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【勇者:葵視点】なんで聖女がそんな願いを?

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「いや、なんでその聖女様がそんな願いを」

「あはは、聖女様って。優香はなんか『聖女様』ってガラじゃないなぁ、結構口も悪いし負けん気強いし金髪金髪ってなんか酷いし」


だめだ、どんどん意味が分からなくなってくる。聖女っていったい。

ひとしきりクスクスと笑ったあと、神様はまたも意味ありげにニヤリと笑う。何なんだろうな、この訳の分からなさ。神様ってもっとこう、威厳ある感じだと思ってたんだけど。


「まあ理由なんてさあ、どうだっていいじゃない。聞かない方が身のためかもよ?聖女の好意と思って素直に受け取れば?って事で、さあ選んで」

「え、いや、このままだと気になり過ぎるんで」

「もーしょうがないなあ、時間ないから手短にね。多分だけどさあ、罪悪感じゃない?」

「罪悪感?聖女様が、俺に?」

「そう、なんていうか聖女はさあ、勇者と対なんだよねえ。どっちかっていうと、神から選ばれるのが聖女。聖女から選ばれるのが勇者。葵はさあ、実は優香が選んだ勇者なんだよねえ」

「え、じゃあ聖女様って」

「葵と同じ世界にいた女の子だよ。優香、葵よりひとつ年上だって言ってたかな」

「ユウカ……日本人……?」

「そうそう」


じゃあそのユウカって人が、俺を勇者に選んだのか。まさか知ってる人、なんて事はないだろうけど……。少なくとも思い当たる人はいない、でも元々女の名前なんか同級生でも分からないしな。

それにしてもこんな異世界で、神様とか魔王とか魔物とか……完全なるファンタジー感の只中で、なぜに聖女が同じ日本人なんだろう。なんか話についていくだけでいっぱいいっぱいなんだけど。


「でね、たっくさんの勇者候補の中から、優香が葵を選んだわけ。僕らはその選択にだけは手が出せないことになってるんだけどさあ、実際優香は素晴らしい選択をしたと思ってるんだよ。葵は素晴らしい勇者だってね」


え、褒められてるのかコレ。


「たださあ、優香はすっごい後悔してた」


珍しく神様が表情を曇らせた。


「僕が葵を無理矢理召喚して戦わせてることにずっとずっとずっと、怒ってた。葵を勇者に選んで、戦わせてるのは自分だって、ずっと自分のことも責めてたよ。……バカだよねえ、聖女になった以上どうせ誰かを選ばなきゃならないってのに」


独り言みたいに小さな声で、神様がつぶやく。ずっと高かったテンションが、ちょっとだけ落ちた気がした。


「僕達としては、葵にはこれからも勇者としてあちこちの世界を救ってもらおうと思ってたんだよ。なのにさあ、優香がどうしても今後どうするかは葵自身に決めさせてくれって言うから」


なんだその爆弾発言は。サラリと口にした割には結構すごい事言ったよな?今。
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