51 / 144
首席騎士様は、ただ見守る
しおりを挟む
「まったく……死にかけたのに呑気なことを」
不満げではあるけれど、もうリカルド様もアリシア様を責めたりはしなかった。きっと、ジェードさんの意を汲んでのことだろうと考えると、なんとなく微笑ましい。
リカルド様は、ジェードさんのことを苦手だって言っていたけれど、本心ではとても大切に思っているんじゃないのかなぁ。
「それよりさ、さっきオレたちが苦労して狩った魔物は? あれだって立派にBランクだ、せっかくだから持って帰らないと」
手を差し伸べて、アリシア様が立ち上がるのを助けながら、ジェードさんが尋ねる。
確かに、倒したって言っていたのに、アリシア様の近辺に魔物の姿はなかった。そりゃあ苦労して倒したんなら証になる頭部だけでも持ち帰らないと損だものね。
「あ……!」
脚に力が入らないのか、アリシア様がふらつく。それをしっかりと支えたジェードさんは、細身の割にとても頼もしい。
ジェードさんを見上げて頬を染めるアリシア様込みで、まるで一枚の絵のようだ。
めっちゃ萌える。
「うわぁ、いいなぁ」
思わずちっちゃく声が出ちゃって、慌てて口を押さえた。いやいやだって、こんな可愛い光景見たら仕方ないよね!?
「ご、ごめんなさい。……あの、ありがとう、ございます……」
「どういたしまして」
恥ずかしそうにうつむくアリシア様に対して、にっこりと笑んでエスコートするジェードさんは、どこまでもスマートだ。アリシア様がジェードさんを意識してぎこちない動きになっているのが可愛らしすぎて、胸がキュンキュンする。
アリシア様、もしかしてジェードさんのこと……。
いや、わかるよー! 顔も成績もいいだけじゃなく、優しくて頼もしいとなれば、乙女としては当然ね、惹かれちゃうよね。
しかも、こうして心身ともに支えてくれちゃったりすれば、ときめくなと言うほうが無理だよね!
「ジェードさん、紳士ですね!」
「……む、そうか」
このわくわく感を伝えたくて、思わずリカルド様に同意を求めてしまったんだけれど、思いっきり微妙な顔をされてしまった。
うーむ、男の人にはわからない感覚だったか。
萌えを分かち合えなくて残念だけれど、私の眼前で、さらに可愛らしい光景は続く。
「そ、そうですわ。倒した魔物、でしたわね」
ジェードさんからさっと視線をそらして、赤い頬のまま、アリシア様が話題を変える。その仕草すらとても可憐だ。
「少し離れたところにあるんですの。案内いたしますわ」
そう言って、アリシアが自分の周囲の結界を解いてゆっくりと歩き出す。
その後について、数分歩いた頃だった。
いきなり、強烈な殺気に、全身が包まれた。
不満げではあるけれど、もうリカルド様もアリシア様を責めたりはしなかった。きっと、ジェードさんの意を汲んでのことだろうと考えると、なんとなく微笑ましい。
リカルド様は、ジェードさんのことを苦手だって言っていたけれど、本心ではとても大切に思っているんじゃないのかなぁ。
「それよりさ、さっきオレたちが苦労して狩った魔物は? あれだって立派にBランクだ、せっかくだから持って帰らないと」
手を差し伸べて、アリシア様が立ち上がるのを助けながら、ジェードさんが尋ねる。
確かに、倒したって言っていたのに、アリシア様の近辺に魔物の姿はなかった。そりゃあ苦労して倒したんなら証になる頭部だけでも持ち帰らないと損だものね。
「あ……!」
脚に力が入らないのか、アリシア様がふらつく。それをしっかりと支えたジェードさんは、細身の割にとても頼もしい。
ジェードさんを見上げて頬を染めるアリシア様込みで、まるで一枚の絵のようだ。
めっちゃ萌える。
「うわぁ、いいなぁ」
思わずちっちゃく声が出ちゃって、慌てて口を押さえた。いやいやだって、こんな可愛い光景見たら仕方ないよね!?
「ご、ごめんなさい。……あの、ありがとう、ございます……」
「どういたしまして」
恥ずかしそうにうつむくアリシア様に対して、にっこりと笑んでエスコートするジェードさんは、どこまでもスマートだ。アリシア様がジェードさんを意識してぎこちない動きになっているのが可愛らしすぎて、胸がキュンキュンする。
アリシア様、もしかしてジェードさんのこと……。
いや、わかるよー! 顔も成績もいいだけじゃなく、優しくて頼もしいとなれば、乙女としては当然ね、惹かれちゃうよね。
しかも、こうして心身ともに支えてくれちゃったりすれば、ときめくなと言うほうが無理だよね!
「ジェードさん、紳士ですね!」
「……む、そうか」
このわくわく感を伝えたくて、思わずリカルド様に同意を求めてしまったんだけれど、思いっきり微妙な顔をされてしまった。
うーむ、男の人にはわからない感覚だったか。
萌えを分かち合えなくて残念だけれど、私の眼前で、さらに可愛らしい光景は続く。
「そ、そうですわ。倒した魔物、でしたわね」
ジェードさんからさっと視線をそらして、赤い頬のまま、アリシア様が話題を変える。その仕草すらとても可憐だ。
「少し離れたところにあるんですの。案内いたしますわ」
そう言って、アリシアが自分の周囲の結界を解いてゆっくりと歩き出す。
その後について、数分歩いた頃だった。
いきなり、強烈な殺気に、全身が包まれた。
0
お気に入りに追加
1,447
あなたにおすすめの小説
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる