上 下
103 / 144

【ジェード視点】絶対になんかあっただろ!③

しおりを挟む
「リカルド」

「な、なんだ」


オレが急にツッコミをやめたからか、リカルドが警戒するようにちょっと身を引いた。さすがにカンがいいとは思うが、悪いけど諦めてくれ、逃がす気はない。


「なんかもう細かいことはいいわ。ズバリ、ユーリンちゃんとなんかあっただろ」

「!」


あらやだ、真っ赤になっちゃった。

分かりやすいなー、デカい図体してなんだその可愛い反応。さらに落ち着かない様子が加速して、意味もなく手だの足だの首だのが妙な動きをし始めた。

絶対になんかあっただろ、これ。

吹き出したい気持ちをおさえて、オレは至って真面目な表情を装う。


「いや、その」


オタオタしているヤツを見上げながら、オレは考えを巡らせた。

先週の様子だと、ユーリンちゃんはとりあえず自分の気持ちをしっかりと自覚してるみたいだったよね。そして逆にリカルドは、彼女の役に立ちたいとは思ってても、まだまだ自覚ってとこまではいけてなかったっぽかった。

まぁ仕方ないよなぁ、なんせ朴念仁だし。……ってことは、多分。

自分の中でひとまず結論づけて、まだ挙動が不審なままのリカルドに、俺はストレートにこう質問した。


「もしかしてユーリンちゃんに告白でもされた?」


ビクン! とデカい体が揺れる。おお、図星か? と思った瞬間。


「い、いや、その……俺が」

「俺が……?」

「俺が、その、彼女に思いを告げた……」

「はあ!?」


思いもよらない言葉に、オレの方が面食らってしまった。

いやいや、嘘でしょ? このコミュ障っぷりで、告白なんて……コイツにそんな甲斐性あったの? ていうか自分の気持ちに気づいてたってことすら驚きだわ。

今日はもう驚いてばっかりだけど、今のが一番衝撃が大きかった。


「リ、リカルドのほうが告白したんだ……え、好きって言ったの?」


問えば、コクリと小さく頷く。そうかぁ、意外と思いっきりが良かったんだなぁ、リカルド。

いや、違うか。この感じじゃリカルドなりに勇気を振り絞ってのことなのかも知れない。そう思うと急に微笑ましくなってきた。


「ユーリンちゃん、なんて? 喜んでくれたでしょ」

「ああ、迷惑ではないと」


フッと嬉しそうにリカルドの目が細められる。無表情か困ってる顔が多いコイツが、こんなに優しげな表情を浮かべるなんて稀なことだ。

なんとなくオレまで嬉しくなる。


「そっか。良かったな、リカルド」


そう言った瞬間、屋上の扉が勢いよく開いて、オレンジ色の頭が飛び出してきた。


「こんなトコにいた!」


走ってきたのか、ユーリンちゃんの息はかなり乱れている。
しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

人見知りぼっち令嬢の婚約破棄

乃ノ八乃
恋愛
「レイネ嬢、私は今日、この場において君との婚約破棄を宣言する」 とある社交会の場、シュトラウゼン家が令嬢……レイネ・シュトラウゼンは婚約者であるこの国の第三王子、カイゼン殿下から婚約破棄を告げられる。 しかも、婚約破棄の理由は謂れのない罪を着せられるというもの。 証拠も何もない中、引っ込み思案で人見知りの彼女は何も反論できないまま、社交会を飛び出して家へと逃げ帰ってしまう。 そして家へと逃げ帰った彼女が一人、ベッドで泣き腫らしていると、背後から何者かが忍び寄り――――? これは引っ込み思案で友達もいないぼっち令嬢、レイネ・シュトラウゼンが婚約破棄をきっかけに不思議な出会いと別れの末、幸せになる物語。

もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉
恋愛
魔物を倒す英雄となる運命を背負って生まれた侯爵家嫡男ルーク。 しかし、赤ん坊の時に魔獣に襲われ、顔に酷い傷を持ってしまう。 英雄の婚約者には、必ず光の魔力を持つものが求められる。そして選ばれたのは子爵家次女ジーナだった。 顔に残る傷のため、酷く冷遇された幼少期を過ごすルークに差し込んだ一筋の光がジーナなのだ。 ジーナを誰よりも大切にしてきたルークだったが、ジーナとの婚約を邪魔するものの手によって、ジーナは殺されてしまう。 誰よりも強く誰よりも心に傷を持つルークのことが死してなお気になるジーナ。 ルークに会いたくて会いたくて。 その願いは。。。。。 とても長いお話ですが、1話1話は1500文字前後で軽く読める……はず!です。 他サイト様でも公開中ですが、アルファポリス様が一番早い更新です。 本編完結しました!

救助隊との色恋はご自由に。

すずなり。
恋愛
22歳のほたるは幼稚園の先生。訳ありな雇用形態で仕事をしている。 ある日、買い物をしていたらエレベーターに閉じ込められてしまった。 助けに来たのはエレベーターの会社の人間ではなく・・・ 香川「消防署の香川です!大丈夫ですか!?」 ほたる(消防関係の人だ・・・!) 『消防署員』には苦い思い出がある。 できれば関わりたくなかったのに、どんどん仲良くなっていく私。 しまいには・・・ 「ほたるから手を引け・・!」 「あきらめない!」 「俺とヨリを戻してくれ・・!」 「・・・・好きだ。」 「俺のものになれよ。」 みんな私の病気のことを知ったら・・・どうなるんだろう。 『俺がいるから大丈夫』 そう言ってくれるのは誰? 私はもう・・・重荷になりたくない・・・! ※お話に出てくるものは全て、想像の世界です。現実のものとは何ら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ただただ暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しく思います。 すずなり。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

地味でも美しくても恋を頑張る

ふわってィ
恋愛
 とある国の王族は、他の国や貴族に比べて、地味な顔立ちの者が多かった。しかし、顔は関係ないと、これまでの王達は何も対策をしなかった。  しかし、第一王子が、婚約者である隣国の王女に地味な顔だからと婚約破棄されてしまう。  このままだと他国は勿論、自国の民にも馬鹿にされてしまう。そしていつか国家転覆を図られるかもしれない。そう危機感を覚えた国王は、美形の血を取り込めば、王家を美形に出来るのではと考える。  そして国一番の美人と噂の伯爵令嬢に目をつけた。伯爵家とはいえ、彼女の家はギリギリ体裁を保てている程度。過去は王家に次ぐ資産家だったが、今や落ちぶれた家。国王はそこにつけこみ、婚約者に仕立てあげた。  だが第一王子と令嬢は共にコミュ障。しかも共に生まれつき無表情なため、どうしていいのか分からないし伝わらない。  今日も今日とて心の中で震えながら、頑張る二人の恋模様である。  最初はシリアスな感じです。気まぐれに物語が進みます

処理中です...