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6話

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チャプ……

「ハアァァ……」


お湯に浸かってそんな声を出しているのは……俺である。

このお湯は新しく用意した物で、汚れたお湯は排水路から川へ戻し、新たに魔石を飛ばして水を収集すると前回と同じ様に視認し難い形状にしてこの家へ運び込んだ。

この家から2、30mはあるが、この距離でも魔石を操れるなら川まで行かなくてもいいな。

そんな俺は木製の椅子に座っており、隣の椅子からサリーさんに抱き付かれ、膝の上にはリーナさんが向かい合って座っていた。



あの後、一通り体を洗うと続けてリーナさんのが始まり、そちらもサリーさんの指導の元で一通り行われて問題なく成し遂げられる。


「ンフ……」

スリスリ……


横から満足そうな顔で頬ずりしてくるサリーさん。

お手本として俺を相手に頑張っており、こちらが前世の知識を使ったからか十分いただけたようである。


「んちゅ……レロレロ……」


それに対し、正面からキスをしてきて俺の口の中で舌を蠢かせているのはリーナさんだ。

練習の途中……というよりその結果、彼女の要望でになってしまったが、こちらもいただけたらしくさっきから俺にベッタリと抱き付いている。


クイ、クイ……
チャプッ、チャプッ


覚えたてながらも母親譲りの腰の動きで再びを咥え込もうとするリーナさんだが、流石にそろそろ戻らなければならないだろう。

体質なのか、まだではあるけどな。

というわけで……俺は吸い付かれていた口を離し、リーナさんの腰も両手で止めて2人に退去の意思を告げる。


「んぱっ……あの、そろそろ戻ろうかと」

「えぇ~?もっとシようよぉ♡」

「そうは言っても……だとしても流石にそろそろ終わるはずですし」


その発言にサリーさんが口を開く。


「まぁ、そうねぇ。ギルさんが畑に戻って、外に探しに行かれたりすると騒ぎになるかもしれないわね」


ギルさんとは俺の父、ギルダッドのことだ。


「えぇ~?塀は戻しておいたし、外に出てるとは思われないんじゃない?」

「村の中で見つからなかったら外を探すしかないでしょう?がいつもより早く終わるかもしれないし、確かにそろそろお開きにしたほうがいいわ。♡」


え?次の機会があるのか?と思って彼女を見ると、


「お礼じゃ断られるみたいだけどならいいんでしょう?リーナはまだ覚えたてでまだまだ練習は必要でしょうし、私もしっかり教えられるように感覚を取り戻さないと♪」


などと、怪我から復帰したスポーツ選手のようなことを言い出した。

その言葉にリーナさんは動き、俺の頭を両手で掴んで問いかけてくる。


……また手伝ってくれる?」


うーん……今のところ恋人や好きな人はいないと言っていたし、俺にもそんな相手はいないので問題はないか。


「じゃあ、まぁ……なら」

「んっ♡」


俺の返事に彼女は再びキスをしてきて、結局俺がサリーさん宅を出たのはもう暫くしてからだった。




サリーさん宅の後始末をし、俺は少し離れた隣家の自宅へ立ち寄る。

しかし……俺は普通に入口へ向かわず、裏手のとある場所に移動してその壁に耳を当てた。


「アアッ!……モゴッ」

「おい、声が」

「ごめっ、あっ、そこっ!」

「これが最後だぞ」

「わかっ、じゃっ……全力でっ!」

「ああ、じゃあ……」

パンパンパンパンパン……!


ふむ、そろそろ終わりそうだな。

父の遅い戻りは予想した通りで、昼間から盛っておられたようだ。

まぁ、これは母の要請だと思われるが。

母は時たま性欲が爆発するようで、夜に俺がいるときは遠慮して発散しきれないからか、消化不良で積もり続けた分をこうして昼間に発散しているらしい。

このことはサリーさん達も知っていて、帰るまで父と会わなかったからこそ俺を長居させても大丈夫だと判断してなどと言い出したのだろう。

母親としては俺にこの声を聞かせたくないようだが……結局こうして聞かれているし、前世の記憶を思い出す前の俺に"性"を目覚めさせる一助になっていたようだ。

まぁ、メインはサリーさんとリーナさんみたいだったし、母親をとしては見ていなかったみたいだけどな。

それを引き継いでいるのか俺も母をでは見ておらず、こうしてお隣さんとのことがバレないことに安堵できている。

さて、父はこれが最後と言っていたので……そろそろ畑に戻るとするか。

土も戻さなきゃいけないしな。



畑に戻った俺は手に持った4つの魔石を眺めている。

そろそろ戻ってくる父にゴーレムのことを説明しなければならないのだが、魔石はどれも魔力の残りが少なくなっていた。

サリーさん達を家へ運んだのもあるが、水を集めてお湯にしたり、使用済みのそれを捨てて作り直したりしたからな。

……俺がつい出してしまった物をから収集して回収したりもしたし。

その結果、1つの指示を実行させ続けるのなら、追加でゴーレムを作って複数を稼働させられることが可能だとわかったが。

この場合はお湯の温度を維持させ続けるという指示であり、新たに物を収集することは指示に当たらないらしい。

しかし、複数を同時に操作するのは無理であり、1つを右へ、もう1つを左へと同時に動かすことはできなかった。

リアルタイムに操作できるのは1つだけだというわけだな。

この件でわかったのがもう1つ。

ゴーレムを構成する材料に液体を使うと収集は土よりも魔力を消費しないのだが、形状の維持となると土よりも多くの魔力を消費してしまうのだ。

あくまでも体感だが……おそらく、固体に近いほど収集に魔力を消費するが、形状の維持には固体に近いほうが魔力の消費が抑えられるのではないだろうか。

だとすると、他にも色んな素材でゴーレムを作れそうだし、固体ならば形状を変えた時点で魔石から解放してもそのままだろうから……色んな細工物を作って稼いだりできるかもな。

この辺りは要検証だ。



そんなことを考えていると……父が走って戻ってきた。

髪が濡れているのは汗や臭いを川で流したからだろう。


「ハァ、ハァ……スマン。ちょっと時間が掛かってな」

「うん、大丈夫」


危ないことも発生したがそれ自体は父が原因というわけでもないし、俺が"ギフト"に目覚めたことや、この歳で美人母娘相手にできたことを考えれば……総合的には良かったからな。

そう思っていた俺の返事に頷くと、父は周囲を見回した。


「……ん?サリーとリーナはどこだ?」

「ああ、今日は帰ってもらったよ」

「帰った?怪我でもしたのか?それとも体調を崩したか?」

「ううん。畑を作る作業が楽になる方法が見つかって、それを使って作業を進めるから2人には帰って休んでてもらうことにしたんだ」


2人がいない理由を聞いた父は首を傾ける。


「作業が楽になる?それが本当ならまぁ、きつい作業だから帰ってもらっても構わんが……どういうことなんだ?」


そう聞いてきた父に、俺は掘り出された切り株を指で差す。

綺麗に掘り出され、根の1本1本まで土が取り除かれている様は異様に見えたようで……父は目を鋭くさせて俺を見る。


「……何があった?」





「ってわけで、川で拾った魔石でこんな事ができたんだ」


俺はゴーレムを作る力に目覚めたことを、それを使って実際に畑の範囲を広げてみせながら説明した。

魔力の残量的に複数の魔石を使う必要があり、そのことから魔物との遭遇を疑われるかもしれないので……魔石を拾ったのは今日が初めてではないと言って誤魔化しておく。

魔石を移動させながら掃除機のように土を収集し、それに含まれる栄養を均一にするため解しながら混ぜ込み、残った石や雑草などもそれぞれ別に収集してから土を戻す。

魔石の魔力が減っていたのもあり、長時間続けることはできなかったが……その範囲は元の3割ほど広がった。

これもまた体感ではあるが、掛かった時間は10分にも満たなかったんじゃないかな?

その光景に、ゴーレムの存在自体は知っていた父が非常に驚く。

遭遇したことはないそうだが強力な攻撃手段がないと倒すのが困難な魔物らしく、それがなければ基本的には逃げる相手という扱いらしい。

足は遅いというのが共通認識みたいだが、おそらく魔力を使い切ってただの物体になってしまうのを避けるため、魔力を節約する方法として移動に割く魔力を最低限にしているのではないだろうか。


「まさか、こんなことができるとはな。ゴーレムを作って操れるだけでもかなりの力だ。その上こんな方法で開墾作業までできるとなると……このことが広く知られれば、色んな所からお呼びがかかるかもしれんな」

「かもね」


予想通りの懸念に俺が軽く言葉を返すと、父は難しい顔で聞いてくる。


「……わかってるのか?どこかの貴族にでも雇われれば村から出ていくことになるぞ?」

「わかってるよ。父さん達はサリーさん達のこともあるし、そうなったら1人で行くつもりだし」

「……言っておくが、彼女達のことをお前より重んじるつもりはないぞ」


その言葉に、彼女達が襲われた現場に父が来なかったことを幸運だったと思う。

俺は助かっただろうが、人質になっていたリーナさんは殺されていた可能性が高いし、サリーさんだって捕らえられていて危なく、無事だったとしてもリーナさんのことで父とどんな目で接するようになっていたか。


「それで十分だよ。まぁ、この力に目覚めたときにちょっとした知恵も授かったから、何かがあっても自分でなんとかするつもりだけどね」


そう返した俺を父はじっと見ると……小さくため息をついた。


「……ハァ、これが親離れか?俺の親もこういう気持ちだったのかもしれんな」

「それはわからないけど……まぁ、あくまでもそうなったらって話だよ。でも自分だけの家は作ろうかと思ってるけど」

「家?何故だ?」

「ゴーレムのことは何人かに見られてるし、ゴランにも話したから村長にも伝わるはず。そうなると仕事を頼みに来る人が沢山来るかもしれないからね」


本当は両親に充実したを過ごしていただき、今日のような突発的に父が動けなくなってしまう事態を防ぐためなのだが……流石に面と向かってあなた達の性生活のためだとは言いづらい。

なので、依頼の対応をさせるのは申し訳ないからだという形で俺はそう返したのだが……


「村の端とはいえ誰かの目には付くか。村長に伝わってるなら確かに仕事を頼みに来る者はいるだろうが……それはうちでも対応できるだろう?俺やお前が外に出ていても母さんが対応すればいい」

「う」


それはそうと言わざるを得ない、父のごもっともな意見にそんな声が漏れる。

家を出るというのもさっき思いついただけだからなぁ……あ、そうだ。

ここで俺は1つ閃く。

その家を事務所兼用とし、そこでリーナさんを受付として雇うという案だ。

彼女の家の財政状況は父も知っているはずだし、うちとしても両家に利益が行くのは望むところだろう。

あくまでも仕事が来ればの話だが、来なかったとしても木や石で細工物を作って売る仕事をすればいい。

前世ではありふれた物でも、こちらでは生産し難い物だったりするからな。

リーナさんにはその管理をしてもらうということにすればいい。

そうなると住居兼事務所兼倉庫か?

だとすると建物はちょっと大きめに作らなければならないが……そんなに石はないから木造になるな。

木の伐採は畑の開墾を理由としてやればいいし、駄目だと言われたら森の奥で確保してくればいい。

その加工手段から、成型肉のような建材になるかもしれないので耐久性が不安だが……まぁ、可能な限り密度は上げるし、駄目そうなら倉庫と分ければ一軒当たりの強度は十分確保できるよな?

というわけで、リーナさんの雇用や建材の確保まで含めて父に説明する。

やはりサリーさん母娘の財政状況は気がかりであるようで、それが少しでも解消されるということで俺の話を受け入れた。


「うーん……そこまで考えているのならそれでもいいが、お前の力を使うには魔石が必要なんだろう?村にあるぶんはそう多くないから、商人から買うか外へ魔物を狩りに行かないといけないな」

「ああ、それは大丈夫。足りなきゃ自分で魔物を狩ってくるつもりだから」

「自分で?ああ、ゴーレムを使えばやれるのか。だが不意打ちなどされたら……」

「それも大丈夫だよ。この"ギフト"って魔石の位置がわかるんだ。だからそれを持ってる魔物の位置もわかるし、その距離も結構遠くまでわかるから不意打ちを受けることはないと思うよ」


その説明に、父は若干呆れたような顔をする。


「ハァ、そんな力まであるのか……だとしても俺は同行するからな。襲ってくるのが魔物だけとは限らんし、1人で行くのは許さんぞ」

「あぁ、なるほど。まぁ、別にいいけど……」


父の心配にややむず痒くなり、俺はそんな返事をしてこの後の予定を考えることにした。
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