上 下
68 / 75

おいおいおいおい、ちょっとどこまで知ってんの!?

しおりを挟む
リストが帰ってからはもう、何かを考えるのも億劫で、俺はとりあえず黙々と錬金することにした。

レベルを爆上げしてある俺は、錬金の速度も当然早い。高難度の錬金もお手の物だ。

だがしかし、今は脳みそが全然働いていない。なんせゆずとリストに与えられたダメージがデカすぎたからな。

集中力が必要な高レベルの錬金なんかやった日にゃ、失敗するのが目に見えている。仕方なく俺は、高次の錬金に必要になるであろう低レベルの錬金素材を黙々と、大量に生産していくことにした。




あー、めっちゃ作ったわ。

あれから何時間経ったんだろう。窓の外を眺めてみたら、だいぶ日が傾いていた。

やべぇ、もうそろそろ、ゆずが帰ってくる時間なんじゃないのか、これ。

そう思うともう、俺は落ち着いていられなくなってきた。いてもたってもいられないって、こういう状態の事言うんだろうな。

もう一度錬金に集中して心を落ち着けようかと思ったが、もはや初歩の初歩のそのまた初歩ってくらい簡単な「回復薬」の錬金ですら失敗する。

だめだ。材料の無駄だ。

そして、この部屋にいたら、確実にゆずに遭遇してしまう。


焦った俺は、とるものもとりあえず工房を飛び出した。

とはいえ、ゆずと顔を合わせる気まずさから逃げ出したいだけだったもんだから、行く当てがあろうはずもない。

市場に行ってはみたものの、店主たちから口々に「あらあら、ゆずちゃんによろしくね」なんて声をかけられて、それはそれで落ち着かない。

あいつホント人気あるんだよなぁ。

仕方なく市場での買い物をあきらめ、時間をつぶせる場所を求めて街をうろつく。

アデラールが営む雑貨屋にもいってみたが、なんでだか臨時休業の札が下がっていて中には入れなかった。今日はゆずの討伐依頼についていったわけでもない筈なのに、珍しい。

ブラブラと街中を歩いていたら、えらく酒場が賑やかなのに気が付いた。

ああ、酒場なら時間を気にせず呑んでいられるよな。

そう思って酒場の扉をあけた途端、なぜか急にその場が静まり返る。


「え? あれ?」


なんでみんなしてガン見してくるんだ!?

居心地が悪すぎて、速攻で踵を返し扉から外へ出ようとした瞬間、後ろからえらい勢いで引っ張られた。


「うおー! 野郎ども、本日の主役が来たぜえ!」

「逃がすな! 詳細をあまさず聞きだすんだ!」

「チクショー羨ましい奴め! ゆずちゃんになんてコクられたんだ!?」

「なんでコイツなんだよ、ゆずちゃーん!」


おいおいおいおい、ちょっとどこまで知ってんの!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

黒髪の聖女は薬師を装う

暇野無学
ファンタジー
天下無敵の聖女様(多分)でも治癒魔法は極力使いません。知られたら面倒なので隠して薬師になったのに、ポーションの効き目が有りすぎていきなり大騒ぎになっちまった。予定外の事ばかりで異世界転移は波瀾万丈の予感。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

処理中です...