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14.フェリスの話3
しおりを挟む「お待たせ致しました。ナナミです」
『 “ナナ”と呼んでください』
にこ、と薄い目がさらに細められて自分に向けられる。王子様のようなきらきらとした彼に笑顔を向けられ、胸が高鳴った音を聞いた。
「えと、ナナ、さんは、どうしてこのような店で、その、働いているんですか?」
聞いた後で、ハッとする。何てことを聞いてしまったのだ。風俗店で働く理由は皆、様々である。家族に売られた者や、借金を背負った者、親への仕送りを少しでも多くするために働く者や、ただ単純に、好きで働く者もいる。
だから簡単に聞いてはいけないと思ったのだ。現に自分もあまりその様なことを聞かれたくないし、聞かれたら困ってしまう。気を悪くさせたのではないかと思い、背の高い彼の顔を窺った。しかし彼の表情には負の感情はなく、優しさが滲んだままだった。
「俺、人と話すのが、苦手だったんです。この店で働かせてもらうことになったきっかけは店長に拾われたからなんですが、働いてみたらダメなところばっかりで、ミスも連発するし。でも、ここに来られるお客様達と接するうちに、その人達の優しさとか温かさに励まされて。元気をいただいたんです。それから、お客様達とこうやってお話するのが楽しくて・・・・・・。だから、ですかね?」
最後は自信なさげになり首を傾ける。話していて照れくさくなったのか、人差し指で頬を掻く姿がなんとも初々しく、可愛らしく目に映った。
「突然こんなことお聞きして、すみません。ナナさん、その、とっても格好いいから・・・・・・」
「いや、そんな!!」
フェリスの正直な本音に否定の言葉を返し、やや顔を逸らしてしまったナナミ。顔は真っ赤で、耳まで赤くなっており照れていることがわかる。
ぞくんっ、
そのナナミの様子を見て、フェリスはおや?という感覚を抱いた。真っ赤になって褒められたことを恥ずかしそうにしている姿を見て、腹部の少し上辺りが、ズクン、と疼いたのだ。同時に胸にも興奮のような感情がわいた。
「ナナさんって、本当に格好いい。それに、美人さんですよね」
「そ、んな、褒めないでください!フェリスさんだって――」
さらに身体を近づけ褒め続けると、ナナミがまたまた逃げるように距離を取る。顔を覗き込もうと近づけると、それを避けるようにして顔を逸らし、仕舞いには手で覆ってしまった。
『かわ、いい・・・・・・』
心がずくずくと、感じているのがわかった。これだ。これなのだ。自分が求めていたのはきっと。
そのとき、フェリスは悟った。
「ナナさんって、いじめがいあるかも。・・・・・・っふふ、かわいっ」
外耳に指で触れるとびくっと身体を震わせるナナミ。その様子が弱い小動物のようで、ぞくぞくくる。
自分は、Sなのだ。
「ナナミさん・・・・・・いい?挿入れるよ・・・・・・?」
「う、うん・・・・・・」
フェリスは横たわるナナミに馬乗りになり、すでにいじめながら昂ぶらせたペニスの上に腰を下ろしていった。にゅぷにゅぷと、久しぶりの感覚が襲う。しかしナナミの剛直は今まで経験してきた中で一番太く、そして長く、全て挿入れるのにかなりの時間が掛かった。
「ふぅー・・・・・・」
全て収めると結構な疲労感で頭がくらくらする。目下では『ふぅ、ふぅ』とナナミが発情した獣みたいになっていて、それがまた興奮を呼び、触ってもいないフェリスのペニスからは先走りが流れ出した。
「じゃあ、動くからね」
そう言って、ゆっくりと腰を浮かせ、再び腰を下ろすを繰り返す。ゆっくり、ゆっくりと腰を上下させる。
その時間を掛けた動きが焦れったいのか、ナナミが身体を動かそうとしたが、浮いた胸を手で押し返し、制止させる。
「ナナ、動いちゃだめ。我慢だよ」
小さい子に言い聞かせるような言い方で宥めると、息を荒くしながらも浮かした肩を下げた。目は『早く達したい』という欲望に潤んでいて、それが可愛くてしょうがない。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
「んっ、んぅ、はぁっ、はぁっ・・・・・・」
フェリスは腰の上下運動を早め、自分のイイ所に集中させた。前立腺をごりごりと刺激され、めちゃくちゃ気持ちが良い。ナナミの息も荒く、ナカにあるペニスもぐっと膨張し、限界が近いことがわかる。
でも、
「はい、がーまん♡」
「っ!?ふぇ、ふぇりすさんっ!!」
「イきそうだったでしょ?もーちょっとがんばろうね。もーちょっとがんばったら、もっと気持ちいいから」
絶望感に歪んだ整った顔。だが『もっと気持ちよくなる』というフェリスの言葉に期待と欲望に濡れた瞳を見て、フェリス自身達しそうになりぶるぶると震える。最上の快感に、フェリスは初めて酔いしれた。
その夜、ナナミの私室からは苦しそうな喘ぎ声、そして後に快感に震えた声が響き渡ったのであった。
――フェリスの話
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