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私のところに逃げてきたんですか?

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「それで私のところに逃げてきたんですか? 君も大変ですね」


呆れつつもあったかいミルクティー淹れてくれるラツィオ、超優しい。

他に行けるところを見つけられなくて、情けないことに森の奥のラツィオの家まで逃げてきてしまった。

自分でもなかなかのチキンっぷりで、さすがに笑えてきたが、朝からずっと心臓がバクバクいいっぱなしなんだから仕方がない。このままゆずに会ったりしたら、多分俺は血圧が上がり過ぎて倒れると思う。


「気持ちが落ち着くハーブをいれておきましたよ。君が納入してくれた品ですけどね」


俺の前にミルクティーをコトンと置いて、ラツィオは薄く微笑む。穏やかなヤツだとは思っていたが、こいつがこんなに気が利く優しいヤツだとは思ってなかった。

深くあれこれと聞いてくるわけでもなく、ただ「落ち着くまでゆっくりしていくといい」と居場所を提供してくれる、それがこんなにもありがたいだなんて、初めて気が付いた。

俺に食い物と飲み物だけ与えたら、ソファにゆっくりと腰かけて本を読み始めるラツィオ。

その横顔を見ながら、俺は本日初の安らいだ時間を堪能した。


どれだけ時間が経ったんだろうか。なんだかふんわりしたものが頬に触って、俺の意識は覚醒した。


「おや、起こしてしまったようですね。すみません」

「いや、俺、寝てたのか。ごめん」


どうやら毛布をかけてくれたらしい。いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。


「その様子じゃ、夕べもあまり寝てないんでしょう」


笑うラツィオに、苦笑いを返す。まったくもって推察通り、夕べは全然眠れなかった。だからかな、安心してつい寝落ちちゃったんだな。


「少し落ち着いたようですし、いいものを見せてあげますよ」

「ははっ、ラツィオのいいものっつったら、どうせ魔物だろ」


なんせ、魔物オタクだもんな。


「もちろんです。でも可愛いんですよ」


そう言ったラツィオは、細く口笛を吹く。途端に、奥の部屋からバレーボールくらいのもっふもふした白い毛玉が猛ダッシュで飛び出してきた。


「おすわり」


ラツィオの号令に、白い毛玉はびしっとオスワリして見せる。

よくよくみると、もっふもふな仔ウルフだ。しろい毛並みに黒いおおきな目がかわいらしい。

オスワリしたのを褒めてほしいのか、誇らしげな目でラツィオを見上げる様子は超絶ラブリーだ。


「よくできました。えらいですね」


微笑んでよしよしと仔ウルフを撫でるラツィオは、人間にはなかなか見せないレベルの笑顔だった。


「すげー! ついに魔物を仲間にできるようになったのか!」

「ええ、まだ成体は無理ですけど、若い個体なら」


そういってラツィオは仔ウルフを抱き上げると、俺にひょいと手渡した。


「この子はね、ゆずちゃんに飼ってもらうことになっているんです。この子を連れて家にお帰りなさい。そろそろゆずちゃんも心配している頃かもしれませんからね」
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