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59.【迷える子羊なお客様】6~幽霊の正体~
しおりを挟む「た・・・たしゅけ・・・・・・て」
目の前の幽霊(?)が・・・・・・可愛すぎる件について。一体どうすればよいのでしょう。――愛でれば良いっ!って、煩いわ!!そんなおふざけは置いておいて・・・状況説明に移ろう。
店長に頼まれ、近所迷惑になりかねないモモとシノを落ち着かせるべく外に出た俺であったが、角を曲がろうとしたところ向こうから来た人とぶつかってしまった。デカい俺にぶつかった反動で尻餅をついてしまったらしい相手を見ると、そこには・・・髪の毛もっふもふでくりっくりなお目々の下にうっすらと隈を作っている少年がいたのだった。
えっ、何その髪の毛羊さんみたいでかわいい・・・それに何そのこぼれ落ちそうなほどのまん丸なお目々は・・・・・・しかも目尻がつんって・・・つんって!!
チャコールグレイにパープルの色気が混じったもっふもふヘアーに隠れ気味のぐりっとした目は、スルギとは毛色の異なる猫のようだった。
この子、かわいいな・・・って、いやいや、なんかこの子とぶつかったときチリンて言わなかった?え、鈴の音?ってことは、この子が噂の幽霊!?
確かに顔は青白く、目の下にも隈が見え一見幽霊だと言われても納得できる。どどどうしよう・・・・・・た、魂とか、奪われたりするっっ!?
「うぉおらぁあああ!!どこ行ったぁああああ!!!」
「逃がすかぁああああああ!!!」
「ヒッ!」
「っ!」
ふとシノの言っていたことを思い出し警戒してしまったが、かなり近くで聞こえた二人の暴走ボイスに目の前の幽霊(?)くんがビクリと身体を跳ねさせた。肩が小刻みに震えているのがかわいそうになるほどわかる。
今にも大きな目から涙を零しそうにしている幽霊くんが、目線は落としたままだが必死に手を伸ばして俺の服の裾を掴んだ。その仕草のいじらしさに、一瞬胸がぎゅうと締め付けられる。俺は咄嗟にその子の手を掴むと、
「っ、行こう」
その場から走り出した。
「はぁ、はぁ・・・・・・ここら辺までくれば、大丈夫、かな・・・・・・」
壁を背に、来た道を注意深く見渡しながら、追っ手(モモとシノ)が来ないことを確認する。一先ず大丈夫だと判断し、身体を壁に預けた。
「う、ぁ・・・ごっごめんなさいっ!僕なんかがぶつかってしまって・・・怪我しませんでしたかっ?本当にごめんなさい!しかも服とか手とか、触っちゃってごめんなさい!!」
「え、いや・・・・・・」
「ごめんなさいごめんなさい!僕なんかがっ、き、気持ち悪いですよね。も、もう行きますっ」
無意識の内に手を掴んでいたことについて自分から謝ろうとしていたところに、怒濤の謝罪ラッシュを浴びせられ、一瞬ポカンとしてしまった。思いっきり振り切られた手にショックを受ける暇もなく、目の前のお化けちゃん(?)は真っ青な顔をして謝り倒している。しかも先ほどからずっと下を向いたままで、一度も俺の顔を見てくれていない。
頭が取れちゃうんじゃないかってくらい頭を下げていて、無理矢理止めてもそれはそれで首を痛めそうで怖かった。
「本当にすいませんでしたっ――っ!?」
「ごっ、ごめん。一旦・・・・・・落ち着こう?」
謝り倒し、最後にまた謝罪をして去って行こうとする彼の腕を、またもや勝手に掴んで引き留める。振り返った彼の顔は意外さと怯えを称えていたが、やはり目線は下のままであった。
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