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魔術師の決断
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「二人とも、引け!」
それまで戦況を見守っていた魔術師さんが突如叫んだ。弾かれたように剣士と武闘家がゴブリンの密集地帯から走り出ると同時に、飛躍的に魔術師さんの体の中の魔力が高まった。
短い、でも力強い詠唱。
直後、魔術師さんの杖から放たれたのは「爆発」と表現するのが妥当なくらい、激しく大きな火球だった。
洞窟から溢れでた大量のゴブリン達が消し炭のようになって消えていく。
なんて凄い魔法。
「……っ、くっ……息が……出来な……」
あまりに凄まじい光景に目を奪われていたら、魔術師さんの足元にうずくまる軽鎧の人から苦しげなうめき声が聞こえてきた。同時に、またも魔術師さんの体の中に、大きな魔力が膨れ上がる。
一気になされた詠唱と共に一陣の風が吹き抜け、辺りには瞬間、静寂が落ちた。
なん……だったんだろう、でも、軽鎧の人は苦しさから解放されたみたい。肩で息をしながらも何とか立ち上がろうとしている。
「……っ」
小さなうめき声が聞こえたと思ったら、突然ぐらりと景色が揺れた。視界が急にストンと落ちて、魔術師さんが膝をついた事を理解する。
どうしたの、そんなに苦しそうに。
真っ青になって苦しそう。額には沢山の汗が浮かんでいた。
「ギイ……!」
僅かな声に前方に視界を戻せば、爆発で片腕をもがれたゴブリンが、魔術師さんに向かって剣を振り下ろそうとしていた。
「危ない!」
「避けろ、アルマ!」
無理言わないで!こんなに真っ青なのに。
ああ、倒れかかってくるみたいにゴブリンの腕と剣が近づいてくる。
どうしたらいいの。
「グガアアッ」
ゴブリンの腕に力が入る。剣の勢いが一気に増した。
ふ、と顔を上げてゴブリンを見た魔術師さんの顔に瞬間、絶望が走った気がした。庇うように右手があたしの体の上に降ってくる。
冗談じゃない。
降りてきたその手をさっと躱して、魔術師さんの体を足場に思いっきりジャンプする。
あたしの渾身の一撃は、ゴブリンの顔面に思いっきりクリーンヒットした。
「グアッ」
小さな声をあげて、ゴブリンが後ろに倒れる。すでに瀕死だったのか、そのまま息絶えたヤツを見てあたしはやっと安心した。
ぶつかった勢いで空中に放り出されたあたしは、それでも満足だった。クルクル回転しながら落ちていく途中で、魔術師さんのびっくりしたような顔が見えた時には本当に嬉しくて、彼を守れた事に誇らしいような気持ちが湧き上がってくる。
良かった、本当に良かった。
「ばっかやろう!無茶すんな!」
そんなあたしの体を、横から伸びてきたゴッツイ手がキャッチする。見上げれば、鬼のような表情をした剣士だった。
「いったん退却だ!アルマは俺が担ぐ、行くぞ!」
剣士の一喝で、全員が一斉に駆け出した。
それまで戦況を見守っていた魔術師さんが突如叫んだ。弾かれたように剣士と武闘家がゴブリンの密集地帯から走り出ると同時に、飛躍的に魔術師さんの体の中の魔力が高まった。
短い、でも力強い詠唱。
直後、魔術師さんの杖から放たれたのは「爆発」と表現するのが妥当なくらい、激しく大きな火球だった。
洞窟から溢れでた大量のゴブリン達が消し炭のようになって消えていく。
なんて凄い魔法。
「……っ、くっ……息が……出来な……」
あまりに凄まじい光景に目を奪われていたら、魔術師さんの足元にうずくまる軽鎧の人から苦しげなうめき声が聞こえてきた。同時に、またも魔術師さんの体の中に、大きな魔力が膨れ上がる。
一気になされた詠唱と共に一陣の風が吹き抜け、辺りには瞬間、静寂が落ちた。
なん……だったんだろう、でも、軽鎧の人は苦しさから解放されたみたい。肩で息をしながらも何とか立ち上がろうとしている。
「……っ」
小さなうめき声が聞こえたと思ったら、突然ぐらりと景色が揺れた。視界が急にストンと落ちて、魔術師さんが膝をついた事を理解する。
どうしたの、そんなに苦しそうに。
真っ青になって苦しそう。額には沢山の汗が浮かんでいた。
「ギイ……!」
僅かな声に前方に視界を戻せば、爆発で片腕をもがれたゴブリンが、魔術師さんに向かって剣を振り下ろそうとしていた。
「危ない!」
「避けろ、アルマ!」
無理言わないで!こんなに真っ青なのに。
ああ、倒れかかってくるみたいにゴブリンの腕と剣が近づいてくる。
どうしたらいいの。
「グガアアッ」
ゴブリンの腕に力が入る。剣の勢いが一気に増した。
ふ、と顔を上げてゴブリンを見た魔術師さんの顔に瞬間、絶望が走った気がした。庇うように右手があたしの体の上に降ってくる。
冗談じゃない。
降りてきたその手をさっと躱して、魔術師さんの体を足場に思いっきりジャンプする。
あたしの渾身の一撃は、ゴブリンの顔面に思いっきりクリーンヒットした。
「グアッ」
小さな声をあげて、ゴブリンが後ろに倒れる。すでに瀕死だったのか、そのまま息絶えたヤツを見てあたしはやっと安心した。
ぶつかった勢いで空中に放り出されたあたしは、それでも満足だった。クルクル回転しながら落ちていく途中で、魔術師さんのびっくりしたような顔が見えた時には本当に嬉しくて、彼を守れた事に誇らしいような気持ちが湧き上がってくる。
良かった、本当に良かった。
「ばっかやろう!無茶すんな!」
そんなあたしの体を、横から伸びてきたゴッツイ手がキャッチする。見上げれば、鬼のような表情をした剣士だった。
「いったん退却だ!アルマは俺が担ぐ、行くぞ!」
剣士の一喝で、全員が一斉に駆け出した。
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