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茶々あやめ

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「人形のささやき」

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ある日、麗華が街の古道具店で妙な人形を見つけた。埃をかぶったガラスケースの中に、それは不気味な微笑みを浮かべていた。肌は白く、目はガラス玉のように光を反射している。ボロボロのドレスを纏ったその姿に、なぜか惹きつけられたらしい。

「よっちゃん、これ買って帰ろうよ」

「え?こんなの持ち帰ってどうするんだよ」

「だって可愛くない?アンティークだし、部屋に飾ったらオシャレでしょ?」

麗華の提案に反対する理由もなく、結局その人形は我が家にやってきた。家に帰ると、早速リビングの棚に人形を置いた。どこか不気味な雰囲気が漂うが、麗華は満足そうだ。


その夜、妙な夢を見た。暗い部屋の中で、誰かがこちらを見つめている気配。目を凝らすと、あの人形がじっと僕を見ていた。
目が合った瞬間、人形が小さく笑った気がして、背筋が凍った。

「気のせいだ……ただの夢だ」

目を覚ましても、あの夢の不快感は消えない。朝、リビングに行くと麗華が人形に話しかけていた。

「おはよう、今日もいい顔してるね」

「姉ちゃん、まさか毎朝挨拶してるの?」

「うん、なんだか話しかけたくなっちゃうのよね。この子、なんだか生きてるみたいで可愛いの」

麗華が人形に愛着を持っているのは分かるが、僕にはどうしてもあの人形が不気味にしか見えなかった。
その日から、妙なことが起こり始めた。棚に置いていたはずの人形が、別の場所に移動しているのだ。

「ねぇ、よっちゃん、人形を動かした?」

「動かしてないよ。誰も触ってないはずだろ?」

麗華は首を傾げたが、気にしない様子でまた元の場所に戻した。しかし、夜になると再び人形は移動していた。今度はリビングのテーブルの真ん中に座っていた。

「どういうこと……?誰がこんなことを」

さすがの麗華も気味悪がっていたが、僕はもうその人形を家に置いておくのが嫌でたまらなかった。

「こんなの気味悪いよ、処分しよう」

「でも、せっかく買ったばかりだし……」

麗華は少し躊躇していたが、僕の強い説得で人形を捨てることに決めた。
次の日、ゴミ捨て場に人形を置いてきた。しかし、その夜再び悪夢が僕を襲った。夢の中で、誰かが耳元で囁く。

「なぜ捨てたの……?」

目を覚ますと全身が冷や汗でびっしょりだった。さらに驚いたのは、捨てたはずの人形が玄関に戻っていたことだ。麗華も驚いて言葉を失っていた。

「こんなこと、ありえない……どうして戻ってきたの?」

僕たちはもう恐怖でパニック状態だった。



その日、近くの神社でお祓いをしてもらうことに決めた。神主さんに事情を話すと、険しい顔で頷いた。

「この人形には何かが宿っているようです。すぐにお祓いをしましょう」

お祓いの最中、人形が突然カタカタと震え始めた。まるで怒っているかのように動き出し、僕と麗華は背筋が凍る思いだった。
しかし、神主の祈りが続くと次第に動きが止まり、静かに元の姿に戻った。

「これでもう大丈夫でしょう。ただ、この人形はここでお預かりします。決して戻ってきませんように」

そう言われて、僕たちは安心して家に帰った。だが、その夜、麗華がぽつりと言った。

「ねぇ、あの人形、実はちょっと可愛かったのにな……」

「もう二度と持って帰るなよ」

「冗談だってば」

そう言いながら、麗華は微かに笑った。僕は内心、少しだけ冷や汗をかきながら笑い返すしかなかった。

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