異世界ホストNo.1

狼蝶

文字の大きさ
上 下
5 / 66

5.商売敵からのスパイ、スルギの巻

しおりを挟む


 突然だが、俺の名前はスルギだ。夜の店、『carrot & stick』で働く人気No.2のキャストである。No.1ではないが、すぐになるつもりでいる。クソっ、No.1の奴め・・・・・・。裏では腹黒な癖して客の前では子猫のような顔をしやがる。そんな顔の皮が厚い奴に惚れ込む客も客だ。俺がすぐに売上を抜いて、店の頂点になってやる。
 そう、俺は人の上に立っていないと気が済まないタイプなのだ。
 毎夜毎夜やってくる変態どもに向かって鞭を振りかざし、着々とNo.1との距離を縮めていたとき、すぐ近くにある商売敵の店、『desire』に大型新人がやってきたという話を聞いた。商売敵と言っても部類が異なるため競合相手にはならないのだが、そこへ行ってみたという客がメロメロになって話してきたものだから、非常に面白くない心境になった。だからその日は、いつもよりも力増し増しで鞭を振り下ろした。その翌日頃から、店の中でもその新人の話を聞くようになった。
 それからしばらく立っても、彼の、いや『desire』の噂は絶えなかった。なんでもその新人は、ここいらで見ることのできないほどの美男子なのだとか。それだけでも信じられない話だったが、それ以上に、そいつ(ナナミとかいうらしい)の客や仲間に対する態度がそれはもう優しく、見ているだけで拝みたくなるほどなのだとか。
 信じられるかそんなこと。俺は即座に否定した。見目の良い=心が汚い奴なのだ。絶対にそうだ。客がどんなに醜い奴でも、希望通りの接客をしてくれるなど、そんなことあるはずない。
 だったら、俺がそいつを指名したら・・・・・・?
 俺は紫のメッシュの入った黒髪で、目が大きく猫のようだとよく言われる。完全な不細工顔だ。身長はそんなに高くなく、それがコンプレックスでいつも底上げのブーツを履いている。店の中でトップクラスに入るくらい見目が悪く、それ以外の要素もパッとしない俺にも、他の客と同じように接することができるのか、興味が沸いた。嫌な好奇心だ。自分を傷つける好奇心。
 だが、そんなことをする必要はないかもしれない。わざわざ大枚をはたいて自分で検証しなくても、共に店で働くキャストたちにナナミという奴のことを聞けば、意外にも簡単に裏の顔が知れるのではないかと思ったのだ。 
『そうしたら、奴の悪い噂を広めてやる!』
 そして『desire』の評判ごと落としてやるのだ!同じ業界の人間として、周りからちやほやされているナナミを許せなかった。
『そんな、外面だけでやっていける職業じゃねーんだよ!俺がその化けの皮、剥いでやるぜ!!』
 そう思い、スルギは鞭の持ち手を強く握りしめた。


 注:『carrot & stick』はSMの店です


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

私の事は気にしないで下さい

赤嶺
BL
2年生で副会長を勤めている清水咲夜。 いつもは敬語でしっかりものの副会長だが…本当は… ある1人の転校生が来るまでは、あまり問題も起 少なく平和な日々だった 咲夜はその平和な日々が好きだったが 転校生のせいで毎日五月蝿くなり問題の数が増えてしまい… 固定CPを作る予定は考えておりません。 R18になってしまうかはまだ決まっておりません。もし、R18やR15になってしまう場合は※を付けますのでご注意ください。 過激表現はまだありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。 初投稿作品になります。誤字脱字の報告、感想やアドバイスお待ちしております。毎日投稿は難しいかもしれませんがもし良ければ気長にお待ちくださったら幸いです。

ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)

三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。 各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。 第?章は前知識不要。 基本的にエロエロ。 本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。 一旦中断!詳細は近況を!

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

処理中です...