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巨大ナメクジはひたすらエグかった

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「たっ、助け……何か、こっちに来るっ」


可哀想に、譲はもう腰が抜けたようになっている。

まぁな、プルプルはしてないが、グニャグニャしてるしドロドロしてるし、あげくにヌメヌメしてるからな。こりゃしょうがないか。


「打撃は効きにくいわ。斬撃と氷系は普通に効くし、弱点は炎ね」


ミランダ姐さんの的確なアドバイスに、キャッシュちゃんが若干嫌な顔を見せたのが印象的だ。
キャッシュちゃんの得物は双剣。

防御を捨てて、右手にも左手にも短めの片手剣を持っている。スピードと手数で勝負するスタイルなだけに、自ずと敵との距離感は狭まるわけで。

あの巨大なヌメヌメと近距離で攻防とか、俺でも嫌だわ。

ゲームでは魔力温存のために容赦なく斬撃オンリーで倒してたけど、嫌がってたなんて気付かなかったんだ。

許してくれ、キャッシュちゃん。


「ここは任せてくれ!」


詫びの気持ちをこめて高らかに宣言し、ファイアを連続して放つ。

さすがにデカいだけあって、まだ低レベルな俺のひょろひょろファイアじゃ、3発でやっと仕留められるくらいだ。

息絶えるまでに巨大ナメクジは激しくのたうち回り、粘液やら酸っぽい液やらを撒き散らして何とも言えない異臭を放ち、最後には断末魔とも言える叫び声をあげ……動かなくなった頃には、軽く吐きたくなるおぞましさだった。

遠距離攻撃ならまだしも、肉弾戦でこれはキツい。今後もこの巨大ナメクジは俺のファイアでなんとかするしかないだろう。

キャッシュちゃんも巨大ナメクジの断末魔が怖かったのか、青い顔で遠巻きにしてるし、譲は……あれ? 譲は?

さっきいた筈の場所に姿が見えず、慌てて草を掻き分ければ、採取バッグを抱き締めたまま横たわる、華奢な体を発見した。

……あ、気絶していらっしゃる。

譲にあの巨大ナメクジの悶絶ぶりはキツ過ぎたか。可哀想に相当怖かったらしく、頬は涙でぐしゃぐしゃだ。

それにしても元の世界にいた時は、こんな気絶する程怖がったりしてなかったと思うんだけどなぁ。

デカくて視覚的にエグさが増してるのが悪いのか、それとも体が女になったから余計に怖がるようになってしまったのか。気になるところではあるが、本人気絶してるしな。

若干気になる点を残しながらも、俺は採取作業に戻る事にした。

キャッシュちゃんと一緒に川魚に挑んでいるうちに、やっと巨大ナメクジに削られた気力が回復してきたのを感じる。

さすが俺の天使。ほぼしゃべってくれなくても、真剣に獲物を狙ってる姿を見てるだけでも、めきめきと癒されるよなぁ。
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