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いよいよ森へ

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町であのおばあちゃんに花を貰ってから、不思議と譲、素直だよな。ちょっと調子が狂うけど……でも、さっきまでのもやもやした気持ちは結構解消できたかもしれない。


「確かに美味いな。陸の機嫌もなおったし、後でケーキ屋のあんちゃんに礼言っとくわ」

「うるせー、ニヤニヤすんな」


一応軽くジャブっといたが、簡単に受け止められた。

体は女の子になっても、ケンカで鍛えた反射神経は衰えてはいないらしい。

譲にからかわれるとは不本意だが、地味に八つ当たりしてしまったのをこうして笑い飛ばしてくれたんだから、感謝しなきゃだよな。

ひとしきり二人で笑ったあと、譲は急に真剣な顔になった。


「なあ、陸はこのゲームやった事あるって言ってたろ? これからどうすりゃいいんだ?」

「そうだな、錬金術の初級レシピ本も買ったから錬金してみてもいいし、村のそばの森に素材集めに行ってもいいんだけど」

「意味がわからん。お前な、ど素人にも分かるように説明しろ。て言うか昼メシも食ったし、体動かせるならその方がいい。ゲームみてえに座ってじっとしてるみてーなのは性に合わねえ」


あ、さては考えるのが面倒臭くなったな

まぁ実際にやりながら説明した方が譲だってわかりやすいだろうし、なんてったって素材がないと初期の錬金だってできないわけだから、まずは素材集めが王道だろう。


「ほんじゃあ採取に行くか。材料ないと始まらないしな」


*********************************************


そんなこんなでやって来たのは、街に隣接しているお手軽な森。

自宅からわずか数メートルの位置にある、ちょっとした小道を5分ほど歩けば行けるという超親切設計だ。


「うっわー、森って感じだなー」


森ですから。譲の感嘆の声に内心ツッコミを入れる。

まぁ譲の反応も無理からぬことだ。俺たちときたら都会っ子で、こんな森とかはテレビか旅行でしか目にする事がない。こうして森の中に実際に入ったことなんてないんじゃないかな。


「……すげ。なあ陸、あれリスだよな」

「ははは、多分そうだな。しっぽふさふさだなー」


リスを驚かさないようになのか、譲が柄にもなく声を顰めるから、思わず笑ってしまった。譲は木々を身軽に渡っていくリスに今も見惚れている。

街の近くにある森は程よく明るくて、木漏れ日が美しい。木々がざわざわとざわめいて、小鳥のさえずりも聞こえる平和さで、ゲームを始めたばかりの冒険者達に優しいとっつきやすいフィールドだ。
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