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危険な問答

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なぜかバリバリに責められてる感があるのが解せないんだが、リストが睨んでくるからしぶしぶ口を開いた。


「そりゃあ、ホラ。好きなヤツでも出来たのかなって思ってさ」

「誰だと思う?」


リストだと思ってそう言ったら蹴られたとは流石に言えない。リストがあんまりガン見してくるから、こっちは居心地が悪くて目がめちゃくちゃ泳ぐ。完全なる不審者だ。


「この町の誰か、だとは思うんだけどさ。教えてくれねえんだよ」

「だろうね」

「……ところでリスト、今日なんでそんな怖ええの?」


全身から出てはいけない黒いオーラが出てるんですけど!


「うーん、君の鈍さとデリカシーの無さに怒りの臨界点を超えてるからかな」


笑顔で言われると余計に怖い。ついさっきまで優しかったのに何この豹変っぷり。


「ごめん。よく分からんが、なんかゴメン」

「心あたりが無いとでも言いたいのかい? 前にディーノにも言われた筈だと思うがな」


さらにリストの雰囲気が怖くなる。

ディーノ……?

ディーノになんか言われた事、あったっけ……?


「こんな事周りがどうこう言う事じゃないと思うから、皆やきもきしながらも黙って見守ってるんだぞ。でも、君の態度はあんまりだ」

「……」

「ゆずちゃんが可哀想だ」

「そう言われても」


つい、口をついて出た。リストの目がさらに厳しくなったけど、俺にだって言い分がある。


「そう言われても、なんだい?」

「そりゃ俺だってあいつが好きになったヤツなら応援してやろうって思ってるんだ。だから聞いてんのに、あいつ全然教えてくれねえんだもん。俺だってどうしたらいいのか」

「アホか君は!」


え? なんかチョップされた! この真剣な展開で鋭いツッコミとか、意味が分からん!


「ああもう! 本気で分かってないんだな」


うわあ、本気で頭ぐしゃぐしゃ掻き回しながら苦悩するヤツ初めて見たわー……。

ピタ、と動きを止めて今度は骨ばったデカい掌で顔を覆って天を仰ぐ。さすがゲームの攻略対象者、いちいち動きが大袈裟だ。だがしかし、イケメンゆえか妙に絵になる。

なんて事をぼんやり考えていたら、顔を覆った指の間から、俺をじっと睨んできた。

なにその思いつめた顔。


「仕方ない、君が気付くのを待ってたらゆずちゃんがおばあちゃんになってしまう」


ボソリと呟いて、リストは意を決したように顔を上げた。

なんだ、この緊張感。いったい全体何言おうってんだ?


「いいか、ボンクラ。ゆずちゃんは」

「ダメーーーーーーー!!!!!」


リストの声を遮って、ゆずが扉を蹴やぶって飛び込んできた。
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