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なんかズルいんですけど!

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ジョットさんが言った通り、ガーゴイルは頭がいい魔物で、次から次に仲間を呼んだ。

とっても強いアルマさん達だけど、相手が空を飛んでちゃなかなかに分が悪い。いつもはメインで戦ってるコーチやジョットさんはリーチが届かないから、自然リーナさんの投げナイフとアルマさんの魔法が攻撃の主軸となる。

コーチはでっかい剣の分リーチが長いからまだ時々攻撃があたるけど、あのガーゴイルとかいう奴ら、攻撃が当たりそうで当たらないスレスレのところまで降りてきちゃ、毒のブレスを吐いたりへなちょこな魔法を撃ったりしてくるんだ。

こっちもダメージは少ないけど、イラつくしストレスが溜まる!


あたしだって!


そう思って思いっきりジャンプしても、あれだけ練習したパンチを繰り出しても、空飛ぶあいつらには届かない。悔しくって悔しくって伸び縮みしていたら、ちょうどあたしみたいに悔しそうな人を見つけた。

そうか、そうだよね。

ジョットさんだって届かないよね。だってコーチよりもさらに剣の分リーチが短いんだもの。他の人が撃ち落としたガーゴイルのトドメをさすしかできる事が無くって、なんだかすごくもどかしそう。


分かる、分かるよジョットさん、その悔しさ!


空を飛ぶなんて卑怯だよね!


触りもできない悔しさでポヨポヨ跳ねて地団駄ふんでいたら、なんかこう、向こうからも熱い視線を感じた。

な、なあに?

なんでジョットさん、そんな真剣な目で見るの?


不思議に思っていたら、来い来いと手招きされる。

どうせ今回のあたし、戦闘においてはなんら役に立ちそうもないし。請われるままにジョットさんのもとにポヨン、ポヨンと跳ねていけば、ジョットさんは無言で手の平をつきだした。


これは……乗れって事?


ピョンと飛び乗ったら、まるでボールでも扱うみたいに手の平の上でポンポンと軽く投げられる。そしてあたしの滑らかゼリー越しに、パンチを繰り出す時の重石になってる石を握りしめる。その感触を確かめて、ジョットさんはなぜか深く頷いた。



「スラ、俺のパンチが最大に伸びた瞬間にパンチを打て」



……うん?

パンチが伸びた瞬間にパンチ?

一瞬意味が分からなくって???ってなったけど、なるほどそうか、あたしとジョットさん二人分のリーチがあれば、ガーゴイルに当たるんじゃないかって言いたいのね!?


よっしゃ任せとけ!


気合い満点でナックルを振れば、ジョットさんの唇の端がちょっとだけ上がった。

これって、笑った?

おおーレアだ。よっぽど嬉しかったんだろうね。

これは是非とも期待に応えねばなるまい。少々……っていうか、結構揺れると思うけどチビちゃん達、しっかり掴まっててね。あ、ナックルはぶん回しちゃうから、あたしの核のとなりでね。


そうしてあたしは、張り切って戦闘態勢に入った。
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