25 / 66
25.拾い子6~まずはお風呂に!?~
しおりを挟む「なぁ、これって一人いくつ貰えんのー?」
少年の名が決まり一段落付いたと思ったとき、カシアがキッチンから顔を出しそう尋ねてきた。その下からはモモも顔を出していて、わくわくと期待に満ちた表情でこちらを覗いている。
店にある分買ってきたことから、正直いくつ買ったのか把握していなかった。一体何個あるんだろう。そのことを正直に言うと、二人が嬉々として『じゃあ数える!』とキッチンに消えていったので、二人に任せることにした。二人を見送り、俺はそういえば、と巾着から小さめの紙袋を取り出す。
「はい、店長。店長が好きそうなやつ見つけたから、買ってみました」
そう言って店長に渡したのは、街で見かけたあの毒々しい色のカップケーキのようなお菓子。紙袋の中を覗いた店長はぱぁっと顔を輝かせると、緩んだ顔で嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうナナミくん。とっても美味しそうだよ」
そう言ってふにゃりと笑う店長の顔は、とても可愛らしい。
「えっ何々~。店長何もらったの~って、ゲッ!色ヤバっ!!店長それ食べんの!?」
「さっすが店長、変な物好き!俺そんなの食べられないよぉ」
「アハハハ!色!色がっっ間緑色とかっ!!」
皆に覗かれ、散々笑い者にされる店長。にこやかだった顔に影が射した気がした。
「今笑った子たち・・・・・・、君たちは今日の掃除係決定」
「「「ゲッ!」」」
ある意味にこにこ顔になった店長に、今日の閉店後の掃除当番を言いつけられたお調子者三人組は、ついさっきまで浮かべていた笑顔を取り消し情けない顔になった。
「やったぁ、三人とも、サンキュー!」
「思ってても黙ってれば良いのにねー」
一方で、元々掃除当番であったキャストたちが彼らに感謝を述べ『ラッキー』と笑い合う。
「「「店長ごめんなさい・・・・・・」」」
「ふふっ、ダーメ♡」
三人は謝ったが、天使の笑顔の店長に優しく拒否をされた。ガックリと肩を落としてふらふらとソファに腰を下ろす。実は俺も店長にお土産を渡すとき、『ハイこれ店長に。店長、変な物好きだから』とか言おうとしていたが、言わなくて本当によかったと心の底から思った。
「折角ナナミくんがお菓子買ってきてくれたから、仕事の前にお茶にしようか」
店長の一言に、キャストたちが一気に騒ぎ出す。開店まではまだ時間があるため、直前準備までゆっくりできそうだ。
「じゃあ俺、お茶の準備してきますね」
「僕も手伝う~!シノ兄ちゃんも、いっしょにやろ?」
「みんな、お茶する前に部屋の準備してくること。それと、お茶し終わったら速やかに開店準備に取り掛かること。いいね?」
「「「はーい」」」
カシアとモモ、そしてシノがモモに引っ張られてカウンター裏へと消えていく。浮かれている空気感の中で店長が釘を刺し、皆が元気よく返事をしてそれぞれの部屋へと戻っていった。
「さて、コンくんのことだけど・・・・・・」
「は、はい・・・・・・」
皆が軽やかな足で上へと上がっていくのを見て、店長が俺に身体を向け直す。お土産の一件で忘れかけそうになっていた話題に再び触れられ、背筋が伸びた。
「まずはお風呂に入れてきてくれる?」
「・・・・・・はい?」
「あ、ナナミくんもついでに一緒に入っちゃえばいいや。よろしくね。話は後でゆ~っくり聞かせてもらうからさ」
有無を言わさないという風にそう言い放つと、店長は大事そうに抱える紙袋の中を覗いてはにこりと微笑んだ。
確かにコンは全身が汚れており、入浴が必要だろう。しかし、一緒に入っても大丈夫だろうか・・・・・・?
「ということだから、まずお風呂行こっか」
そう言って手を差し伸べると、黙ったまま一つだけ頷き、手を重ねてきた。傷だらけの小さな手。先ほど垣間見た傷だらけの身体。泥や血がこびりついた顔や肢体に同じく泥で汚れた髪。
その全てを、綺麗さっぱり落としてあげたい。そう思いながら、俺はコンを連れて浴室へと向かっていった。
16
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが
咲
BL
俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。
ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。
「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」
モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?
重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。
※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。
※第三者×兄(弟)描写があります。
※ヤンデレの闇属性でビッチです。
※兄の方が優位です。
※男性向けの表現を含みます。
※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。
攻略対象者に転生したので全力で悪役を口説いていこうと思います
りりぃ
BL
俺、百都 涼音は某歌舞伎町の人気№1ホストそして、、、隠れ腐男子である。
仕事から帰る途中で刺されてわりと呆気なく26年間の生涯に幕を閉じた、、、、、、、、、はずだったが!
転生して自分が最もやりこんでいたBLゲームの世界に転生することとなったw
まあ転生したのは仕方ない!!仕方ないから俺の最推し 雅きゅん(悪役)を口説こうではないか((
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
タイトルどうりの内容になってます、、、
完全不定期更新でございます。暇つぶしに書き始めたものなので、いろいろゆるゆるです、、、
作者はリバが大好物です。基本的に主人公攻めですが、後々ifなどで出すかも知れません、、、
コメント下さると更新頑張ります。誤字脱字の報告でもいいので、、、
R18は保険です、、、
宜しくお願い致します、、、
大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?
あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。
……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。
学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。
……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!?
由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!?
・・・・・
乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。
始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。
婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?
ぽんちゃん
BL
日本から異世界に落っこちた流星。
その時に助けてくれた美丈夫に、三年間片思いをしていた。
学園の卒業を目前に控え、商会を営む両親に頼み込み、婚活パーティーを開いてもらうことを決意した。
二十八でも独身のシュヴァリエ様に会うためだ。
お話出来るだけでも満足だと思っていたのに、カップル希望に流星の名前を書いてくれていて……!?
公爵家の嫡男であるシュヴァリエ様との身分差に悩む流星。
一方、シュヴァリエは、生涯独り身だと幼い頃より結婚は諦めていた。
大商会の美人で有名な息子であり、密かな想い人からのアプローチに、戸惑いの連続。
公爵夫人の座が欲しくて擦り寄って来ていると思っていたが、会話が噛み合わない。
天然なのだと思っていたが、なにかがおかしいと気付く。
容姿にコンプレックスを持つ人々が、異世界人に愛される物語。
女性は三割に満たない世界。
同性婚が当たり前。
美人な異世界人は妊娠できます。
ご都合主義。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる