63 / 75
完敗です。
しおりを挟む
「まだゆずの事、そーいう意味で好きか分かんねえけど……………か、可愛いとは、思ってる」
「ほ、本当!?」
「ぐ……まあ、不本意ながら」
その言葉を聞いた途端、今までの涙が嘘のように、ゆずは満面の笑顔を見せた。
眩しすぎて太陽光線を浴びたレベルだ。
なんだそれ。そんなに嬉しかったのか。
「キモくない? キャッシュみたいに可愛い?」
なんというヤツだ! キャッシュちゃんと比べろというのか。鬼か!
俺の内心の葛藤なんぞ相変わらず察した様子もなく、ゆずのヤツは期待に満ち溢れた瞳で見つめてくる。
「ぐ……キャッシュちゃんと、同じくらいには、可愛いと思ってる……」
「陸~~~!!!!!」
「うわっ!?」
嬉しさのあまりか分からんが、ゆずに飛びつかれて俺は死ぬほどテンパった。
「お、おまっ、抱きつくんじゃねーよ!」
「あ、ごめんごめん、嬉しくて」
ゆずの踊りださんばかりの喜びように、さすがに俺は引いてしまった。
だってその……別に付き合うって言ったわけでもないっていうか。まだ、好きかどうかも分かんねえのに。
「なんだよ、急にえらくハイテンションだな」
思わず独りごちれば、ゆずは満面の笑顔でこう言った。
「だって、伸び幅すごいと思わない? クソガキとかチンピラとか言われてたとこから、陸の天使キャッシュとおんなじくらい可愛いってとこまで行ったんだよ?」
その事実を突きつけられて、俺は密かに震撼した。
やべえ。
「なんかもう、すごく元気出てきた!」
「あ、いや、なんか」
「陸、私頑張る! お料理ももっと上手くなるし、もっとちゃんと女の子らしくなるから!」
そう言って、花がほころぶように愛らしく笑うゆずに、俺は敗北を悟った。
完全降伏する日なんて、多分もう、そう遠くない未来だ。
***
一夜明け、俺は部屋で一人、頭を抱えていた。
ちなみにゆずは、ご機嫌で朝イチから素材の採取に行ってしまった。今日はミリーちゃんとルーフェルミちゃんを誘って、割と近くの湖までピクニックがてらの小冒険の予定らしい。
正直採取に行ってくれて助かった。
ぶっちゃけ昨日あんな話をしたあとで、どんな顔してゆずと話せばいいんだか、皆目見当がつかない。自分でもわかるくらいに挙動不審な俺に比べ、ゆずは落ち着いたもんで、いつもと何一つ変わらない態度だった。
俺の挙動不審さに言及しないあたり、完全に大人の対応だ。
くそう、あのキレやすく、すぐに腕力にモノを言わせてた暴力男はいったいどこに行ってしまったんだ……!
「ほ、本当!?」
「ぐ……まあ、不本意ながら」
その言葉を聞いた途端、今までの涙が嘘のように、ゆずは満面の笑顔を見せた。
眩しすぎて太陽光線を浴びたレベルだ。
なんだそれ。そんなに嬉しかったのか。
「キモくない? キャッシュみたいに可愛い?」
なんというヤツだ! キャッシュちゃんと比べろというのか。鬼か!
俺の内心の葛藤なんぞ相変わらず察した様子もなく、ゆずのヤツは期待に満ち溢れた瞳で見つめてくる。
「ぐ……キャッシュちゃんと、同じくらいには、可愛いと思ってる……」
「陸~~~!!!!!」
「うわっ!?」
嬉しさのあまりか分からんが、ゆずに飛びつかれて俺は死ぬほどテンパった。
「お、おまっ、抱きつくんじゃねーよ!」
「あ、ごめんごめん、嬉しくて」
ゆずの踊りださんばかりの喜びように、さすがに俺は引いてしまった。
だってその……別に付き合うって言ったわけでもないっていうか。まだ、好きかどうかも分かんねえのに。
「なんだよ、急にえらくハイテンションだな」
思わず独りごちれば、ゆずは満面の笑顔でこう言った。
「だって、伸び幅すごいと思わない? クソガキとかチンピラとか言われてたとこから、陸の天使キャッシュとおんなじくらい可愛いってとこまで行ったんだよ?」
その事実を突きつけられて、俺は密かに震撼した。
やべえ。
「なんかもう、すごく元気出てきた!」
「あ、いや、なんか」
「陸、私頑張る! お料理ももっと上手くなるし、もっとちゃんと女の子らしくなるから!」
そう言って、花がほころぶように愛らしく笑うゆずに、俺は敗北を悟った。
完全降伏する日なんて、多分もう、そう遠くない未来だ。
***
一夜明け、俺は部屋で一人、頭を抱えていた。
ちなみにゆずは、ご機嫌で朝イチから素材の採取に行ってしまった。今日はミリーちゃんとルーフェルミちゃんを誘って、割と近くの湖までピクニックがてらの小冒険の予定らしい。
正直採取に行ってくれて助かった。
ぶっちゃけ昨日あんな話をしたあとで、どんな顔してゆずと話せばいいんだか、皆目見当がつかない。自分でもわかるくらいに挙動不審な俺に比べ、ゆずは落ち着いたもんで、いつもと何一つ変わらない態度だった。
俺の挙動不審さに言及しないあたり、完全に大人の対応だ。
くそう、あのキレやすく、すぐに腕力にモノを言わせてた暴力男はいったいどこに行ってしまったんだ……!
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
黒髪の聖女は薬師を装う
暇野無学
ファンタジー
天下無敵の聖女様(多分)でも治癒魔法は極力使いません。知られたら面倒なので隠して薬師になったのに、ポーションの効き目が有りすぎていきなり大騒ぎになっちまった。予定外の事ばかりで異世界転移は波瀾万丈の予感。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる