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13話

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自宅とサリーさん宅の中間辺りに到着した俺は、その川近に石のゴーレムを"格納庫"から取り出した。

家一軒分ほどの石の塊が瞬時に出てくるのはやはり少し驚くが、利用していればいずれ慣れていくだろう。

というわけで、今日だとは限らないがリーナさんの友人達を入浴させる施設を成形していこうと思う。

同時に入浴させるのならそれなりの大きさの浴槽を作るとして、その前に一通り身体を洗ってからのほうがいいだろう。

俺がその場に居られればお湯の塊を操作して汚れを落とさせてもいいのだが、リーナさん以外とはではない。

なので、建物の上部に貯水タンクを作っておき、そこでお湯を維持しておく形のシャワーでも用意するか。

液体そのままで維持するより、容器に入れて温度だけを維持するほうがコストが軽いからな。

ジョウロみたいな形になるので、水圧の都合で前世ほどの勢いが出せるかはわからないが……まぁ、試してみればいい。

床は排水のために排水口へ向かう傾斜をつけ、その上に表面が平行になるように調整した"すのこ"を置く。

"すのこ"は落とし物をすることも考慮し、1m四方の物で簡単に持ち上げられるようにする。

同様に、手前に作る脱衣所にも置く予定なので結構な数の木材も必要だな。

換気やシャワーなどの連絡のために窓もつけ、浴室と脱衣所を分けるためのドアも作るが……まぁ、"格納庫"のこともわかったし外で集めてくればいいか。



で、シャワーの勢いなどを試し、脱衣所の壁にちょっとした棚なども作って粗方完成したところ……そんなに大人数が来る予定でもないので、人数に対応できる浴室と脱衣所を作っても半分ぐらいは石材が余っていた。

あぁ、どうせならここをそのまま俺の家にしてしまうか。

10年20年と長居することもないだろうし、別に大げさな施設は不要だろう。

必要になったら追加すればいいからな。

両親も充実した夜を過ごせそうだし、その翌日に朝風呂を使いに来てもいいわけだし。

風呂に入りに来るってことは、前の晩に愉しんだってことになるので少々気不味いが……まぁ、いいだろ。

なので、ワンルームマンションのようなロフト付きの寝室にベッドまで石で作り、後はマット代わりの藁などを敷き詰めれば完成という状態にする。

ああ、マットも草を混合させて良い物が作れるかもしれないな。

そうなると、服や靴などの履物も作れるかもしれない。

ただ……これは出来たとしても商品にはできないな。

うちも含めて、各家庭でそういった制作物を作って家計の足しにしているので。

あくまでも自分の分と……両親に渡すぐらいにしておくか。

そう考えた俺は木材と草の調達へ出発した。






ズボボボボッ

「おお……」


畑から雑草が独りでに抜けていき、宙に浮いている魔石へ吸い寄せられていく光景に驚きの声を上げる畑の持ち主。

木材や草を集めようとしたところ、抜いた雑草を畑の外に放っている人がいたので除草の手伝いを申し出て、村の外へ捨てに行くと言って運び出し、"格納庫"に入れておいて自分で利用しようと考えた。

あちらとしては除草も雑草の処理も楽になるので歓迎され、今現在数軒目の畑の除草をしているところだ。


「ほー……こりゃ有り難いな。今後はずっと頼めるのか?」

「いえ、暫くしたら村を出るつもりなんで。この力を使う以上は隠しておけないでしょうし、外の人に知られれば俺を求めてこの村に人が押し寄せてくるかもしれないので……」

「なるほど。まぁ、こんだけの力だとそうなってもおかしくないなぁ」


残念そうではあるが、俺を確保するために武装勢力がやって来ることが容易に予想できたらしい。

そんな話をしながら数箇所で作業を続け、結構な量の雑草が集まったので外へ運ぶ。



再び塀を越え、村の外へ出ると雑草のゴーレムを"格納庫"へ仕舞い、次は木材の確保を始めることにする。

"すのこ"やドア、窓や小物の数を考えると結構な量が必要だろう。

ゴーレムとして成形すれば切削による木くずのロスが無いとしても……余裕を持たせて家一軒分ぐらい集めておくか。

俺はそう決めると村に近い場所から木を根ごと回収し、葉と樹皮、それ以外を分けてゴーレムとして"格納庫"に入れていく。

葉と樹皮は捨てても良かったが……何かに使えるかもしれないので、ある程度を集めたら回収を止める。

その後は木材として使える部分だけを集めていき、石のゴーレム同様の大きさになったので石の家へ戻って必要な物を作っていった。




暫くして、俺個人の家(予定)は一先ずの完成を迎えた。

"すのこ"を敷き詰めた浴室には覗き対策なども兼ねて高い位置に窓があり、開けるには壁に下がっている紐を引いてずらす引き戸にしておいた。

長く使うならそれをはめ込む溝の掃除が面倒だろうけど、使うのは俺がいる間だけだろうから問題ない。

脱衣所にも"すのこ"を敷いて、換気兼明り取り用の窓や自作のオイルランプを置く棚も作った。

仕切りのドアは排水などを気にして床に出っ張りや溝を作りたくなかったので、カーテンのような吊り下げるタイプの引き戸にしてある。

上手く作りすぎたのか、開閉でほとんど音がしないのは……俺にがあったわけではない。

浴場はこれでいいとして。

玄関はごく普通のドアであり、小さめのホテルの受付みたいなカウンターを設け、その奥が俺の私室兼寝室となっている。

ベッドには雑草の繊維を使ったマットが敷かれ、中々良い肌触りと弾力をしている。

匂いは……ちょっと草っぽい感じはあるが、気になるほどではない。

まぁ、カバーも含めて使っているのは繊維だけだしな。

ついでに作った枕もいい感じで、踵を固定できる形のサンダルもクッションが効いて歩きやすい。

村を出て、金に困ることがあったらこれを売って凌ぐか。

そんな感じで今日の目標を達成した俺は作ったばかりのベッドに寝転ぶと……手作業でやるよりは楽だがそれなりに疲れていたのか、そのまま眠りについてしまった。






暫くして、部屋の窓を叩く音で目が覚める。


ドンドンドン!

「ん……んん!?」


俺は自分が寝ていたことに気づき、そのきっかけになった音へ対応する。


ススッ

「はい?どちら様?」

「あっ、アンタここに居たの?姿が見えないからどうしたのかと思ったわ」


窓を開けると、そこに居たのは母だった。

時間は夕暮れ時に近いようで、若干明るさが収まっている。

この家の建設中、今日はどこかのお宅で内職だったらしい母は俺を見ていないので心配したようだ。


「ちょっとこの家を作るのに集中しててね。完成して横になったら寝ちゃってたみたい」

「怪我してるわけじゃなさそうだからいいけど……で、この家はなに?」

「お風呂……あー、湯浴みができる建物だよ。自分の部屋は材料が余ったついでに作っただけ」


風呂だと言って通じるかわからなかったので浴場だと言い直すと、それを聞いた母は訝しむような顔をする。


「湯浴みって……そのお湯はどうするのよ。沸かすなら大量に薪を使うことになるんじゃない?」

「あれ、言ってなかったっけ?ゴーレムの力で水をお湯にできるんだけど」

「聞いた覚えはないわ。でもそれが本当なら、それで稼ぐこともできるかもね」

「魔石を使うから、魔石を補充できて生活費にもなるだけのお代を取らないといけないけどね」


そう返した俺に、母は再び訝しむような顔で俺を見る。


「……何?」

「いや、アンタゴーレムの力に目覚めてから雰囲気変わったわね?」

「っ!」


いかん、先のことをちゃんと考えすぎたからか、11歳にしては大人びた空気を出してしまったか。

余計な心配をさせまいと思ってのことだったのだが……とりあえず誤魔化しておこう。


「ハハ、色んな知恵を授かったせいかな?」

「ふーん……」


誤魔化しきれてはいないようだが……追求を続けられて答えを出しても、それを確かめる方法はないので意味はないからな。

というわけで、この件について惚けることにした俺は、再び誤魔化すために母へ提案する。


「あ、そうだ。試しに湯浴みしてみる?」

「え?いいの?魔石を使うんでしょう?」


夕暮れ時となれば母は仕事上がりなのだろう。

それなりに汗をかいたりしているはずで、だからか、俺の提案に魔石のことを気にしながらも乗り気な様子を見せている。


「昨日来た商人さん達にちょっと物を作ってあげてね。それでいくつか魔石を貰えたんだよ」


これはもちろんリョーガさん達のことで、怪我を治したことは秘密なので添え木や杖を作ったことにしておいた。

それらを作ったのは事実であり、あちらも俺の治癒能力について話が広まるのは望んでいないのでそういう話になっている。

そんな話を聞いて、


「そうなの?じゃあ……お願いしようかしら」


と母が言ったので、俺は着替えを持ってくるように言い、再度来訪した彼女を玄関から招き入れた。





「そこの棚に服を置いて脱いだら奥にある、雨みたいにお湯が出るところがあるからそこで身体を洗って。その後にお湯が溜まってる所に浸かって楽な姿勢で休むといいよ」

「ん?アンタは入らないの?」


俺が入浴の流れを説明すると、母はそんなことを言い出した。


「え?なんで?」

「いや、魔石を使うんなら一緒に済ませたほうが節約できるんじゃない?」


ごもっともな話だ。

だが、はないと言っても身体はしてしまうかもしれないし、それに気づかれれば気不味い感じになるのは必至である。

なのでお断りしたいところではあるのだが……断るのにいい理由が見つからない。

恥ずかしさや早めの反抗期?

家の財政状況からすると、家計を越える事情にはちょっと弱い。

他に何か良い案がないかと考える俺だったが……


シュルッ、パサッ……

「ふう……ほら、早く脱ぎなさい」


と、母はサッと服を脱いで全裸になった。

客観的に見ても美女であり、スタイルのいい身体が目の前に晒されている。

そんな母に逃げる理由のない俺は脱がされ、共に入浴することとなった。



シャアアアァ……

「~♪」


鼻歌というほどのものではないが、機嫌良さそうに隣でシャワーを浴びる母。

温度を確認し、調節したお湯で頭から洗っていく彼女だが……サリーさんとリーナさんで多少慣れたとは言え、手が這う度にプルプル揺れる肌で俺はどんどん気不味くなっていく。

そう、股間がしてしまっているからだ。

前世の記憶が影響しているのかわからないが、ついつい目がそちらへ向かってしまっているし。

今は体を洗うことに集中しているからか気づかれていないようだが……まぁ、背を向けてさっさと洗い、浴槽に入ってしまおうか。

そう考えて俺も自分を洗い出し、石鹸が完成していたら使えたんだがなぁ……などと考えていると、肩に柔らかいものが乗せられ、肩越しに俺のを覗き込む母に耳元で囁かれた。


むにゅり。

「アンタ……デカくなったわね」
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