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第5章 神々の異世界 ~天神回戦 其の弐~
第146話 地蔵狸まみお登場1
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ざざぁっ、と夜風が吹いて鬱蒼とした竹林の笹葉が一斉にざわめいていた。
暗い夜の山の森、頼りない月明かりだけでは一寸先が闇である。
妙なことに動物や虫の気配が一切せず、風の音だけが響いている。
「うぅ、みづき……。私のそばを離れんでくれよぉ……」
「日和、あんまりくっつくなよ。歩きにくいだろうが」
そんな夜の山の中に慎重にじりじりと笹をかき分けて行軍するみづきと、その腰に抱き付いて置いて行かれないよう怯える日和の二人の姿があった。
風に揺られた竹同士の節が擦れ、ぎぃぎぃ、という鈍い音や、ぶつかり合って、かーんかーんと甲高い音がそこかしこから聞こえてくる。
深い山は昼間でも薄暗いのに、夜間ともなると暗過ぎて視界は利かない。
見通せない闇から得体の知れない何かが飛び出してきそうではらはらする。
どーん、どーん、どーん……!
「ひぃっ、また聞こえたのじゃっ……!」
明らかに自然の環境音とは異なる音がして、日和は飛び上がって驚いていた。
竹の森の奥から、太鼓を叩くと思しきくぐもった音が聞こえる。
風の音に混じって流れてくる、淡々とした音色は何とも言えず不気味だった。
「この先からだな。日和、はぐれるなよ」
怯むことなくみづきは太鼓の音がするほうへと歩を進める。
地面の土と下生えを踏みしめる、じゃりっという音がやけに大きく耳に残った。
「み、みづき、もうちっとゆっくり歩いておくれなのじゃ……」
日和ときたら真っ暗な夜の森と正体不明な太鼓の音色を怖がり、みづきにしっかりとかじりついている。
力を失っていても人気があり、高位な神に対等な扱いを受け、由緒正しい女神だと崇められているのに、漂う残念な雰囲気にため息が漏れる。
「神様のくせに何をそんなに怖がってんだ? 情けないと思わないのかよ……」
「無体を言うでないっ! 神様だって怖いもんは怖いんじゃっ!」
呆れるみづきと涙目に抗議する日和は竹藪の中を進んでいく。
森の向こうから聞こえてくる太鼓の音に誘われるように。
どうしてこんな状況に至ったのか、時は少し遡る。
◇◆◇
「よっし! それじゃあ、早速行動開始だ。日和、今後の方針を決めたいから俺の話を聞いてくれ」
いよいよとやる気になったみづきは意気込んだ声をあげた。
八百万順列第二位の高位の神、天眼多々良に神の格を違いを見せつけられ、そのシキである、夜叉の慈乃姫には圧倒的な力の差を突きつけられた後のこと。
みづきと日和は天神回戦会場、太極天の社の北側出入り口を出たところだった。
「とにかく試合をどんどんやっていこう。日和の順位を上げて、俺のシキとしての力が強くなれば、先行きも明るくなってくるってもんだ。多々良さんと慈乃さんにやり込められたまま黙ってなんかいられるかよ」
生来比較的穏やかな性格のみづきではあるものの、ああまで挑発され、こき下ろされてはおとなしくしてはいられない。
朝陽と再会できるご褒美を差し置いても話は別である。
ただ、奮起するみづきの様子に日和は元気が無い。
不安げな表情で、何だか必死になって食って掛かろうとする。
「しかしっ……。駄目じゃみづきっ。今また多々良殿と試合をしては勝つどころか生き残れるかどうかも怪しいっ。そのうえ、もしも慈乃姫殿が出てくるようなことがあればどうするつもりなのじゃっ!?」
「はぁ? なんでまた多々良さんと試合をすることになってんだよ? あんな強い神様とまともにやり合ってちゃ、命が幾つあっても足りやしないぞ。当分の間は、多々良さんと争うのは避ける方向で行くつもりだ」
日和はあくまで真面目な剣幕だったが、みづきには言っている意味がわからない。
怪訝な面持ちで見返すと、日和は日和できょとんとした顔をしていた。
「えっ? 違うのか……? さっきの流れから、私はてっきりまた多々良殿と試合をするものじゃと思っておったが……」
「勝てないってわかってる相手と試合しても仕方ないだろ。俺たちはもう負けられないんだからそんな悪手は打てない。もっといい手を考えなきゃ駄目だ」
しばらく呆然と目をぱちぱち瞬かせていた日和は、本当にまたみづきが多々良と試合をすると思っていたようだ。
日和の言動に違和感を覚えつつ、みづきも自分の考えを伝える。
「じゃ、じゃあ、どうするつもりなんじゃ? みづきには何か考えがあるのか?」
「俺たちが狙うのは次の順列にいる神様だ。八百万順列なんていうわかりやすい力の番付けがあるんだから順序通りの相手と戦っていくのが定石だろ──、って日和、何だよその顔は……?」
しかし、みづきが次の試合への戦略を話していると、それを聞く日和の顔が見る見る内に不満そうに膨らんでいく。
そうかと思えば呆れた風のため息までつき始めた。
「何を言い出すのかと思えば……。要は一番弱い相手と戦おうと言うのじゃろう? 随分とまぁ、せこいやり口じゃなぁと思ってのう……。特に末席と準末席の試合など、さぞや格好の悪い見世物になるに違いない……。そう思うと気が重たくなること請け合いなのじゃ……」
信じられないことに、現在のこの苦境にそぐわない文句を言い出す始末。
当然、みづきは憤慨して語気を荒げた。
「なぁに馬鹿なこと言ってんだよ! 格好なんて取り繕ってる場合じゃねえだろ! 泥臭くいこうって言ったばかりじゃねえかっ! 俺たちが置かれてる立場をよく考えろっての!」
「うぅむ、しかしなぁ……」
それでも渋い顔をする日和に、みづきは諦めてため息をつく。
「はぁ……。とにかく、次の試合をするに当たって、準末席の神様がどんな相手なのかを確認したい。直接会いに行ってみたいんだけど、何か問題はあるか?」
「問題はないぞよ。……ないが、どうして会いに行くなどそのような面倒なことをするのじゃ? 試合をいざ執り行うその時にどんな相手かを確かめればよい話じゃろう? 要らぬ手間なら掛けても仕方がなかろう」
そして、さらに噛み合わない応答にみづきは頭を抱えた。
この頃になると、そろそろ自分の考えがおかしいのではなく、日和のというより神々の考えのほうがおかしいのではという疑問が浮かんでいた。
「おいおい、どんな相手なのかもわからないのに、いきなりぶっつけ本番で試合しようってのかよ? 考え無しにもほどがあるだろ。事前に戦う相手の情報を知ってるのと知らないのとじゃ雲泥の差があると思わないのか?」
「ふむ、そういうもんなのかのう……」
「真面目にやってくれよ……。実際に試合をするのは俺なんだぞ」
「……」
どうにも納得がいっていない様子の日和は腕を組んで押し黙ってしまう。
みづきもこれにはすっかりと弱り果ててしまった。
どうやれば話をわかってもらえるだろう。
「日和、頼むから言う通りにしてくれ。やれることはやっておきたいんだ。日和がそんなんじゃ俺だって勝てるものも勝てなくなるし、またさっきの慈乃さんみたく馬鹿にされちまうぞ」
「うぅっ、それはもう嫌なのじゃっ……!」
そう言われると、日和は難しそうな顔を一転させてあわあわし始める。
先ほど慈乃に蔑まれたことは本当に嫌だったみたいだ。
鼻息荒く拳を握りしめ、みづきの顔を真っ直ぐ見つめて言うのだった。
「正直なところ、みづきの言うことはよくわからんかったが、それで試合に勝てるようになるのなら言う通りにするのじゃっ! 準末席の神の元へ参ろうぞ!」
「わからんかったのか……」
げんなりと脱力する思いだったが、この際もう話が進むのなら埒が明かない問答をするのはとりやめ、無理やりにでも日和を連れて行ったほうが早そうだ。
話の通じない日和に違和感を感じつつ、みづきは八百万順列準末席の神が待つ領地へと赴くことに決めたのだった。
天神回戦を勝ち上がるための次なる一手、その試合相手の偵察である。
みづきは日和に問い掛けた。
「──それで、準末席の神様はどんな奴なんだ?」
◇◆◇
そんなこんなの経緯の後、現在の暗い竹林を往く道中に至る。
みづきと日和は一旦自陣の合歓の木神社に戻った後、瞬転の鳥居を用いて転移を行い、次に戦うであろう神の領地へと足を踏み入れた。
すると、そこは暗い竹藪の森の中で、会おうとしている神の姿は無い。
通ってきたはずの瞬転の鳥居はいつの間にか背後から消えていて、どうやら二人は待ち伏せでもされていたかのような格好となっていた。
「うぅ、みづきはよくこのような暗い山に入って怖じ気づかずにおれるのう……」
怖がる日和の声は震えていた。
みづきの背中あたりの衣服をしっかり掴んで離さない。
油断なく周囲の様子を窺いつつ、後ろを振り向かずにみづきは答える。
「全然怖くないって訳じゃないけど、山歩きにはちょっと馴染みがあってさ──。あぁ、いや、何でもない。とにかく、はぐれずに着いてきてくれよ」
言いかけてやめたのは、幼少の頃の山遊びの記憶である。
近所は山だらけで、よくこうした竹林の山道を駆け回ったものだ。
夢中で遊ぶ最中にふと耳を澄ましてみると。
風が吹くと笹の葉が一斉にざざぁっと鳴り渡り、竹と竹の節がこすれてぎぃぎぃと音を立て、風でしなった竹がぶつかり合うと、かーんかーんと甲高い音が響く。
それは木こりが竹を切る音のように聞こえ、気になってその場所に行ってみるとそこには誰もおらず、幼いながらに山の畏れを感じていた記憶は懐かしい。
こんな暗い夜の山には入ったことは無かったが、記憶通りに慣れているお陰なのか、シキとして心が強くなっているのか暗闇に恐怖は感じなかった。
「でも、この音を聞くのは初めてだな……」
ただ、竹の森の向こうから聞こえてくる不可解な音には眉をひそめる。
自然の音とは違い、どーんどーんと太鼓を叩く音色が闇の奥から聞こえてくる。
日和は正体不明なその音に怯えているが、どんな神がこの地に陣取っているかを先だって聞いていたみづきには心づもりをするゆとりがあった。
だから、この音の正体には何となく予想がついていた。
ここは何でもありの神々の世界であり、そういう不可思議があったとしても何もおかしくはないと思っている。
と、不意に竹と笹の森が切れる場所に辿り着いた。
そこは少し開けた広場になっていて、夜空からの月明かりが差し込んでいる。
広場の真ん中には、古めかしい小さな祠がひっそりと建っていた。
「よし……。日和、いくぞっ!」
「あっ、みづきっ、待ってくれなのじゃあ……!」
茂みの中から祠を凝視していたが、意を決してみづきは足を踏み出した。
慌てて日和も茂みから飛び出し、どたどたと後に続いて走ってきた。
淡い月明かりに照らされた祠の中には、みづきの膝丈ほどの石仏の姿があった。
「お地蔵様だ……」
呟くみづきが見下ろしているのは、柔和な微笑みを浮かべて両手を合わせ、首に赤い前掛けの布を付けたお地蔵様であった。
よく手入れが行き届いているようで、汚れ一つなくぴかぴかに磨かれている。
祠の周りも綺麗に掃除されていて、信心深い誰かが世話をしているのだろう。
「み、みづき……」
足にしがみつく日和の手に力が入る。
いつの間にかあれだけ吹いていた風はぴたりと止んでいた。
騒々しかった山の様子は今や嘘のようで、不気味な黒い気配が辺りに漂った。
どろどろどろどろどろどろ……!
今度はおどろおどろしい太鼓の音が鳴り始める。
「ひぃっ!?」
不意にみづきと日和の二人を暗い影が覆い尽くす。
息を呑む日和の悲鳴があがり、月を夜雲が遮ったのかとみづきは背の高い竹林の切れ目から空を見上げた。
するとそこには、巨大な妖しげな者がぬぼーっと立っていた。
一つ目の頭を丸めた青い坊主の巨体の化け物、見上げ入道である。
顔のど真ん中にある、ぎろりとした目がじぃっとこちらを見下ろしている。
まともにお互いの視線が合った。
「うぎゃああああぁぁぁぁーっ!! 出たあああああああぁぁぁぁーっ!!」
堪らず日和は驚き、両手両足をじたばたさせながらひっくり返ってしまった。
ごつーんと強かに後頭部を地面に打ち付けてしまい、とても痛そうである。
「うおおっ……!?」
みづきも急に現れた妖怪そのものに驚きと焦りを隠せない。
いくらそうした手合いの何かが出るだろう、と踏んでいたとしてもである。
「……」
「………」
目を回す日和はさておき、みづきと一つ目の巨大坊主は黙ったまま見つめ合う。
薄く笑みを浮かべる顔をたらりと冷や汗が流れた。
しばらくそうしていると。
何らかの危害を加えてくる訳でも無く、見下ろしてくるだけのその妖怪は単眼を細め、不満そうにやたらと甲高い声で喋り出した。
「なんだおめえ、このおたんこなす! あんまりびびらないんだなっ!」
「さっきの太鼓の音、あれって狸囃子だろ? どんな神様が待ってるのかを事前に聞いてたからな。こういう展開もあるかなって予想してたさ」
妖怪の異様に心を呑まれないよう、気をしっかりと持ってみづきも答える。
言ったそれは幼い頃に誰かから聞いた怪談話の一つだ。
狸囃子とは、夜になるとどこからともなく笛や太鼓の音色が聞こえてくるというもので、音の元を辿ろうとすると音は逃げていくように遠ざかり、気がつくと全く知らない場所に連れて行かれてしまう怪異である。
自らの正体を看破されていると思った妖怪は、露骨に渋い顔で舌打ちをした。
「ちぇっ、ばれてんのかよ、つまんねーのっ! そっちの女神様は面白いくらいにひっくり返ってくれたってのに、さっ!」
語尾を強めに言うと、その瞬間に妖怪と辺りの夜の景色は大量の煙に、ぼわんっと巻かれてすぐに何も見えなくなってしまった。
舞台装置か何かみたいにさぁっと煙が晴れていくと、あれだけ真っ暗だったのに辺りは眩しいくらいの明るい光に照らされ、不気味な竹林も消えてしまってもうどこにも見当たらない。
空はこの世界特有のいつもの黄金色をしていて、陽の下のそこは小高い山の峠道であった。
そして、お地蔵様の祠はそのままに、この神の領地の主が腰に両手を当てながら堂々と立っていた。
「へへんっ!」
現れた神は鼻を鳴らしてふんぞり返る。
ただ、その姿は随分小さく、自然と見下ろす格好になってしまう。
全身焦げ茶色のふさふさした毛並み、丸みを帯びた両耳、顔と手足の黒い模様、ゆらゆらと左右に振っているのは短めのぼてっとした尻尾。
哺乳類食肉目イヌ科、それはどこからどう見ても「狸」の姿であった。
首にお地蔵様と同じ赤い前掛けを付けた、何のデフォルメもされていないリアルな狸が二本足で直立して、みづきを見上げている。
さっきの見上げ入道と同じく、甲高い声で狸は高らかに名乗りを上げた。
「よく来たな! おいらはまみお! 地蔵狸のまみお様だっ!」
暗い夜の山の森、頼りない月明かりだけでは一寸先が闇である。
妙なことに動物や虫の気配が一切せず、風の音だけが響いている。
「うぅ、みづき……。私のそばを離れんでくれよぉ……」
「日和、あんまりくっつくなよ。歩きにくいだろうが」
そんな夜の山の中に慎重にじりじりと笹をかき分けて行軍するみづきと、その腰に抱き付いて置いて行かれないよう怯える日和の二人の姿があった。
風に揺られた竹同士の節が擦れ、ぎぃぎぃ、という鈍い音や、ぶつかり合って、かーんかーんと甲高い音がそこかしこから聞こえてくる。
深い山は昼間でも薄暗いのに、夜間ともなると暗過ぎて視界は利かない。
見通せない闇から得体の知れない何かが飛び出してきそうではらはらする。
どーん、どーん、どーん……!
「ひぃっ、また聞こえたのじゃっ……!」
明らかに自然の環境音とは異なる音がして、日和は飛び上がって驚いていた。
竹の森の奥から、太鼓を叩くと思しきくぐもった音が聞こえる。
風の音に混じって流れてくる、淡々とした音色は何とも言えず不気味だった。
「この先からだな。日和、はぐれるなよ」
怯むことなくみづきは太鼓の音がするほうへと歩を進める。
地面の土と下生えを踏みしめる、じゃりっという音がやけに大きく耳に残った。
「み、みづき、もうちっとゆっくり歩いておくれなのじゃ……」
日和ときたら真っ暗な夜の森と正体不明な太鼓の音色を怖がり、みづきにしっかりとかじりついている。
力を失っていても人気があり、高位な神に対等な扱いを受け、由緒正しい女神だと崇められているのに、漂う残念な雰囲気にため息が漏れる。
「神様のくせに何をそんなに怖がってんだ? 情けないと思わないのかよ……」
「無体を言うでないっ! 神様だって怖いもんは怖いんじゃっ!」
呆れるみづきと涙目に抗議する日和は竹藪の中を進んでいく。
森の向こうから聞こえてくる太鼓の音に誘われるように。
どうしてこんな状況に至ったのか、時は少し遡る。
◇◆◇
「よっし! それじゃあ、早速行動開始だ。日和、今後の方針を決めたいから俺の話を聞いてくれ」
いよいよとやる気になったみづきは意気込んだ声をあげた。
八百万順列第二位の高位の神、天眼多々良に神の格を違いを見せつけられ、そのシキである、夜叉の慈乃姫には圧倒的な力の差を突きつけられた後のこと。
みづきと日和は天神回戦会場、太極天の社の北側出入り口を出たところだった。
「とにかく試合をどんどんやっていこう。日和の順位を上げて、俺のシキとしての力が強くなれば、先行きも明るくなってくるってもんだ。多々良さんと慈乃さんにやり込められたまま黙ってなんかいられるかよ」
生来比較的穏やかな性格のみづきではあるものの、ああまで挑発され、こき下ろされてはおとなしくしてはいられない。
朝陽と再会できるご褒美を差し置いても話は別である。
ただ、奮起するみづきの様子に日和は元気が無い。
不安げな表情で、何だか必死になって食って掛かろうとする。
「しかしっ……。駄目じゃみづきっ。今また多々良殿と試合をしては勝つどころか生き残れるかどうかも怪しいっ。そのうえ、もしも慈乃姫殿が出てくるようなことがあればどうするつもりなのじゃっ!?」
「はぁ? なんでまた多々良さんと試合をすることになってんだよ? あんな強い神様とまともにやり合ってちゃ、命が幾つあっても足りやしないぞ。当分の間は、多々良さんと争うのは避ける方向で行くつもりだ」
日和はあくまで真面目な剣幕だったが、みづきには言っている意味がわからない。
怪訝な面持ちで見返すと、日和は日和できょとんとした顔をしていた。
「えっ? 違うのか……? さっきの流れから、私はてっきりまた多々良殿と試合をするものじゃと思っておったが……」
「勝てないってわかってる相手と試合しても仕方ないだろ。俺たちはもう負けられないんだからそんな悪手は打てない。もっといい手を考えなきゃ駄目だ」
しばらく呆然と目をぱちぱち瞬かせていた日和は、本当にまたみづきが多々良と試合をすると思っていたようだ。
日和の言動に違和感を覚えつつ、みづきも自分の考えを伝える。
「じゃ、じゃあ、どうするつもりなんじゃ? みづきには何か考えがあるのか?」
「俺たちが狙うのは次の順列にいる神様だ。八百万順列なんていうわかりやすい力の番付けがあるんだから順序通りの相手と戦っていくのが定石だろ──、って日和、何だよその顔は……?」
しかし、みづきが次の試合への戦略を話していると、それを聞く日和の顔が見る見る内に不満そうに膨らんでいく。
そうかと思えば呆れた風のため息までつき始めた。
「何を言い出すのかと思えば……。要は一番弱い相手と戦おうと言うのじゃろう? 随分とまぁ、せこいやり口じゃなぁと思ってのう……。特に末席と準末席の試合など、さぞや格好の悪い見世物になるに違いない……。そう思うと気が重たくなること請け合いなのじゃ……」
信じられないことに、現在のこの苦境にそぐわない文句を言い出す始末。
当然、みづきは憤慨して語気を荒げた。
「なぁに馬鹿なこと言ってんだよ! 格好なんて取り繕ってる場合じゃねえだろ! 泥臭くいこうって言ったばかりじゃねえかっ! 俺たちが置かれてる立場をよく考えろっての!」
「うぅむ、しかしなぁ……」
それでも渋い顔をする日和に、みづきは諦めてため息をつく。
「はぁ……。とにかく、次の試合をするに当たって、準末席の神様がどんな相手なのかを確認したい。直接会いに行ってみたいんだけど、何か問題はあるか?」
「問題はないぞよ。……ないが、どうして会いに行くなどそのような面倒なことをするのじゃ? 試合をいざ執り行うその時にどんな相手かを確かめればよい話じゃろう? 要らぬ手間なら掛けても仕方がなかろう」
そして、さらに噛み合わない応答にみづきは頭を抱えた。
この頃になると、そろそろ自分の考えがおかしいのではなく、日和のというより神々の考えのほうがおかしいのではという疑問が浮かんでいた。
「おいおい、どんな相手なのかもわからないのに、いきなりぶっつけ本番で試合しようってのかよ? 考え無しにもほどがあるだろ。事前に戦う相手の情報を知ってるのと知らないのとじゃ雲泥の差があると思わないのか?」
「ふむ、そういうもんなのかのう……」
「真面目にやってくれよ……。実際に試合をするのは俺なんだぞ」
「……」
どうにも納得がいっていない様子の日和は腕を組んで押し黙ってしまう。
みづきもこれにはすっかりと弱り果ててしまった。
どうやれば話をわかってもらえるだろう。
「日和、頼むから言う通りにしてくれ。やれることはやっておきたいんだ。日和がそんなんじゃ俺だって勝てるものも勝てなくなるし、またさっきの慈乃さんみたく馬鹿にされちまうぞ」
「うぅっ、それはもう嫌なのじゃっ……!」
そう言われると、日和は難しそうな顔を一転させてあわあわし始める。
先ほど慈乃に蔑まれたことは本当に嫌だったみたいだ。
鼻息荒く拳を握りしめ、みづきの顔を真っ直ぐ見つめて言うのだった。
「正直なところ、みづきの言うことはよくわからんかったが、それで試合に勝てるようになるのなら言う通りにするのじゃっ! 準末席の神の元へ参ろうぞ!」
「わからんかったのか……」
げんなりと脱力する思いだったが、この際もう話が進むのなら埒が明かない問答をするのはとりやめ、無理やりにでも日和を連れて行ったほうが早そうだ。
話の通じない日和に違和感を感じつつ、みづきは八百万順列準末席の神が待つ領地へと赴くことに決めたのだった。
天神回戦を勝ち上がるための次なる一手、その試合相手の偵察である。
みづきは日和に問い掛けた。
「──それで、準末席の神様はどんな奴なんだ?」
◇◆◇
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みづきと日和は一旦自陣の合歓の木神社に戻った後、瞬転の鳥居を用いて転移を行い、次に戦うであろう神の領地へと足を踏み入れた。
すると、そこは暗い竹藪の森の中で、会おうとしている神の姿は無い。
通ってきたはずの瞬転の鳥居はいつの間にか背後から消えていて、どうやら二人は待ち伏せでもされていたかのような格好となっていた。
「うぅ、みづきはよくこのような暗い山に入って怖じ気づかずにおれるのう……」
怖がる日和の声は震えていた。
みづきの背中あたりの衣服をしっかり掴んで離さない。
油断なく周囲の様子を窺いつつ、後ろを振り向かずにみづきは答える。
「全然怖くないって訳じゃないけど、山歩きにはちょっと馴染みがあってさ──。あぁ、いや、何でもない。とにかく、はぐれずに着いてきてくれよ」
言いかけてやめたのは、幼少の頃の山遊びの記憶である。
近所は山だらけで、よくこうした竹林の山道を駆け回ったものだ。
夢中で遊ぶ最中にふと耳を澄ましてみると。
風が吹くと笹の葉が一斉にざざぁっと鳴り渡り、竹と竹の節がこすれてぎぃぎぃと音を立て、風でしなった竹がぶつかり合うと、かーんかーんと甲高い音が響く。
それは木こりが竹を切る音のように聞こえ、気になってその場所に行ってみるとそこには誰もおらず、幼いながらに山の畏れを感じていた記憶は懐かしい。
こんな暗い夜の山には入ったことは無かったが、記憶通りに慣れているお陰なのか、シキとして心が強くなっているのか暗闇に恐怖は感じなかった。
「でも、この音を聞くのは初めてだな……」
ただ、竹の森の向こうから聞こえてくる不可解な音には眉をひそめる。
自然の音とは違い、どーんどーんと太鼓を叩く音色が闇の奥から聞こえてくる。
日和は正体不明なその音に怯えているが、どんな神がこの地に陣取っているかを先だって聞いていたみづきには心づもりをするゆとりがあった。
だから、この音の正体には何となく予想がついていた。
ここは何でもありの神々の世界であり、そういう不可思議があったとしても何もおかしくはないと思っている。
と、不意に竹と笹の森が切れる場所に辿り着いた。
そこは少し開けた広場になっていて、夜空からの月明かりが差し込んでいる。
広場の真ん中には、古めかしい小さな祠がひっそりと建っていた。
「よし……。日和、いくぞっ!」
「あっ、みづきっ、待ってくれなのじゃあ……!」
茂みの中から祠を凝視していたが、意を決してみづきは足を踏み出した。
慌てて日和も茂みから飛び出し、どたどたと後に続いて走ってきた。
淡い月明かりに照らされた祠の中には、みづきの膝丈ほどの石仏の姿があった。
「お地蔵様だ……」
呟くみづきが見下ろしているのは、柔和な微笑みを浮かべて両手を合わせ、首に赤い前掛けの布を付けたお地蔵様であった。
よく手入れが行き届いているようで、汚れ一つなくぴかぴかに磨かれている。
祠の周りも綺麗に掃除されていて、信心深い誰かが世話をしているのだろう。
「み、みづき……」
足にしがみつく日和の手に力が入る。
いつの間にかあれだけ吹いていた風はぴたりと止んでいた。
騒々しかった山の様子は今や嘘のようで、不気味な黒い気配が辺りに漂った。
どろどろどろどろどろどろ……!
今度はおどろおどろしい太鼓の音が鳴り始める。
「ひぃっ!?」
不意にみづきと日和の二人を暗い影が覆い尽くす。
息を呑む日和の悲鳴があがり、月を夜雲が遮ったのかとみづきは背の高い竹林の切れ目から空を見上げた。
するとそこには、巨大な妖しげな者がぬぼーっと立っていた。
一つ目の頭を丸めた青い坊主の巨体の化け物、見上げ入道である。
顔のど真ん中にある、ぎろりとした目がじぃっとこちらを見下ろしている。
まともにお互いの視線が合った。
「うぎゃああああぁぁぁぁーっ!! 出たあああああああぁぁぁぁーっ!!」
堪らず日和は驚き、両手両足をじたばたさせながらひっくり返ってしまった。
ごつーんと強かに後頭部を地面に打ち付けてしまい、とても痛そうである。
「うおおっ……!?」
みづきも急に現れた妖怪そのものに驚きと焦りを隠せない。
いくらそうした手合いの何かが出るだろう、と踏んでいたとしてもである。
「……」
「………」
目を回す日和はさておき、みづきと一つ目の巨大坊主は黙ったまま見つめ合う。
薄く笑みを浮かべる顔をたらりと冷や汗が流れた。
しばらくそうしていると。
何らかの危害を加えてくる訳でも無く、見下ろしてくるだけのその妖怪は単眼を細め、不満そうにやたらと甲高い声で喋り出した。
「なんだおめえ、このおたんこなす! あんまりびびらないんだなっ!」
「さっきの太鼓の音、あれって狸囃子だろ? どんな神様が待ってるのかを事前に聞いてたからな。こういう展開もあるかなって予想してたさ」
妖怪の異様に心を呑まれないよう、気をしっかりと持ってみづきも答える。
言ったそれは幼い頃に誰かから聞いた怪談話の一つだ。
狸囃子とは、夜になるとどこからともなく笛や太鼓の音色が聞こえてくるというもので、音の元を辿ろうとすると音は逃げていくように遠ざかり、気がつくと全く知らない場所に連れて行かれてしまう怪異である。
自らの正体を看破されていると思った妖怪は、露骨に渋い顔で舌打ちをした。
「ちぇっ、ばれてんのかよ、つまんねーのっ! そっちの女神様は面白いくらいにひっくり返ってくれたってのに、さっ!」
語尾を強めに言うと、その瞬間に妖怪と辺りの夜の景色は大量の煙に、ぼわんっと巻かれてすぐに何も見えなくなってしまった。
舞台装置か何かみたいにさぁっと煙が晴れていくと、あれだけ真っ暗だったのに辺りは眩しいくらいの明るい光に照らされ、不気味な竹林も消えてしまってもうどこにも見当たらない。
空はこの世界特有のいつもの黄金色をしていて、陽の下のそこは小高い山の峠道であった。
そして、お地蔵様の祠はそのままに、この神の領地の主が腰に両手を当てながら堂々と立っていた。
「へへんっ!」
現れた神は鼻を鳴らしてふんぞり返る。
ただ、その姿は随分小さく、自然と見下ろす格好になってしまう。
全身焦げ茶色のふさふさした毛並み、丸みを帯びた両耳、顔と手足の黒い模様、ゆらゆらと左右に振っているのは短めのぼてっとした尻尾。
哺乳類食肉目イヌ科、それはどこからどう見ても「狸」の姿であった。
首にお地蔵様と同じ赤い前掛けを付けた、何のデフォルメもされていないリアルな狸が二本足で直立して、みづきを見上げている。
さっきの見上げ入道と同じく、甲高い声で狸は高らかに名乗りを上げた。
「よく来たな! おいらはまみお! 地蔵狸のまみお様だっ!」
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某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
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