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なんだよこれ! 怖ぇぇよ!
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バイトの帰り、車に跳ねられたらしい仔狐を拾ったんだ。
まさかそれが、思い出したくもない恐怖体験のスタートになるとは……俺もつくづくツイてないと思う。
道路脇にズタボロになって転がってる仔狐を見た時は、すっかりてんぱってしまって、とりあえずスマホで最寄りの動物病院を探して飛び込んだ。腕の中でどんどん冷たくなっていくちっこい体が可哀相で、一生懸命声をかけながら必死で走ったんだ。
それなのに、やっぱり間に合わなくて……小さな生命はあまりにも呆気なく散ってしまった。
救えなかった空しさと、それでもバッチリ軽くなった懐の淋しさ。保険のきかない動物病院の出費は、ぶっちゃけバイト代をがっつり持って行ってしまうレベルだ。文字通り身も心も寒い状態で、真っ暗な淋しい通りをぽつんと一人歩いていく。
ツイてねぇなぁ、と見上げれば桜だけがなんだか華やかに咲き誇っていた。
異変が訪れたのはその日の真夜中の事だ。
このアパートに越してきてから、なんか分からないけど眠りが浅くなっていた俺は、いつものごとく深夜に目を覚ました。時計を見ればこれまたいつものごとく針は2時を指している。
草木も眠る丑三つ時ってね。
まったく毎日飽きもせず、意味ありげにヤな時間に目が覚めるもんだよ。なんか見ちゃいけないものが出そうでイヤなんだよ、もう。
ひとしきり一人でプリプリ怒っちゃふて寝する。
それがこのところのいつものサイクルだった。
しかし。
今日は違う。
のっけから、唸り声が聞こえた。
ヴヴゥゥ……グルル……
と、なんかもう、明らかに獣っぽい唸り声。
目を凝らせば、うっすらと俺の腹の上に華奢な四つ足が見える。半透明な四つ足は、しっかりと俺の腹の上で踏ん張って、しきりに唸り声を上げていた。
怖ぇぇ……なんなの、これ。
逃げ出したいが、もちろん絶賛金縛り中だ。
指先すらピクリとも動かない。
何とか動かせないかと力みまくって、脂汗が出てきた。
その時だ。
部屋の隅で、何かが動く気配がした。
何で分かるんだ俺。見えるわけでもないのに気配で分かるってアニメか都市伝説じゃなかったの⁉
怖ぇぇよ‼
よく分からない気配を察知してしまった事にまたもやてんぱっていたら、腹の上の四つ足が、ぐぐっと足に力を入れる。
痛っ! 痛いって!
そこからは思い出したくもない。
凄まじい唸り声を上げて、腹の上のヤツが部屋の隅の気配に飛びかかり、切り裂くような声を上げながら激しくのたうちまわっている。
姿がしかとは見えない。
なのに激しく争う音と気配だけが部屋に充満していた。
怖い。
怖すぎる。
なんなんだ、これ。
俺の部屋でいったい何が起こってるんだ!
恐怖で寝られたもんじゃない。
俺は、まんじりともせずに一夜を明かす羽目になった。
まさかそれが、思い出したくもない恐怖体験のスタートになるとは……俺もつくづくツイてないと思う。
道路脇にズタボロになって転がってる仔狐を見た時は、すっかりてんぱってしまって、とりあえずスマホで最寄りの動物病院を探して飛び込んだ。腕の中でどんどん冷たくなっていくちっこい体が可哀相で、一生懸命声をかけながら必死で走ったんだ。
それなのに、やっぱり間に合わなくて……小さな生命はあまりにも呆気なく散ってしまった。
救えなかった空しさと、それでもバッチリ軽くなった懐の淋しさ。保険のきかない動物病院の出費は、ぶっちゃけバイト代をがっつり持って行ってしまうレベルだ。文字通り身も心も寒い状態で、真っ暗な淋しい通りをぽつんと一人歩いていく。
ツイてねぇなぁ、と見上げれば桜だけがなんだか華やかに咲き誇っていた。
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このアパートに越してきてから、なんか分からないけど眠りが浅くなっていた俺は、いつものごとく深夜に目を覚ました。時計を見ればこれまたいつものごとく針は2時を指している。
草木も眠る丑三つ時ってね。
まったく毎日飽きもせず、意味ありげにヤな時間に目が覚めるもんだよ。なんか見ちゃいけないものが出そうでイヤなんだよ、もう。
ひとしきり一人でプリプリ怒っちゃふて寝する。
それがこのところのいつものサイクルだった。
しかし。
今日は違う。
のっけから、唸り声が聞こえた。
ヴヴゥゥ……グルル……
と、なんかもう、明らかに獣っぽい唸り声。
目を凝らせば、うっすらと俺の腹の上に華奢な四つ足が見える。半透明な四つ足は、しっかりと俺の腹の上で踏ん張って、しきりに唸り声を上げていた。
怖ぇぇ……なんなの、これ。
逃げ出したいが、もちろん絶賛金縛り中だ。
指先すらピクリとも動かない。
何とか動かせないかと力みまくって、脂汗が出てきた。
その時だ。
部屋の隅で、何かが動く気配がした。
何で分かるんだ俺。見えるわけでもないのに気配で分かるってアニメか都市伝説じゃなかったの⁉
怖ぇぇよ‼
よく分からない気配を察知してしまった事にまたもやてんぱっていたら、腹の上の四つ足が、ぐぐっと足に力を入れる。
痛っ! 痛いって!
そこからは思い出したくもない。
凄まじい唸り声を上げて、腹の上のヤツが部屋の隅の気配に飛びかかり、切り裂くような声を上げながら激しくのたうちまわっている。
姿がしかとは見えない。
なのに激しく争う音と気配だけが部屋に充満していた。
怖い。
怖すぎる。
なんなんだ、これ。
俺の部屋でいったい何が起こってるんだ!
恐怖で寝られたもんじゃない。
俺は、まんじりともせずに一夜を明かす羽目になった。
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