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これは誘導尋問というヤツじゃないのか。

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そこは非常にセンシティブな問題なんで、プライベートな事はノーコメントで……ってわけにはいかないだろうか。

いや、無理だ。

テーブルを挟んで向かいに座るリストをチラリと見上げて、俺は早々に諦めた。笑顔、超怖い。


「ほ、保留した」

「保留!往生際が悪いな、君も!」


驚愕の表情されたって、そこはだってしょうがないだろ!?


「いや、だってそんなイキナリ言われても、俺ゆずの事そんな風に見た事ねーし! そんな、急に、無理……」


リストの視線の前に、言葉尻はどんどんと小さくなっていく。笑んだままピクリとも動かない、リストの鍛え上げられた表情筋の圧よ……。

暫く俺をまじまじと見つめていたリストは、小さなため息をつくと「まあ、確かに君にとっては急な話なんだろう、仕方ないかもしれないね」としぶしぶ同意してくれた。


「でも、保留って事は考える余地があるという事だよね」

「まあ、そりゃあその」

「ゆずちゃんのこと恋愛対象に見れるようになる気がしないなら、君だってそもそも保留にはしないだろう?」

「そ、う……だけど」


待て、ちょっと待ってくれ。これは誘導尋問というヤツじゃないのか。

だってしょうがないだろう。昨日ゆずのヤツ、俺に嫌われるかもって泣きそうだったんだ。そこでバシッと断れるほど俺はメンタル強くねーんだよ!

必死な顔でたくさんの感情を伝えてきたゆずを思い出したら、なぜか自然と顔が赤くなる。


顔に火が付いたみたいに真っ赤になって、それでも俺を好きだと伝えてくれたゆず。

寂しそうな、悲しそうな……諦め切った顔でごめんと謝ったゆず。

可愛いってひとこと褒めたくらいで踊り出しそうなくらい喜んで、満面の笑顔を見せるゆず。

そして「もっと女の子らしくなる」なんて言って、花がほころぶように愛らしく笑ったゆず。


昨日のゆずの表情を思い出せば出すほど、意味もなく顔に血がのぼる。なんだろう……なんかもう、めちゃくちゃ恥ずかしい。


「……なるほど」


気が付いたらめっちゃリストにガン見されていた。

なんなんだそのしたり顔の頷きは! 俺自身が意味不明なのに、なんでお前が「なるほど」なんだよ!

なんか無性に腹立たしいんだが!


「まあ、朝の笑顔を見る限り、君のその煮え切らない返事でもゆずちゃんは満足みたいだし。君に関してもこの様子なら放っといてもいい気がしてきた」

「意味が分からん」

「ははは、昨日俺が死にかけた甲斐はあったって事さ。満足したから、これでお暇するよ」


謎の言葉を残したまま、性格イケメン改め腹黒リストは爽やかに去っていった。

マジで意味が分からん。
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