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しおりを挟む「んん・・・・・・っあ、」
優しく包み込むような日差しと共に穏やかな木々の香りを運ぶ風が窓から入り、薄いレースのカーテンを揺らす。
そんな心地よい午後の生徒会室で、しばらく気を失っていた副生徒会長のレイン=ブロックは目を覚ました。
突っ伏していた自身の状況を短時間で把握し、机の上に積んであった書類の山が消えていることに気づく。
生徒会長――ラッシュの机に目を走らせると、そこには自分が目を通すはずだった書類が処理済みを表す場所に置かれていた。
下敷きにしていた書類に涎を零していなかったことに一瞬ほっとし、今日が普通の生徒会の日でなかったことにも安堵する。
今日は生徒会長と副会長がいれば片付く仕事のみだったため、他の生徒会委員は来ていないのだ。
それにしても、自分は一体何故寝てしまっていたのだろうか・・・・・・。と疑問に思いながらも優雅に見えるが次々と作業を終えるラッシュの様子を盗み見る。
ふと自分の肩を見ると、彼のジャケットが掛けられていた。
こういうことをするから、ムカつくんだ。
俺に気がないくせに、俺なんか好きになるはずがないくせに、こんなに優しくしてくれる。
望みなんかないのに・・・・・・。
あれ、というか、何か忘れていることがあるような・・・・・・
「お、起きたか。おはよ」
皺にならないよう留意して制服を持ち、丁寧に畳んでいるとラッシュに温かな声をかけられる。
いつか、ベッドの上でも『おはよ』って聞けないかな・・・・・・
と、叶うことのない想いがふと頭を横切った。
********
「ふぅ~・・・・・・今日はこの辺にしとくか~・・・・・・」
「明日中には終わりそうだな」
眩しかった太陽も傾き、生徒会室の中を夕日色に染めている。レインとラッシュは部屋のカーレンを閉めて鞄を持ち、生徒会室を後にしようとしていた。
「兄上っ!」
『それにしても疲れたな』と言いながら扉を開けると、突然ガタイの良い男が身を乗り出してきた。
「兄上、一緒に帰りましょう?」
首をちょこんと傾ける仕草をしているが、高身長でしかもガタイの良い男がしても可愛くはない・・・・・・と思う。
が、
「お~スロウ~~!!まさか待っていてくれてたのか?寒くなかったか?大丈夫か?」
「大丈夫です。俺も今学校終わってここに来ましたから。でも、扉を開けようとした瞬間に兄上が開けてくれるなんて・・・・・・やはり運命みたいですね!!」
「そうだな~~あ゛ー・・・・・・かわい゛ぃ゛ー・・・・・・」
と、ラッシュはこのデカい男――彼の弟、スロウ=キャオディージュ――に心底でろでろなのだ。
スロウは顔も悪く身体も大きいことから皆から恐れられる。だがこうやって、大好きな兄に頭を撫でられて顔を綻ばせている様子を見ると、なんだか可愛いとも思えてきてしまうのだから、不思議なものだ。
もしかしたらラッシュは、こういう風に世界を見ているのかもしれない。
と、少しだけ思ったレインなのであった。
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