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34.三人でお出かけ!編2~ユキちゃんのご両親にご挨拶~
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思わず、声を零してしまう。それほどの光景が、今俺の目の前には広がっていた。
一面、黄金色に染まっている。黄金、黄金、黄金だ。まるで金貨の山に足を踏み入れたのではないかと錯覚してしまうほどに。
今俺たち三人が馬車に揺られながら窓から見ている光景、それはこの世界での田んぼのようなもの――“米畑”であった。それは俺が勝手に心の中だけで呼んでいる名前であり、実際はこの世界の人たちからは“雑草畑”と呼ばれているものだ。
目の前で収穫されるのを待っている光り輝かんばかりの植物たちは、間違いなく前の世界での米――に近いものである。皮を剥いて水を入れた鍋で炊くと、完全にあの“米”の食感を味わうことができる。めちゃくちゃ美味しい。俺の大好物。
なのになぜ“雑草”などと不名誉な呼ばれ方をしているのかというと、それはこの植物は雑草の如く、種を蒔かずともどこでも、いつでも生えてきて他の植物の生長を阻害する存在であるからなのだ。皮を剥いたら食べられるのに、小麦のような作物が主食とされるこの世界では底辺並みの扱いをされている。
びっくりだよね・・・、米が雑草だなんて。俺にしたら最高だけど。
何やら生命力がすっごく強いらしく、根っこごと引き抜いても何度も何度も生えてきて農家泣かせの植物だと言われてるらしい。
では何故、刈り取ったらまたすぐに伸び始める黄金の植物がここら一帯を覆っているのか。それは“不器量な人たち”が、野菜や果物など商品作物を生産している農家たちが作る組合のようなものから仲間外れにされており、彼らは家畜の餌となる“雑草穀物”しか生産するのを許されていないからなのだとか。
うん、心狭いよね。ってか、もう何て言ったら良いのか・・・・・・俺の中の“顔が良い(らしい)”人たちの印象がどんどん悪くなっていく。まぁそれも偏見なんだけども。
ということで、ここら一帯、所謂顔の良くない人たちが集まって暮らす一帯の畑では、全て家畜用の米を育てているのである。
だが俺が日本食を食べたいという勝手な我儘によって料理に使ったことをきっかけに、米の評判がじわじわと高まってきているらしい。嬉しい限りである。マジで俺、家畜と争って食べるくらい米好きだからな・・・・・・(それをやったらコンとかにゴミを見るような目で見られそう)
「到着しました」
なんてことを思っていると、丁寧な減速の後馬車が静かに止まった。前で馬を走らせていたイケメンさんが振り返り、少し尖った犬歯を見せて爽やかに笑う。
うっ、太陽の光も相まって、眩しいぜ。因みに、リリアムのこの辺りでは皆がイケメンなので、以前俺が迷走していた街とは違ってどんなサービスも気持ちよく受けることができるのだ。少し日に焼けた生足を惜しげもなく出して、元気溌剌といった風の行者さんに、鼻血が出そうなほどの魅力を感じる。そんな静かなる変態が青年にお礼を言おうと立ち上がる。
「ありがとうございます。帰りも、よろしくお願いします」
「ありがとうございます」
俺が口を開くよりも先にユキちゃんが行者さんにお礼を言ってくれたので、俺は反復して感謝を伝えた。ユキちゃん、本当に礼儀正しいわ。
馬車から降りて振り返ると、目の前には大木で作られた門が鎮座していた。まままさか、ここがユキちゃんのお家――?という思いを込めてユキちゃんを見やると、少し照れくさそうに手でようこそ、という仕草をとった。
「ここが僕の実家です」
でっっか。なんかもう、でっかすぎて、俺のアイデンティティである糸目がまん丸に開かれそうだわ(比喩ね)。門は見上げるほど高いし、開かれたそこから見える敷地内は、目を懲らしても終わりが見えないほど広いことがわかる。
イメージ的には、歴史の資料集とかに載ってた弥生時代の村の復元・・・・・・みたいな感じ?多分、こんな感じっぽかった気がする。一つの村くらい、門の内側が広いのだ。
行者さんがユキちゃんに案内され、馬小屋へと向かっていく。ここまで連れてきてくれた馬を休憩させるのだ。彼らの後に付いて門の中へと足を踏み入れると、一気に緊張が襲ってきた。
ユキちゃんのご両親に会うのだ。なんて言えば良いのだろうか。まずはユキちゃんにお世話になっていますとかだろうか・・・まぁ実際毎日お世話になっているわけだし。そもそもユキちゃんのご両親は、ユキちゃんの職業を把握しているのか?
などと色々考える。手の平に汗が滲んできた。
一方コンは、物珍しげにキョロキョロと顔を動かしている。店での少しやさぐれているような雰囲気はなく、ただ 初めての場所に興味津々といった様子だ。
馬小屋には可愛らしい目をした馬たちが歓迎してくれ、とても心が癒やされた。他の小屋にも動物がいるようで、鳴き声や気配がうっすらと感じられる。小屋の中は綺麗で、きっと動物たちは丁寧に世話をされているのだと思っ た。
行者さんはしばらくそこで馬の世話をするようで、俺たちはもう一度お礼を言ってユキちゃんに案内され本邸まで歩いて行った。
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