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11話
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『団長!』
聖女の捜索を続けるヒューバートに部下の1人、魔道具を持たせておいた部隊長から連絡が入った。
『たった今、新しい情報が入りました。入口に待機させておいたウォレス達が来まして聖女様の荷物らしき物が見つかったと……』
「何だと!?直ぐそっちに行く。何処にいる?」
『ソネ橋の側です』
ヒューバートが駆けつけると既に何人かが川沿いをウロウロしていた。ウォレスは主都へ向う異国風の少年がそぐわないバックを持っていた為、中身ごと買い取った事を報告した。
「異国風?」
「ええ、言葉も片言で、あまりまだ良く話せないようでした」
栄えている王都には実際異国人も多いので、そこを目指す事は不思議でも何でもないのだが……。
今のタイミングで異国人?怪しくないか?
団長の疑念にウォレスが答える。「確かに髪は短かかったですが、団長が言った短いスカートじゃありませんでしたよ。厚地の上下に胴を布で縛って……何処を取っても庶民!って感じでしたけどね。薬草採りも慣れてるようで、オキシ草を4束持ってました。あれの薬効は蕾のうちでないとありませんが、見事に全て蕾でしたし。なぁ、そうだよな?」
ハルも同意した。「ええ、それにバッグと本を売って貰うのに、中程度の宿代10日分寄越せと銀貸28枚と小金貸4枚取られました。ちゃっかりしてるって言おうか何て言おうか……」
「しかも足りない分は俺の革袋でって、しっかり要求して行きましたからね。これです」
「分かった、分かった。後でお前達にその金は返すから」
優しい、従順、穏やか……歴代聖女達から培われたイメージからは程遠い逞しい様子に、ヒューバートは少しばかり引っ掛かる事を覚えながらも、カーズからバックを受け取った。
「それに我々が人攫いだと思い込んで逃げたんでしょう?それなのにわざわざ目立つバックなんか持って近づいて来ますかね?」
ハルの疑問ももっともなので、ヒューバートは一旦小さな引っ掛かりを棚上げにし、バックを改めて見た。
聖女達は身1つ、持ち物も小さなバックぐらいが精々で、着替えもない状態で召還されるのが普通だ。
その思い込みのまま、スポーツバックに道着という着替えを持ち、スカートを脱いだ葵をそうとは気づかず、みすみす見逃した事を騎士達はまだ知らない。
「……確かに聖女様のバックだ。これで-」
ランフェルドをブン殴ったとはさすがに口に出来ない。
本2冊も異世界の物なのは確実だ。
読めない文字も勿論そうだが、装丁、紙質、綺麗に揃った印字まで、こちらの世界の物とはかけ離れている。
「団長、こんな物が川の中に」
「こっちにもありました」
川と川辺の薮の中からそれぞれ持って来たのは水にぐっしょり濡れ、紙が破れそうな記録帳と本。
ヒューバートは険しい顔になった。
あの時聖女は、もう1つの荷物は背負っていて、このバッグは手に持っていた。
運動神経は良さそうだったが、夜で足を踏み外して転落したとしたら、これを手放したとしても不思議ではない。
「……人手をもっと増やして川の捜索もしなければ」
直ちに魔道具で城に連絡が行った。
聖女が召還後行方不明になった事に加え、川に転落した可能性も示唆され、城の中は騒然となる。
他の本や記録帳が川の中やその辺りで発見された為、川の捜索は最優先事項と騎士達が大勢駆り出され異国の薬草採りの少年の事は、極めて多忙になったヒューバートの頭からすっかり抜け落ちていた。
「何?聖女が行方不明だと?それは本当か?」
信者から聞いたと、付人が思いがけない報告をして来たのでラダスール大司教は思わず問い返した。
「はい。今イルマヤ王国の上層部は大変な騒ぎだそうで」
今まで聖女召還から、教育と称する刷り込み、果ては婚姻までガッチリ彼女達を囲い込んでいたイルマヤ王国のまさかの大失態。
王国としては当然箝口令を敷いていた事だが、大勢の騎士が動いているのだ。
壁に耳あり、何処からかは漏れる。
「ー-ほほう。奴らを人攫いとな。それは面白い事になったものよ」
ラダスールはにんまりとした。
聖女がイルマヤを敵認定しているのなら、益々都合が良い。
「良いか?聖女を騎士達より早く見つけるのだ。上手く行けばライカ帝国がイルマヤ王国に成り代わる千載一遇の機会となるやも知れぬ」
聖女の捜索を続けるヒューバートに部下の1人、魔道具を持たせておいた部隊長から連絡が入った。
『たった今、新しい情報が入りました。入口に待機させておいたウォレス達が来まして聖女様の荷物らしき物が見つかったと……』
「何だと!?直ぐそっちに行く。何処にいる?」
『ソネ橋の側です』
ヒューバートが駆けつけると既に何人かが川沿いをウロウロしていた。ウォレスは主都へ向う異国風の少年がそぐわないバックを持っていた為、中身ごと買い取った事を報告した。
「異国風?」
「ええ、言葉も片言で、あまりまだ良く話せないようでした」
栄えている王都には実際異国人も多いので、そこを目指す事は不思議でも何でもないのだが……。
今のタイミングで異国人?怪しくないか?
団長の疑念にウォレスが答える。「確かに髪は短かかったですが、団長が言った短いスカートじゃありませんでしたよ。厚地の上下に胴を布で縛って……何処を取っても庶民!って感じでしたけどね。薬草採りも慣れてるようで、オキシ草を4束持ってました。あれの薬効は蕾のうちでないとありませんが、見事に全て蕾でしたし。なぁ、そうだよな?」
ハルも同意した。「ええ、それにバッグと本を売って貰うのに、中程度の宿代10日分寄越せと銀貸28枚と小金貸4枚取られました。ちゃっかりしてるって言おうか何て言おうか……」
「しかも足りない分は俺の革袋でって、しっかり要求して行きましたからね。これです」
「分かった、分かった。後でお前達にその金は返すから」
優しい、従順、穏やか……歴代聖女達から培われたイメージからは程遠い逞しい様子に、ヒューバートは少しばかり引っ掛かる事を覚えながらも、カーズからバックを受け取った。
「それに我々が人攫いだと思い込んで逃げたんでしょう?それなのにわざわざ目立つバックなんか持って近づいて来ますかね?」
ハルの疑問ももっともなので、ヒューバートは一旦小さな引っ掛かりを棚上げにし、バックを改めて見た。
聖女達は身1つ、持ち物も小さなバックぐらいが精々で、着替えもない状態で召還されるのが普通だ。
その思い込みのまま、スポーツバックに道着という着替えを持ち、スカートを脱いだ葵をそうとは気づかず、みすみす見逃した事を騎士達はまだ知らない。
「……確かに聖女様のバックだ。これで-」
ランフェルドをブン殴ったとはさすがに口に出来ない。
本2冊も異世界の物なのは確実だ。
読めない文字も勿論そうだが、装丁、紙質、綺麗に揃った印字まで、こちらの世界の物とはかけ離れている。
「団長、こんな物が川の中に」
「こっちにもありました」
川と川辺の薮の中からそれぞれ持って来たのは水にぐっしょり濡れ、紙が破れそうな記録帳と本。
ヒューバートは険しい顔になった。
あの時聖女は、もう1つの荷物は背負っていて、このバッグは手に持っていた。
運動神経は良さそうだったが、夜で足を踏み外して転落したとしたら、これを手放したとしても不思議ではない。
「……人手をもっと増やして川の捜索もしなければ」
直ちに魔道具で城に連絡が行った。
聖女が召還後行方不明になった事に加え、川に転落した可能性も示唆され、城の中は騒然となる。
他の本や記録帳が川の中やその辺りで発見された為、川の捜索は最優先事項と騎士達が大勢駆り出され異国の薬草採りの少年の事は、極めて多忙になったヒューバートの頭からすっかり抜け落ちていた。
「何?聖女が行方不明だと?それは本当か?」
信者から聞いたと、付人が思いがけない報告をして来たのでラダスール大司教は思わず問い返した。
「はい。今イルマヤ王国の上層部は大変な騒ぎだそうで」
今まで聖女召還から、教育と称する刷り込み、果ては婚姻までガッチリ彼女達を囲い込んでいたイルマヤ王国のまさかの大失態。
王国としては当然箝口令を敷いていた事だが、大勢の騎士が動いているのだ。
壁に耳あり、何処からかは漏れる。
「ー-ほほう。奴らを人攫いとな。それは面白い事になったものよ」
ラダスールはにんまりとした。
聖女がイルマヤを敵認定しているのなら、益々都合が良い。
「良いか?聖女を騎士達より早く見つけるのだ。上手く行けばライカ帝国がイルマヤ王国に成り代わる千載一遇の機会となるやも知れぬ」
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