きます! 行きますとも!
ギュルギュルっと回転をかけて嬉しさを表しながら、跳ね寄る。
「うわ!? 何今の、なんか新しい技、開発したの!?」
喜びすぎて、驚かせてしまったらしい……。反省だ。
「えーと、まあいいや。ちょっとチビちゃん達、外に出て貰ってもいいかい?」
お安い御用ですよ。
チビちゃん達も自分たちの事を言われているとわかったのか、ピョン、ピョン、ピョン、とリズムよく飛び出してあたしの前に整列する。
アルマさんは、メガネをくいっとあげて、あたし達をじっくりと観察した。
「やっぱり」
「なんだ?」
「いや、なんかおかしいなと思ってたんだけど……チビちゃん達も、強くなってる」
「はあ!?」
コーチが驚くのも無理はない。あたしだって驚いた。驚きすぎてつい飛び上がっちゃったくらいには驚いた。
何それ!?
え、まさか、あたしが戦った影響が、チビちゃん達にも出てるってこと!?
「スラちゃん程の顕著な能力の上がり方じゃないけど、もはや一般のスライムよりは確実に強い個体になってるよ」
感嘆したような、面白い、とでも言いたげなアルマさん。
「ほー。強くなるならいいじゃねえか。いつまでも弱っちいと連れて歩くのも難儀だからなあ」
そうですけど。
そうですけど。
なんか、微妙な気持ちになるんだけど!
戦ったのはあたしなのにー!!!
攻撃しようと急降下してきたガーゴイルに狙いを定め、ジョットさんが全身のばねを使って飛び上がる。その最高点に達する瞬間に合わせて、ジョットさんの腕が精一杯伸ばされて、あたしのパンチをこれ以上ないくらいアシストしてくれた。
渾身の力で繰り出されたパンチ。
その先には鉄の堅いトゲがついたナックルがあるんだもの。
鈍い音と衝撃の後、ガーゴイルの体が空中で弾かれ、力なく墜落していく。その威力は、あたしが想像していた以上だった。
あれだけたくさんいたガーゴイル達を短時間で何体も仕留め、半数以上のガーゴイル達が動かなくなった時、奴らは慌てたように撤退していった。
数に物を言わせ、空中からの攻撃で攪乱してこちらを屠ろうと思っていたんだろうけど、こっちだってそう簡単にやられるわけにはいかないんだから!
「スゲーな、スラ吉!」
コーチがぐりぐりと撫でてくれる。
さっきまで剣を握った手で撫でるのやめてくれない? かなり汗臭いんですけど。
嬉しいけれど嬉しくない状況に若干身をよじったら、コーチに「反抗期か!」と怒られてしまった。
「あれ? スラちゃん、ちょっとおいで」
その声は!!!
アルマさんではないですか!!!
行きます! 行きますとも!
ギュルギュルっと回転をかけて嬉しさを表しながら、跳ね寄る。
「うわ!? 何今の、なんか新しい技、開発したの!?」
喜びすぎて、驚かせてしまったらしい……。反省だ。
「えーと、まあいいや。ちょっとチビちゃん達、外に出て貰ってもいいかい?」
お安い御用ですよ。
チビちゃん達も自分たちの事を言われているとわかったのか、ピョン、ピョン、ピョン、とリズムよく飛び出してあたしの前に整列する。
アルマさんは、メガネをくいっとあげて、あたし達をじっくりと観察した。
「やっぱり」
「なんだ?」
「いや、なんかおかしいなと思ってたんだけど……チビちゃん達も、強くなってる」
「はあ!?」
コーチが驚くのも無理はない。あたしだって驚いた。驚きすぎてつい飛び上がっちゃったくらいには驚いた。
何それ!?
え、まさか、あたしが戦った影響が、チビちゃん達にも出てるってこと!?
「スラちゃん程の顕著な能力の上がり方じゃないけど、もはや一般のスライムよりは確実に強い個体になってるよ」
感嘆したような、面白い、とでも言いたげなアルマさん。
「ほー。強くなるならいいじゃねえか。いつまでも弱っちいと連れて歩くのも難儀だからなあ」
そうですけど。
そうですけど。
なんか、微妙な気持ちになるんだけど!
戦ったのはあたしなのにー!!!
0
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる