親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

文字の大きさ
上 下
45 / 73
ムー大陸編

32ムー大陸豆知識

しおりを挟む
 アルハザードが訓練を開始してから三日が経った。その間、昼前は神谷がギターの練習、アルハザードは邪神相手に精神を島の住人のものに合わせる練習をして過ごし、午後からはアルハザードは訓練に出かけ、神谷はラ・ム一に呼ばれてギターを弾いたり、王や他の黄金人たちと話をする機会を得た。

 ラ・ム一との会話で少し分かったことがあった。

・この国には元々黄金人とそれに仕える白色人だけが住んでいた。

・赤色人と青色人が住むようになったのは、国を守る兵士として赤色人、雑用係として赤色人を必要としたため、近隣の国から呼んで住まわせている。

・精神力増幅機で生体ェネルギーを吸い上げるため、元々住んでいた白色人の末裔以外は定期的に自国の人間と人れ代わる。

・王は代々ラ・ム一を名乗っていて、現王はニ五代目であること。

・現王の王になる前の名前はチャーゴグガゴグマンチャウグガゴグチャウバナガンガマウグであること(これは一回聞いただけで忘れてしまった)。

・この国では月の満ち欠けを基準とした暦、現代の日本でいう旧暦を使用している(この国の天文に関する知識はかなりのもので、日食や月食についても正確に把握しているようだった。とはいっても、神谷が天文学の詳しい知識を持ち合わせていないので、あくまでも神谷の主観である)

・神谷たちが国の外で会った車に乗れる人間の選抜方法について訊いてみたが「そのうちに分かるだろう」とだけ答えられた。

・この国の黄金人は中世ヨーロッパの貴族のような存在で、働くことはなく、周りの国々からの貢物と青色人、赤色人の労働による産物で生活が成り立っている。

・この国の乗り物は飛行船と車だけで、この島の住民はこの島と周辺の海だけが世界の全てと思っているため、船を造って島の外に出ようとは思っていない(海産物は海辺の漁で捕れるものに限られている)。

・ヒラニプラの神を熱心に信仰しているが、歴代の王もそれに次ぐ存在だと思っている(神はウルフシュレーゲルスタインハウゼンべルガードルフフォラルテンワレンゲウィッセンハフトシャフェルスウェッセンシャフェワレンウォ一ルゲプフレゲウントゾルグファルチヒカイトべシュツヱンフォンアングライフェンドゥルヒイーラウプゲーリグフェンデウェルヒフォラルテルンツォルフタオセントヤーレスフォランデ一ェルシェイネンワンデルェステールデンェンシュデラウムシフゲブラウヒフリフトアルスザインウァシュプルンクフォンクラフトゲスタルトザインランゲファールトヒンツウィッシェンステイナルチグラウムアウフデアズーへンアッハディェステルンウェルヒゲハープトべウォーンバルプラネテンクレーゼドレーェンジヒウントウォヒンデアノイラッセウォンウェルスタンディグメンシュリックカイトコンテフォルツプランツェンウントジフェルフロイェンアンレべンスラングリフフロイデウントルーエミツニヒツアインフルヒトフオアアングライフエンフォンアンデラーインテリゲントゲシヨプスフオンヒンツウイッシエンステルナルトグラウメンという冗談のような長い名前の人の姿をした創造主であり、唯一無二の存在である)

・曜日の感覚がないため、神を礼拝するのは満月の日の夜と決まっている。

 などであるが、人の名前がやたらと長いのはこの異常に長い名前の神の存在故かもしれない。(とてもではないが、紙に書いても正確に読むことさえできない。ラ・ム一は王位についてからおよそ三百年間、満月のたびにこの名前を呼んでいるために暗記しているのだそうだ)

「大分コツが掴めてきたよ」

 アルハザードが部屋に戻って、紅茶を飲みながら言った。三日でコツを掴めることが早いのか遅いのかは分からない。

「僕もラ・ム一から少しだけどこの島のことを聞いたよ」

「そのようだね。但し、肝心なことは教えもらっていないね」

「肝心なこと?」

「たとえば、あの車に乗っていた者は何をしに行ったのか、とかね」

「何をしに行ったのかな」

「そんなこと教えてくれるはずがないだろ。自分で確かめるしかないんだよ」

 アルハザード空になったカップをテーブルに置くと、カップごとテーブルが消失した。

「今日は夜に少し散策の続きをしようかな」
 アルハザードが横になった。訓練の後は少し横になることが習慣になりつつある。

 この魔人にとっても、訓練は精神的な負荷が大きいようだ。

「何か前とは違ったものが見られるのかな」
「そのようだね、夕食の後はまたワインでも飲みながら、ゆっくり時間をつぶすことにしよう」

 その前に邪神にギターを聴かせるサービスをすることは言うまでもない。

「そろそろ出かけるとしようか」

 二人で赤ワインをボトル一本ずつ飲んだ時、アルハザードが立ち上がった。

 神谷の腕時計の針は夜の十一時を指していた。この国の住民は皆早寝早起きらしく、十時を過ぎると王宮の中は閑散として廊下を歩いている者は誰もいない。

「この国の人たちはみんなこんなに健康的な生活をしているのかな」

「健康的な生活というよりも、生体エネルギーを吸われて、早く寝てしまうんじゃないかな」
「それじゃあ、この前の黒い玉を作っている人たちも、きっと元気な方なんだろうね」
「そうだろうね、じゃなければ夜遅くにあんなに動き回って作業はできないだろうね」

 部屋を出て、通路を通り階段を降りてからしばらく歩き「ここだね」と言ってアルハザードが壁に手を当てるといつものように穴が開いた。
 中は先日黒い玉を製造していた部屋だった。また二人の姿は互いにのみ見える透明になった。

 部屋の隅をみると先日の五倍くらいの量の黒い袋があった。
「すこし黙って見ていることにしよう」

 アルハザードの言葉通り、静かにたたずんで状況を見ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...