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完敗です。

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「まだゆずの事、そーいう意味で好きか分かんねえけど……………か、可愛いとは、思ってる」

「ほ、本当!?」

「ぐ……まあ、不本意ながら」


その言葉を聞いた途端、今までの涙が嘘のように、ゆずは満面の笑顔を見せた。

眩しすぎて太陽光線を浴びたレベルだ。

なんだそれ。そんなに嬉しかったのか。


「キモくない? キャッシュみたいに可愛い?」


なんというヤツだ! キャッシュちゃんと比べろというのか。鬼か!

俺の内心の葛藤なんぞ相変わらず察した様子もなく、ゆずのヤツは期待に満ち溢れた瞳で見つめてくる。


「ぐ……キャッシュちゃんと、同じくらいには、可愛いと思ってる……」

「陸~~~!!!!!」

「うわっ!?」


嬉しさのあまりか分からんが、ゆずに飛びつかれて俺は死ぬほどテンパった。


「お、おまっ、抱きつくんじゃねーよ!」

「あ、ごめんごめん、嬉しくて」


ゆずの踊りださんばかりの喜びように、さすがに俺は引いてしまった。

だってその……別に付き合うって言ったわけでもないっていうか。まだ、好きかどうかも分かんねえのに。


「なんだよ、急にえらくハイテンションだな」


思わず独りごちれば、ゆずは満面の笑顔でこう言った。

「だって、伸び幅すごいと思わない? クソガキとかチンピラとか言われてたとこから、陸の天使キャッシュとおんなじくらい可愛いってとこまで行ったんだよ?」


その事実を突きつけられて、俺は密かに震撼した。

やべえ。


「なんかもう、すごく元気出てきた!」

「あ、いや、なんか」

「陸、私頑張る! お料理ももっと上手くなるし、もっとちゃんと女の子らしくなるから!」


そう言って、花がほころぶように愛らしく笑うゆずに、俺は敗北を悟った。

完全降伏する日なんて、多分もう、そう遠くない未来だ。


***


一夜明け、俺は部屋で一人、頭を抱えていた。

ちなみにゆずは、ご機嫌で朝イチから素材の採取に行ってしまった。今日はミリーちゃんとルーフェルミちゃんを誘って、割と近くの湖までピクニックがてらの小冒険の予定らしい。

正直採取に行ってくれて助かった。

ぶっちゃけ昨日あんな話をしたあとで、どんな顔してゆずと話せばいいんだか、皆目見当がつかない。自分でもわかるくらいに挙動不審な俺に比べ、ゆずは落ち着いたもんで、いつもと何一つ変わらない態度だった。

俺の挙動不審さに言及しないあたり、完全に大人の対応だ。

くそう、あのキレやすく、すぐに腕力にモノを言わせてた暴力男はいったいどこに行ってしまったんだ……!
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