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一章 辻斬り
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その日……。
聞き込みに回っていた岡っ引きの“いわきやの親分”こと才蔵は、番屋を出て家路につく所だった。
いつの間にか雨が降って来ている。
番傘を広げ、番屋にいつも詰めている番人、“番太郎”にお休みの合図の手を上げた。
「……お艶の予想が当たったか」
一膳飯屋いわきやを営む、恋女房のお艶が『古傷がシクシク痛むからきっと雨になるよ。お前さん、傘を持ってお行きな』と言って、無理矢理、嫌がる亭主に持たせた物だった。
「こんな邪魔くさい物……」とブツブツ言い、番屋に置いて聞き込みに回っていたのだが、お艶の予想がピタリと当たったのである。
彼女の得意そうな顔が脳裏に浮かぶ。
『ほ~ら、お前さん、あたしの言った通りだろう?』
それを想像し、思わず苦笑いしながら、家路を急ぐ才蔵の足がピタリと止まった。
……?
ーー闇の向こうに誰かがいる……?
提灯をかざしてみたが頼りない灯りで良く見えない。
「誰か……いるのかい?」
突然闇の中から殺気が膨れ上がったと思ったら、風が襲って来た。
提灯がはね飛ばされ、ボッと燃え上がる。
再び風が襲って来る……!
衝撃と痛みが才蔵の身体に走った!
聞き込みに回っていた岡っ引きの“いわきやの親分”こと才蔵は、番屋を出て家路につく所だった。
いつの間にか雨が降って来ている。
番傘を広げ、番屋にいつも詰めている番人、“番太郎”にお休みの合図の手を上げた。
「……お艶の予想が当たったか」
一膳飯屋いわきやを営む、恋女房のお艶が『古傷がシクシク痛むからきっと雨になるよ。お前さん、傘を持ってお行きな』と言って、無理矢理、嫌がる亭主に持たせた物だった。
「こんな邪魔くさい物……」とブツブツ言い、番屋に置いて聞き込みに回っていたのだが、お艶の予想がピタリと当たったのである。
彼女の得意そうな顔が脳裏に浮かぶ。
『ほ~ら、お前さん、あたしの言った通りだろう?』
それを想像し、思わず苦笑いしながら、家路を急ぐ才蔵の足がピタリと止まった。
……?
ーー闇の向こうに誰かがいる……?
提灯をかざしてみたが頼りない灯りで良く見えない。
「誰か……いるのかい?」
突然闇の中から殺気が膨れ上がったと思ったら、風が襲って来た。
提灯がはね飛ばされ、ボッと燃え上がる。
再び風が襲って来る……!
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