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子供を守る手段なのです。

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どんどん、どんどん水を吐き出し、桃の種くらいに小さくコンパクトになったチビちゃん達が、次々にあたしに飛びついてくる。

あたしは、それを優しく受け止めた。

ぽよん、ぽよん、ぽよん、と可愛い音を立ててあたしの体に着地したチビちゃん達をそのまま体の中に取り込む。すると、チビちゃん達はそのままちょこんとナックルの中に落ち着いた。

ナックルの……あの、手を突っ込む部分? あそこに三体揃ってお行儀よく並んでいるのがとても可愛い。

実はまだまだ小さい子供のスライムをこうやって大人のスライムが運んであげるのは割と普通なことだ。

なんせ小さいうちは危険が多い。

雨が降れば際限なく膨れて収集が付かなくなっちゃうし、小さい個体は動きも遅いから他のモンスターに狙われて命を落とすこともすごく多いんだ。

だから、危険が迫った時には大人がこうして子供を守ってあげることも多い。みんな纏めて体の中に匿って、一気に逃げるわけだ。

残念ながらそれでも逃げられなかった時は、「スライムの核」が一体のスライムから複数出てきて冒険者がびっくりする、という事態が発生したりもする。

どうでしょう、これならチビちゃん達がいても何とかなるかも……というか、これがダメならチビちゃん達にはあきらめてもらうことになっている。


「ええ? 何? 可愛いー!」


うん、リーナさんならそう言うんじゃないかと思ってた。


「あーなるほど! それなら確かにスラ吉連れてるだけなのと、危険度はそう変わらねえかもな」


コーチの言葉に、ジョットさんも寡黙に肯いている。


「いーんじゃねえのか? 別に」


コーチはもう興味を失ったみたいに背をむけて、大きく伸びをしたりし始めた。

実際あたしは連れて行くの不安なんだけど、自分だってどうしてもついていきたくて無理を言ったクチだから、チビちゃん達にあんまり強くも言えなくて。

むしろ、ここでしっかり断って貰った方がチビちゃん達のためだと思ってるんだけどなあ。


「確かに、これなら連れていけないことはないけど」


ひとり浮かない顔なのはアルマさんだった。


「でも、この大きさ。この子達はまだ子供だろう?」

「だろうなあ、どれくらいででかくなるかは知らねえが」

「スラちゃん連れて行くのだって責任感じてるんだ。子供は連れていけない」

「ハッ……冒険に出るのは自己責任だろ。俺らだってガキの頃から、死ぬ事もあり得るって織り込み済みで冒険者になったんじゃねえか」


慎重派なアルマさんに比べて、コーチは何事においても大雑把だ。でも、あたしを一緒に連れて行ってやろうって最初に言ってくれたのもコーチだったっけ。


「おいスラ吉!」


アルマさんと意見を戦わせていたコーチが、急にあたしを睨んだ。


「こいつらも俺らの言葉が理解できてんのか?」
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