5 / 75
まずは町の探索だよな!
しおりを挟む
少しの緊張と共に、ゆっくりと外への扉を開ける。
同時に目に飛び込んできた光景に、俺は感動でしばし呆然としてしまった。
すげえ、本当に、あのゲームの世界だ。
散々ゲームで歩き慣れた道でも、現実に歩くとなると不思議な感慨が湧く。
明るい日差しの中、感触を確かめるようにゆっくりと歩いてみる。まだ舗装もされていない、土を均しただけの道も、ほったて小屋を並べたみたいな安普請の簡素な街並みも、あちこちの国から集まって来たらしい訛りも様々な住人達も、すべてがリアルだ。
ああ、まだ開拓がはじまったばっかりだから、村もまだまだ小さくて、森を切り開いて出来たんだってのがよく分かる。
村を囲む森からは、鳥のさえずりが響いていた。
「ぐえっ!?」
思わず興味津々な顔で辺りを見回しながら歩いていると、横から譲が勢い良く体当たりしてきやがった。完全によそ見していただけに、避けることもできない。
ちくしょう、思いっきりよろけたじゃねえか。
「痛ってぇ……」
「悪りぃ、こいつがぶつかって来てよぉ」
唇をとがらせた譲が示す先を見れば、金髪のチャラっとした男が相好を崩していた。
「ああ、可愛いお嬢さん、悪かったね。怪我は無いかい?」
おおお~!!! お前は、リスト!
そっか、あったあった、こういうイベント。たしか女主人公限定のイベントで、返答次第で村の外に冒険に出る時に、こいつを雇えるようになるんだ。ちなみに男主人公だと出会いは一週間も後になる。
「いや、別に。ケガはねえけど」
「良かった」
憮然とした表情の譲に、リストはこれでもかというくらいのイケメンスマイルをみせた。
「これも何かの縁だ、もし村の外に出るような事があったら声かけてくれよ。俺、こう見えて結構腕もたつからさ」
「はぁ?」
いきなりの展開に譲は早くも眦を吊り上げる。いやいや、なんでいきなりケンカ腰なんだよ、そこは心良く好意を受けてくれ。
リストといえば、このできたての村『ランハイム』の警護を国から任されている凄腕の騎士だ。超強いのに、めっちゃ安い雇用金額で村の外での素材採取に付き合ってくれる、素晴らしい人材なんだぞ!?
「今日のお詫びに依頼料は安くしとくよ」
「なんだテメェ……痛てっ!?」
案の定ナイスな提案をしてくれるリストに向かって、なぜかいきなり戦闘態勢に入りそうな譲。
ヤバイと思った俺は、譲の耳を無言で引っ張った。
道端でインネンつけられて即ケンカ、なんて日常を送っているコイツからすれば、声をかけてくる奴は倒していいと思っているのかもしれないが、これじゃこの先が思いやられる。
ほんともう、手のかかる子だこと。
同時に目に飛び込んできた光景に、俺は感動でしばし呆然としてしまった。
すげえ、本当に、あのゲームの世界だ。
散々ゲームで歩き慣れた道でも、現実に歩くとなると不思議な感慨が湧く。
明るい日差しの中、感触を確かめるようにゆっくりと歩いてみる。まだ舗装もされていない、土を均しただけの道も、ほったて小屋を並べたみたいな安普請の簡素な街並みも、あちこちの国から集まって来たらしい訛りも様々な住人達も、すべてがリアルだ。
ああ、まだ開拓がはじまったばっかりだから、村もまだまだ小さくて、森を切り開いて出来たんだってのがよく分かる。
村を囲む森からは、鳥のさえずりが響いていた。
「ぐえっ!?」
思わず興味津々な顔で辺りを見回しながら歩いていると、横から譲が勢い良く体当たりしてきやがった。完全によそ見していただけに、避けることもできない。
ちくしょう、思いっきりよろけたじゃねえか。
「痛ってぇ……」
「悪りぃ、こいつがぶつかって来てよぉ」
唇をとがらせた譲が示す先を見れば、金髪のチャラっとした男が相好を崩していた。
「ああ、可愛いお嬢さん、悪かったね。怪我は無いかい?」
おおお~!!! お前は、リスト!
そっか、あったあった、こういうイベント。たしか女主人公限定のイベントで、返答次第で村の外に冒険に出る時に、こいつを雇えるようになるんだ。ちなみに男主人公だと出会いは一週間も後になる。
「いや、別に。ケガはねえけど」
「良かった」
憮然とした表情の譲に、リストはこれでもかというくらいのイケメンスマイルをみせた。
「これも何かの縁だ、もし村の外に出るような事があったら声かけてくれよ。俺、こう見えて結構腕もたつからさ」
「はぁ?」
いきなりの展開に譲は早くも眦を吊り上げる。いやいや、なんでいきなりケンカ腰なんだよ、そこは心良く好意を受けてくれ。
リストといえば、このできたての村『ランハイム』の警護を国から任されている凄腕の騎士だ。超強いのに、めっちゃ安い雇用金額で村の外での素材採取に付き合ってくれる、素晴らしい人材なんだぞ!?
「今日のお詫びに依頼料は安くしとくよ」
「なんだテメェ……痛てっ!?」
案の定ナイスな提案をしてくれるリストに向かって、なぜかいきなり戦闘態勢に入りそうな譲。
ヤバイと思った俺は、譲の耳を無言で引っ張った。
道端でインネンつけられて即ケンカ、なんて日常を送っているコイツからすれば、声をかけてくる奴は倒していいと思っているのかもしれないが、これじゃこの先が思いやられる。
ほんともう、手のかかる子だこと。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
黒髪の聖女は薬師を装う
暇野無学
ファンタジー
天下無敵の聖女様(多分)でも治癒魔法は極力使いません。知られたら面倒なので隠して薬師になったのに、ポーションの効き目が有りすぎていきなり大騒ぎになっちまった。予定外の事ばかりで異世界転移は波瀾万丈の予感。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる