70 / 75
ところでその実、どうなんだ?
しおりを挟む
いやいや、おっさん達、ゆずに肩入れしすぎだから。アイツ、超ご機嫌で採取に繰り出してったんだからな? 今めっちゃ狼狽えてるのは、むしろ俺だから!
そうは思ったものの、もちろん口には出せない。それ言ったら多分、俺はスマキにされるからだ。
「まぁまぁ、待て待て」
急にプラグ王子が場を納めにかかった。相手が王子だからだろうか、非難轟々だったおっさんどもも、急に鉾を収める。やっぱりアレか、長いものには巻かれろってことか。
「肝心の君の気持ちを聞いていなかった。君がゆずちゃんを嫌いなら、無理強いはよくないよな」
ニッコリとプラグ王子が微笑む。
急に常識的なこと言い出しやがって、逆に怖い。
「嫌いなら一緒には暮らしてねえよ。ただアイツは、ガキの頃からの幼馴染で、そんな風に考えたことも無かったっていうか」
もはやガキの頃の面影なんか、皆無だけどな。
「うんうん、それで」
「それでって」
「アホだな、君は。今考えればいいだろう。幼馴染といえど、今となっては立派なレディだ。可愛いとか、他の男に取られたくないとか、そういう思いがあるんじゃないのか?」
プラグ王子のご高説に、囃すような口笛やら指笛やらが飛びまくる。
このやろう、そこまで俺を追い詰める気なら、こっちだって奥の手を出してやる。こちとらお前が幼馴染のミリーちゃんに惚れてること、お見通しなんだからな!
今頃はまさに食堂の看板娘と小国でも一国の王子だからって、身分差に悩んでる最中だろう、そうだろう!
お前のその言葉、そっくりそのまま返してやるわ!つーかそのウジウジした迷いに、この手で引導を渡してくれるわ!
「お、お前だってミリーちゃんのこと、好きなんじゃないのか!?」
「あれ? よく知ってたね。そうそう、実は僕もちょっと前まで悩んでいたんだ。幼馴染って厄介だよね。でも考えに考えて、ミリーのこと本当に大切だって分かったから。これは恋愛の先輩からのアドバイスだと思ってよ」
あああ~~~ちくしょう! 既に乗り越えてやがった! これじゃあ逆効果じゃねえか。
内心悶絶する俺に、プラグ王子はニッコリと笑いかけてくる。
「まぁ、君もゆっくりと考えてごらんよ。幸いこの村のみんなは、ゆずちゃんの健気な気持ちを知っているからね。多分君が答えを出すまでは、ヤキモキしながらも見守ってくれるだろう」
いやいやいや、王子サマ……後ろのおっさん達、めっちゃ殺気立ってるから!
「皆さんももうしばらく、この腰抜けが覚悟を決めるまで待ってやってくださいね。ゆずちゃんは待つつもりみたいだから、彼女の気持ちを尊重しましょう」
「そうだな。ゆずちゃんに感謝しろよ」
プラグ王子とアデラールが念押ししてくれたからか、ようやくおっさん達が「しょうがねえなあ」と、その包囲網を解いてくれた。強大な圧がなくなって、俺はようやっと大きく息をつく。
ゆずによって追い詰められたというのに、ゆずに感謝しろとは皮肉なモンだ。
もはやこの村に、俺の安息の場所はないのか。
そうは思ったものの、もちろん口には出せない。それ言ったら多分、俺はスマキにされるからだ。
「まぁまぁ、待て待て」
急にプラグ王子が場を納めにかかった。相手が王子だからだろうか、非難轟々だったおっさんどもも、急に鉾を収める。やっぱりアレか、長いものには巻かれろってことか。
「肝心の君の気持ちを聞いていなかった。君がゆずちゃんを嫌いなら、無理強いはよくないよな」
ニッコリとプラグ王子が微笑む。
急に常識的なこと言い出しやがって、逆に怖い。
「嫌いなら一緒には暮らしてねえよ。ただアイツは、ガキの頃からの幼馴染で、そんな風に考えたことも無かったっていうか」
もはやガキの頃の面影なんか、皆無だけどな。
「うんうん、それで」
「それでって」
「アホだな、君は。今考えればいいだろう。幼馴染といえど、今となっては立派なレディだ。可愛いとか、他の男に取られたくないとか、そういう思いがあるんじゃないのか?」
プラグ王子のご高説に、囃すような口笛やら指笛やらが飛びまくる。
このやろう、そこまで俺を追い詰める気なら、こっちだって奥の手を出してやる。こちとらお前が幼馴染のミリーちゃんに惚れてること、お見通しなんだからな!
今頃はまさに食堂の看板娘と小国でも一国の王子だからって、身分差に悩んでる最中だろう、そうだろう!
お前のその言葉、そっくりそのまま返してやるわ!つーかそのウジウジした迷いに、この手で引導を渡してくれるわ!
「お、お前だってミリーちゃんのこと、好きなんじゃないのか!?」
「あれ? よく知ってたね。そうそう、実は僕もちょっと前まで悩んでいたんだ。幼馴染って厄介だよね。でも考えに考えて、ミリーのこと本当に大切だって分かったから。これは恋愛の先輩からのアドバイスだと思ってよ」
あああ~~~ちくしょう! 既に乗り越えてやがった! これじゃあ逆効果じゃねえか。
内心悶絶する俺に、プラグ王子はニッコリと笑いかけてくる。
「まぁ、君もゆっくりと考えてごらんよ。幸いこの村のみんなは、ゆずちゃんの健気な気持ちを知っているからね。多分君が答えを出すまでは、ヤキモキしながらも見守ってくれるだろう」
いやいやいや、王子サマ……後ろのおっさん達、めっちゃ殺気立ってるから!
「皆さんももうしばらく、この腰抜けが覚悟を決めるまで待ってやってくださいね。ゆずちゃんは待つつもりみたいだから、彼女の気持ちを尊重しましょう」
「そうだな。ゆずちゃんに感謝しろよ」
プラグ王子とアデラールが念押ししてくれたからか、ようやくおっさん達が「しょうがねえなあ」と、その包囲網を解いてくれた。強大な圧がなくなって、俺はようやっと大きく息をつく。
ゆずによって追い詰められたというのに、ゆずに感謝しろとは皮肉なモンだ。
もはやこの村に、俺の安息の場所はないのか。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
黒髪の聖女は薬師を装う
暇野無学
ファンタジー
天下無敵の聖女様(多分)でも治癒魔法は極力使いません。知られたら面倒なので隠して薬師になったのに、ポーションの効き目が有りすぎていきなり大騒ぎになっちまった。予定外の事ばかりで異世界転移は波瀾万丈の予感。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる