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一章
二日目/洗浄室を使ってみよう
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おはよう。
今日は8月31日の土曜日。
夏休みの終わり。
いや、今日は土曜日だから明日も夏休みかな。
今年の学生たちは、8月32日の日曜日を楽しむのだろう。
たとえ異界に呑み込まれても、無事に戻ってきて欲しい。
時刻は午前9時32分。
普段は目覚まし時計を使うことがないくらいには寝起きに自信があるんだが、今日は明らかに寝過ぎた。
……昨日は波乱万丈だったからな。
昨日の昼まではあの世界に飛び込んですらいなかったなんて、今でも信じられない。
俺との再会も、テレポバグも、あの死の森での逃避行も。
彼女との再会も、マキノさんとの出逢いも。
たった数時間足らずの間の出来事だったなんて。
すべてが夢のようだ。
だけど今の俺は、そんな泡沫の夢の続きを見ることができる。
もう一つの世界に旅立つことができる。
フルダイブシステム・ニューロノーツ。
ワンダリング・ワンダラーズ。
もう一人の俺。
ニューロノーツを横目で見ていると、不意に感慨がこみ上げてくる。
(すごい時代になったもんだ――)
それぞれのゲームの中に存在する、無数の「もう一つのリアル」。
どこぞの誰かが初代『Wandering Wonderer』に寄せたコメントではないけれど。
きっとこの世界に発売されるゲームの数だけ、紡がれた世界がある。
昔は「所詮ゲームの世界」と一笑に付すことができたのかもしれないけれど。
ここまで真に迫ってしまえば、どちらが真であるかなんて人によるのではないかと思ってしまう。
ジィ―― ジィ――――――
……ああ、蝉の声がうるさい。
まだ午前だというのに、どこか遠くの空の下から。
そろそろ君たちの活動期も終わりだろう。
夏はまだ、終わりそうにないけれど。
さて、まずは軽くシャワーでも浴びて、本日の活動を開始しよう。
どこかの誰かさんが惰眠を貪ったせいで、そんなに時間に余裕があるわけではないぞ、っと。
*────
さて、シャワーを浴び、しっかりブランチも取った。
カノンとの待ち合わせの時刻まで、あと一時間くらいある。
今のうちに各種情報をチェックしておこう。
現在俺が気になっていることは幾つかある。
まず第一に、俺がテレポバグを起こしてしまったことで、公式になんらかのレスポンスが生じているか、ということ。
これについては公式ページにも広報にも、緊急メンテナンスやら修正パッチやらバグフィックス云々のお知らせが出ていないため、ひとまず問題ないとみていいだろう。
これでなにかしらの対応が発表されていたら、バグの報連相をサボっている身としては胃がキリキリしていたところだ。
素直に助かった。
続いて、俺の『犬2』のアカウント宛てになんらかのメッセージが届いているか、ということ。
具体的に言えば、公式から「見てるぞ(はぁと)」なんていうファンメールが届いていないかということだ。
俺はひたすらバグがバレないことを願っているので、当然届いていて欲しくはない。
……やっぱりいまの俺って、いたずらがバレそうになってる子どもそのものだよなぁ。
さいわいなことに、こちらの心配についても杞憂だった。
あとは『犬2』プレイヤーの全体の機運なども気になるが――ゲーム発売直後から掲示板やら情報サイトに入り浸るのはあんまり好きじゃないんだよな。
『犬2』での新しい仕様や、実績の解放条件などを目にしてしまったら興醒めだ。
ネタバレ食らうのが嫌ならそういう場所を見なければいいだけだ。
かつての古巣である検証スレとか、またこちらでも立ってるのかな、とも思うけれど。
そうだな……少なくとも1週間、できれば2週間は我慢しよう。
各着陸地点ごとのコミュニティなんてのも既にあるみたいだが……そちらもあまり見ないようにしたい。
誰がセドナに来てるかとか、知らない方が楽しめることもあるだろうしな。
そう思いつつも、各コミュニティの様子をちらりと目で追ってしまう。
……うわ、なにこれ。
有名な配信者が選んだ着陸地点が定員満杯になったとか書いてある。
定員とかあるのね。そりゃそうか。
しかし今作ではそういう楽しみ方もありだよな。
配信者とリスナーで固まって、配信者を中心に動いていく。
最終的に一つの宗教国家みたいになってそうであんまり近寄りたくないけど。
いや、それは流石に偏見だな。
サンドボックスでも配信者とリスナーが一緒になって巨大なもの作り上げるとかあるもんな。
その延長線上だろう。
……うわ、なにこれ。
マップ中央を巨大な渓谷が分断しててフレンドと合流できないとか書いてある。
深すぎて降りられないし広すぎて渡れないらしい。
なにそれ、めっちゃ面白そうなんだけど。
合流できないプレイヤーはかわいそうだが、まずはプレイヤー全員でその渓谷を横断する手段を模索してくれ。
フレンドと合流するだけなら迂回路を探した方が早いかもしれんが。
いきなりカラミティイベント級の滑り出しだ。
いかんな、無限に時間を潰せそうだ。
きっと着陸地点の数だけ物語があるのだろう。
セドナにもなんか話題性のあるなにかがないかな。
……りんねるさんだけで十分か。
あの人がいるらしき時点で、超当たりの地点に違いない。
*────
結論。
新情報、異常、問題、いずれもなし!
確認ヨシ!
では、ニューロノーツ先生、本日もよろしくお願いします。
えっ、昨日は少し体温が高くなってた?
だからエアコンつけた?
今日も暑くなるから気を付けて?
身体に異常が起きたら起こしてくれる?
超有能かよ。うちのメイドになってくれ。
*────
ここは惑星カレド、とある脱出ポッドの内部。
それは瞬きの間に行われた。
空間の宙に、どこからともなくふっと現れた無数微小の青白い粒子が、
くるくると渦巻きながら、人の形を形成する。
そんな青白いヒトガタに、
ぱりぱりと、どこかホログラフィックなエフェクトが覆いかぶさり、
そこに現れたのは――
*────
「ハロー、カノン」
「あっ……! こんにちは、フーガ、くんっ!」
二度目となるダイブイン。場所は変わらずカノンの拠点の中。
カノンの出で立ちは昨日と変わらず、革装備の初期ルック。
特に変わり映えは――ん?
「……あれ、カノン。なんかいい匂いする?」
「――。……あ、あの。シャワーを、浴び、ました」
……?
あっ、ああ、洗浄室の話か。
カノンがやたらどぎまぎした反応を見せたせいで、一瞬なんの話してるのかわからなくなってしまった。
というか洗浄室の機能ってシャワーだっけ?
洗浄ミストが云々って話だったような。
「そうだな、俺も使ってみてもいい?
……というか、昨日帰ってきた時点で使っとくべきだったな」
昨日は拠点に入るや否やダイブアウトしてしまったから、いろいろとおざなりになっている。
技能やら実績やら、そのあたりもろもろの確認もしていない。
またなんか生えてたんだけどね。
「いい、よっ。フーガくんの、拠点でもあるから、
気にしないで、つかって?」
「んじゃ、お言葉に甘えて」
そうして脱出ポッドの角に設えられている洗浄室に入る。
……ほう、なんか前作より空間的に広がってる気がする。
えーと、使い方使い方、そのへんにあるコンソールをポチっと。
『洗浄室では、身体の洗浄、装備・道具類の洗浄の洗浄が可能です。
身体の洗浄と装備・道具類の洗浄は同時に行うことができます。
その場合は、装備している装備類を取り外し、専用の洗浄槽に入れてください。
装備を身に着けたまま利用すると、身体及び装備の洗浄が不十分に終わる可能性があります。
また生物の解体処理等へのご利用は、装置の故障の原因となりますのでご遠慮ください。』
コインランドリーかよ。
いや、最後の一文だけだけどさ。
それも「ペットの抜け毛」云々のフレーズっぽいというだけだけども。
しかし、ふむ。
前作の仕様よりも、ちょっと煩雑になってるかな?
前作では身に着けている装備類を一度脱げ、なんて言われなかった。
あれか、ゲーム的な処理で「洗浄したことにする」のと、フルダイブシステム下で「実際に洗浄する」の差だろうか。
まあこのゲームはどれだけ脱いでもインナースーツが残ることだし、さしたる抵抗もない。
そう思い、初期装備の革装備を取り外してぽいぽいと洗浄槽に投げ込んで――
(――ん?)
洗浄室の扉の外に、なにか気配がある。
別に扉に陰影が見えるというわけではない。
その向こうから小さな音が聞こえた気がする、という程度だが――
「――カノン、なにかあった?」
そりゃこの拠点の中にはカノンしかいないんだから、そこにいるのはカノンだろう。
洗浄槽に革靴を放り込んだ時にちょっと音が響いたかな?
それなら申し訳ないと思って、少し大きめに声を掛けると、
「――ん”っ! なっ、んでも、ないっ。ない、ですっ!」
案の定、扉のすぐ向こうから、少し大きな声でカノンの声が返ってくる。
少し慌てたような口調なのは、気にしないでいい、ということだろうか。
まあ、そういう気遣いをさせてしまっている時点で、気になっているのだろう。
もう少し静かに使おうな、俺。
さて、馴染んだインナースーツのみになったので、側面のボタンを押す。
すると、天井と左右の噴気孔から、そこそこの勢いで細かい霧が吹きつけてくる。
「おっ――おふっ……」
なんだこの不思議感覚。これが近未来式洗浄ミストか。
ヒヤッとして、スッとして、フワッとする。
湿った極薄の不織布で全身を拭われるような感じだ。
霧で拭われた後には、どことなく冷感が残る。
なにかそういう成分でも混ざってるのかな?
その後霧が止まり、同じ孔から今度は温風が吹き出してくる。
吹き付ける風が、湿った身体を暖め乾かしていく。
「おほーっ……」
思わず変な声が出る。なんだかこそばゆい。
しかし……悪くない、悪くないぞ洗浄室。
風呂のように身体を暖めるような機能こそないが、これはこれで面白い。
シャワーが面倒くさいと思っているような人は現実でも気に入りそうな機能だ。
程なくして、温風が止まる。
同時に、装備類を放り込んでおいた洗浄槽の方からも風の音が聞こえなくなる。
覗き込んでみれば、しっかり乾いた革装備一式。
適当に水浸しにして適当に乾かしただけ、という感じもしない。
「……クリーニング屋が青くなるな、これ」
俺たちの母星アースでは、クリーニング屋は廃業に追い込まれているに違いない。
それくらいいい仕上がりだ。
いやあ、一応サバイバルとはいえ、身に着けるものは清潔にしたいよね。
そこが汚いとそもそもやりたくなくなる層が続出するだろうしな。
すばらしい機能だ、素晴らしい。
そして――ここまでの所要時間、5分と少々。
うん、素晴らしい部屋だ。
すっかり洗われた装備一式を身に纏い、洗浄室を出る。
*────
「お待たせ、カノン。さっきは騒がしくしてわるいな」
「んんっ。……別に、音は、気にならなかった、よ?」
「えっ、じゃあなんで洗浄室の前にいたんだ?」
「んゅっ」
「おいなんかすごい音でたぞ」
というかいまどうやって発音した。
にゅっ? ……なんか違うな。
「あ、あの……えと、その、
……っちょっ、と。き、気になって……?」
え、なにが?
文脈的には「俺が洗浄室を使ってることが」。
となると……ああ、そういうことか。
「別に、汚れとかは残ってなかったよ。
シャワーとはまた違うし、自分が使ったあとでもそんなに気にすることもないんじゃないか」
そりゃ、自分がシャワー浴びた後に誰かに使われたら気になるわな。
自分の汚れを落とした後だし、そういうのが残ってないか気になるのは当然だ。
その点、見たところ、洗浄室はそういうの気にしなくてよさそうだった。
「むしろそういうのは俺が気にするべきだったな。すまん」
誰だって、自分がシャワー室を使った後に異性に利用されるのは気になるだろう。
それが知人友人で会っても同様だ。
「あの、えと……? あっ、あの、気にして、気に……?
いや、フーガくんが悪いんじゃなくて、あの、っ……」
カノンが困っている。別にどちらが悪いという話でもないな。
この話題は此処で切り上げよう。
「まあ、それはそれとして。……フルダイブで使う洗浄室、いいよな。
身体は温まらないのがあれだけど、なかなか気持ちがいい」
「……そう、だね。きもち、よかった」
「なんかそういう成分というか、芳香系のなにかが入ってるのかな。
さっきカノンからそんな感じの香りがしたんだけど。
でも、自分の身体からはそんないい匂いしないんだよなぁ」
あれ、不思議だよな。
自分がボディソープやらシャンプーやら使っても匂いに気づかないのに、人がシャワーとか浴びた後はやたらいい香りがするんだよね。
……そんなことを感じられた経験など、人生においてほとんどないが。
「……ん、っと。ちょっと、確かめてみて、も、いい?」
「おお? 別に構わんが」
そう言って、カノンが俺の右肩あたりに遠慮がちに顔を近づけてくる。
女性として、やはりカノンも自分の放つ香りが気になっているのだろうか。
俺がカノンの香りでしかそれに気づけなかったように、カノンも人の香りでしか、この洗浄ミストに含まれている匂いに気づけないのかもしれない。
スンスン
(……。)
スンスン
(……。……)
スンスン
「――あ、あの。カノン、……さん?」
なんか恥ずかしいんだけど。
なにこのシチュエーション。
なぜ俺は黒髪の少女に匂いを嗅がれているんだ。
こんな状況がどのような経緯で発生しうるのかを、俺は自身の人生において露と知らない。
「――ッんゅん!? は、はいっ、なに、か?」
さきほどからカノンの発音のレパートリーが広い。
にゅん? ……違うな……。
「どう、匂い、わかった?」
「――うん。……いいにおい、だった」
「あ、やっぱり? なんだろな、これ」
どうやらカノンにもわかったようだ。
香水やアロマというほど主張が強くない、かなり気づきにくい微香。
これ、洗浄室のミストを蒐集して分析装置に掛ければ……いや、やめよう。
俺一人なら好奇心を抑えきれなかったかもしれないが、カノンの前でそれをやる動機も勇気もない。
幾らなんでも、それは不粋だということは俺にもわかる。
*────
「さて、洗浄室体験会はこのくらいにして。
俺が来るまでに、カノンは他にはなんかやってた?」
「ん、技能と、実績の、確認?
昨日、戻ってきたときに、幾つか出てたの」
「そうだそうだ。俺もそれ見たかったんだ」
マキノさんの拠点から帰ってきたあとのことだ。
あのタイミングで生えそうな技能と言うと……あれかな?
「……わたし、も、一緒に見てもいい?」
「いいぞー」
そして人差し指を親指で弾き、俺とカノンの眼前に来るように仮想ウィンドウを展開させる。
そのまま生体情報をタップタップ。
予想通り、技能と実績に新規追加があるようだ。
「では技能をば」
現在の技能はこちら。
──────────────────
【装備換装】 ── Lv1
【潜水】 ── Lv1
【測量】 ── Lv1 → Lv2
【旅歩き】 ── new!!
──────────────────
「おっ、やっぱり【旅歩き】来てんじゃん。今作めっちゃ便利そうだよな。
カノンも来てた?」
「うん。……前作だと、あるきのスタミナの消費量、減る感じ、だったけど」
「今作だと、スタミナゲージもなにもないしな。
歩きの長距離移動で疲れにくくなるとかそんな感じかな?
疲れにくいように姿勢のアシストでもしてくれるのかね。
もしかして、ちょっと歩きの速度も上がったり?」
「だったら、いいね? 広いもん、ね。この世界」
「うむ、歩いてるだけで鍛えられるだろうし、
しばらくはスロットに挿しっぱなしでいいだろうな」
これで取得した技能は4つ。
旅歩きはありがたいが、【測量】もちゃっかり成長してるな。
日時計作って確かめるだけで上がるのか?
流石に上りが早すぎる気がするが、他にもなんかやったっけ?
というか測量術のアクションアシストってどんな感じなんだろ。
今のところイマイチ実感がない。
「うん、順調順調。欲しい技能は出先で気が向いたときにでもどんどん拾っていこう」
続いて実績を見てみよう。
新しい実績はこちら。
―――――――――――――――――――――
【シェイク・ハンズ】
条件:プレイヤー1人以上とフレンドになる。
―――――――――――――――――――――
【惑星カレドの異邦人】
条件:10km以上移動する。
―――――――――――――――――――――
やっぱり云人とフレンドになる系もあるみたいだ。
あって然るべきだろう。
こういう実績が用意されていることで、このゲームに不慣れな人でも、フレンド機能の利用を公式が推奨していると知ることができる。
しかし――
「【惑星カレドの異邦人】、カノンも出てる?」
「ん、出てない、かも?」
「――なるほどなぁ」
昨日のカノンとの散策道中は往復2時間程度だった。
かなりゆっくり歩いたのもあって、その移動距離は恐らく8kmもない。
そして、俺が落ちた川からこのカノンの拠点までの移動距離、1kmほど。
その移動距離を足し合わせても、恐らく10kmに届いていないのだ。
だから、カノンには【惑星カレドの異邦人】の実績が出ていない。
だが、俺には出ている。ならば、その意味は?
昨日の時点で、うっすらと気づいていた。
実績【■■■■■との遭遇】を見た時点からだ。
すなわち、技能とは違い、実績の解禁には、死に戻りは関係ないのではないか。
俺が既に10km移動しているのは、テレポバグ先で走り回った分がカウントされているから。
そしてよくわからないなにかと遭遇したのも、きっとテレポバグ先でのこと。
そう考えれば、つじつまが合う。
……というようなことをかいつまんでカノンにも伝えておく。
カノンが知らないところで俺がなにかをやっているのでは、なんて不安を与えたくはない。
「――ってなわけで、実績は死に戻り関係ないんじゃないかという推測」
「実績はメリットない、から、気にしなかった、のかな?」
「あるいは、死に戻りしても一応得るものはある、っていうプレイヤーへの情けか」
「んっ、あと、イベントとかで、実績、貰いやすいように、とか?」
「おお、確かに。親玉とかヌシっぽいやつ倒したけど、相打ちで死んだせいで実績貰えませんでしたーとか興醒めだしな」
なるほど、カノンの考察はもっともらしい話だ。
実績の確認についてはこんくらいにしとこうか。
*────
さて、脱出ポッド内壁の小窓を見れば、外は夕暮れ。
このセドナの時刻で言えば、午後6時を回った、といったところだ。
ここから長い夜が来るわけだが――
「じゃ、お待ちかねの資源分析と道具づくりと行くか」
「んっ、行こっか」
とりあえず、昨日拾ってきたもろもろを分析してみよう。
まずはやれることからやっていけばいい。
どうせこの星の夜は長いんだ。
今日は8月31日の土曜日。
夏休みの終わり。
いや、今日は土曜日だから明日も夏休みかな。
今年の学生たちは、8月32日の日曜日を楽しむのだろう。
たとえ異界に呑み込まれても、無事に戻ってきて欲しい。
時刻は午前9時32分。
普段は目覚まし時計を使うことがないくらいには寝起きに自信があるんだが、今日は明らかに寝過ぎた。
……昨日は波乱万丈だったからな。
昨日の昼まではあの世界に飛び込んですらいなかったなんて、今でも信じられない。
俺との再会も、テレポバグも、あの死の森での逃避行も。
彼女との再会も、マキノさんとの出逢いも。
たった数時間足らずの間の出来事だったなんて。
すべてが夢のようだ。
だけど今の俺は、そんな泡沫の夢の続きを見ることができる。
もう一つの世界に旅立つことができる。
フルダイブシステム・ニューロノーツ。
ワンダリング・ワンダラーズ。
もう一人の俺。
ニューロノーツを横目で見ていると、不意に感慨がこみ上げてくる。
(すごい時代になったもんだ――)
それぞれのゲームの中に存在する、無数の「もう一つのリアル」。
どこぞの誰かが初代『Wandering Wonderer』に寄せたコメントではないけれど。
きっとこの世界に発売されるゲームの数だけ、紡がれた世界がある。
昔は「所詮ゲームの世界」と一笑に付すことができたのかもしれないけれど。
ここまで真に迫ってしまえば、どちらが真であるかなんて人によるのではないかと思ってしまう。
ジィ―― ジィ――――――
……ああ、蝉の声がうるさい。
まだ午前だというのに、どこか遠くの空の下から。
そろそろ君たちの活動期も終わりだろう。
夏はまだ、終わりそうにないけれど。
さて、まずは軽くシャワーでも浴びて、本日の活動を開始しよう。
どこかの誰かさんが惰眠を貪ったせいで、そんなに時間に余裕があるわけではないぞ、っと。
*────
さて、シャワーを浴び、しっかりブランチも取った。
カノンとの待ち合わせの時刻まで、あと一時間くらいある。
今のうちに各種情報をチェックしておこう。
現在俺が気になっていることは幾つかある。
まず第一に、俺がテレポバグを起こしてしまったことで、公式になんらかのレスポンスが生じているか、ということ。
これについては公式ページにも広報にも、緊急メンテナンスやら修正パッチやらバグフィックス云々のお知らせが出ていないため、ひとまず問題ないとみていいだろう。
これでなにかしらの対応が発表されていたら、バグの報連相をサボっている身としては胃がキリキリしていたところだ。
素直に助かった。
続いて、俺の『犬2』のアカウント宛てになんらかのメッセージが届いているか、ということ。
具体的に言えば、公式から「見てるぞ(はぁと)」なんていうファンメールが届いていないかということだ。
俺はひたすらバグがバレないことを願っているので、当然届いていて欲しくはない。
……やっぱりいまの俺って、いたずらがバレそうになってる子どもそのものだよなぁ。
さいわいなことに、こちらの心配についても杞憂だった。
あとは『犬2』プレイヤーの全体の機運なども気になるが――ゲーム発売直後から掲示板やら情報サイトに入り浸るのはあんまり好きじゃないんだよな。
『犬2』での新しい仕様や、実績の解放条件などを目にしてしまったら興醒めだ。
ネタバレ食らうのが嫌ならそういう場所を見なければいいだけだ。
かつての古巣である検証スレとか、またこちらでも立ってるのかな、とも思うけれど。
そうだな……少なくとも1週間、できれば2週間は我慢しよう。
各着陸地点ごとのコミュニティなんてのも既にあるみたいだが……そちらもあまり見ないようにしたい。
誰がセドナに来てるかとか、知らない方が楽しめることもあるだろうしな。
そう思いつつも、各コミュニティの様子をちらりと目で追ってしまう。
……うわ、なにこれ。
有名な配信者が選んだ着陸地点が定員満杯になったとか書いてある。
定員とかあるのね。そりゃそうか。
しかし今作ではそういう楽しみ方もありだよな。
配信者とリスナーで固まって、配信者を中心に動いていく。
最終的に一つの宗教国家みたいになってそうであんまり近寄りたくないけど。
いや、それは流石に偏見だな。
サンドボックスでも配信者とリスナーが一緒になって巨大なもの作り上げるとかあるもんな。
その延長線上だろう。
……うわ、なにこれ。
マップ中央を巨大な渓谷が分断しててフレンドと合流できないとか書いてある。
深すぎて降りられないし広すぎて渡れないらしい。
なにそれ、めっちゃ面白そうなんだけど。
合流できないプレイヤーはかわいそうだが、まずはプレイヤー全員でその渓谷を横断する手段を模索してくれ。
フレンドと合流するだけなら迂回路を探した方が早いかもしれんが。
いきなりカラミティイベント級の滑り出しだ。
いかんな、無限に時間を潰せそうだ。
きっと着陸地点の数だけ物語があるのだろう。
セドナにもなんか話題性のあるなにかがないかな。
……りんねるさんだけで十分か。
あの人がいるらしき時点で、超当たりの地点に違いない。
*────
結論。
新情報、異常、問題、いずれもなし!
確認ヨシ!
では、ニューロノーツ先生、本日もよろしくお願いします。
えっ、昨日は少し体温が高くなってた?
だからエアコンつけた?
今日も暑くなるから気を付けて?
身体に異常が起きたら起こしてくれる?
超有能かよ。うちのメイドになってくれ。
*────
ここは惑星カレド、とある脱出ポッドの内部。
それは瞬きの間に行われた。
空間の宙に、どこからともなくふっと現れた無数微小の青白い粒子が、
くるくると渦巻きながら、人の形を形成する。
そんな青白いヒトガタに、
ぱりぱりと、どこかホログラフィックなエフェクトが覆いかぶさり、
そこに現れたのは――
*────
「ハロー、カノン」
「あっ……! こんにちは、フーガ、くんっ!」
二度目となるダイブイン。場所は変わらずカノンの拠点の中。
カノンの出で立ちは昨日と変わらず、革装備の初期ルック。
特に変わり映えは――ん?
「……あれ、カノン。なんかいい匂いする?」
「――。……あ、あの。シャワーを、浴び、ました」
……?
あっ、ああ、洗浄室の話か。
カノンがやたらどぎまぎした反応を見せたせいで、一瞬なんの話してるのかわからなくなってしまった。
というか洗浄室の機能ってシャワーだっけ?
洗浄ミストが云々って話だったような。
「そうだな、俺も使ってみてもいい?
……というか、昨日帰ってきた時点で使っとくべきだったな」
昨日は拠点に入るや否やダイブアウトしてしまったから、いろいろとおざなりになっている。
技能やら実績やら、そのあたりもろもろの確認もしていない。
またなんか生えてたんだけどね。
「いい、よっ。フーガくんの、拠点でもあるから、
気にしないで、つかって?」
「んじゃ、お言葉に甘えて」
そうして脱出ポッドの角に設えられている洗浄室に入る。
……ほう、なんか前作より空間的に広がってる気がする。
えーと、使い方使い方、そのへんにあるコンソールをポチっと。
『洗浄室では、身体の洗浄、装備・道具類の洗浄の洗浄が可能です。
身体の洗浄と装備・道具類の洗浄は同時に行うことができます。
その場合は、装備している装備類を取り外し、専用の洗浄槽に入れてください。
装備を身に着けたまま利用すると、身体及び装備の洗浄が不十分に終わる可能性があります。
また生物の解体処理等へのご利用は、装置の故障の原因となりますのでご遠慮ください。』
コインランドリーかよ。
いや、最後の一文だけだけどさ。
それも「ペットの抜け毛」云々のフレーズっぽいというだけだけども。
しかし、ふむ。
前作の仕様よりも、ちょっと煩雑になってるかな?
前作では身に着けている装備類を一度脱げ、なんて言われなかった。
あれか、ゲーム的な処理で「洗浄したことにする」のと、フルダイブシステム下で「実際に洗浄する」の差だろうか。
まあこのゲームはどれだけ脱いでもインナースーツが残ることだし、さしたる抵抗もない。
そう思い、初期装備の革装備を取り外してぽいぽいと洗浄槽に投げ込んで――
(――ん?)
洗浄室の扉の外に、なにか気配がある。
別に扉に陰影が見えるというわけではない。
その向こうから小さな音が聞こえた気がする、という程度だが――
「――カノン、なにかあった?」
そりゃこの拠点の中にはカノンしかいないんだから、そこにいるのはカノンだろう。
洗浄槽に革靴を放り込んだ時にちょっと音が響いたかな?
それなら申し訳ないと思って、少し大きめに声を掛けると、
「――ん”っ! なっ、んでも、ないっ。ない、ですっ!」
案の定、扉のすぐ向こうから、少し大きな声でカノンの声が返ってくる。
少し慌てたような口調なのは、気にしないでいい、ということだろうか。
まあ、そういう気遣いをさせてしまっている時点で、気になっているのだろう。
もう少し静かに使おうな、俺。
さて、馴染んだインナースーツのみになったので、側面のボタンを押す。
すると、天井と左右の噴気孔から、そこそこの勢いで細かい霧が吹きつけてくる。
「おっ――おふっ……」
なんだこの不思議感覚。これが近未来式洗浄ミストか。
ヒヤッとして、スッとして、フワッとする。
湿った極薄の不織布で全身を拭われるような感じだ。
霧で拭われた後には、どことなく冷感が残る。
なにかそういう成分でも混ざってるのかな?
その後霧が止まり、同じ孔から今度は温風が吹き出してくる。
吹き付ける風が、湿った身体を暖め乾かしていく。
「おほーっ……」
思わず変な声が出る。なんだかこそばゆい。
しかし……悪くない、悪くないぞ洗浄室。
風呂のように身体を暖めるような機能こそないが、これはこれで面白い。
シャワーが面倒くさいと思っているような人は現実でも気に入りそうな機能だ。
程なくして、温風が止まる。
同時に、装備類を放り込んでおいた洗浄槽の方からも風の音が聞こえなくなる。
覗き込んでみれば、しっかり乾いた革装備一式。
適当に水浸しにして適当に乾かしただけ、という感じもしない。
「……クリーニング屋が青くなるな、これ」
俺たちの母星アースでは、クリーニング屋は廃業に追い込まれているに違いない。
それくらいいい仕上がりだ。
いやあ、一応サバイバルとはいえ、身に着けるものは清潔にしたいよね。
そこが汚いとそもそもやりたくなくなる層が続出するだろうしな。
すばらしい機能だ、素晴らしい。
そして――ここまでの所要時間、5分と少々。
うん、素晴らしい部屋だ。
すっかり洗われた装備一式を身に纏い、洗浄室を出る。
*────
「お待たせ、カノン。さっきは騒がしくしてわるいな」
「んんっ。……別に、音は、気にならなかった、よ?」
「えっ、じゃあなんで洗浄室の前にいたんだ?」
「んゅっ」
「おいなんかすごい音でたぞ」
というかいまどうやって発音した。
にゅっ? ……なんか違うな。
「あ、あの……えと、その、
……っちょっ、と。き、気になって……?」
え、なにが?
文脈的には「俺が洗浄室を使ってることが」。
となると……ああ、そういうことか。
「別に、汚れとかは残ってなかったよ。
シャワーとはまた違うし、自分が使ったあとでもそんなに気にすることもないんじゃないか」
そりゃ、自分がシャワー浴びた後に誰かに使われたら気になるわな。
自分の汚れを落とした後だし、そういうのが残ってないか気になるのは当然だ。
その点、見たところ、洗浄室はそういうの気にしなくてよさそうだった。
「むしろそういうのは俺が気にするべきだったな。すまん」
誰だって、自分がシャワー室を使った後に異性に利用されるのは気になるだろう。
それが知人友人で会っても同様だ。
「あの、えと……? あっ、あの、気にして、気に……?
いや、フーガくんが悪いんじゃなくて、あの、っ……」
カノンが困っている。別にどちらが悪いという話でもないな。
この話題は此処で切り上げよう。
「まあ、それはそれとして。……フルダイブで使う洗浄室、いいよな。
身体は温まらないのがあれだけど、なかなか気持ちがいい」
「……そう、だね。きもち、よかった」
「なんかそういう成分というか、芳香系のなにかが入ってるのかな。
さっきカノンからそんな感じの香りがしたんだけど。
でも、自分の身体からはそんないい匂いしないんだよなぁ」
あれ、不思議だよな。
自分がボディソープやらシャンプーやら使っても匂いに気づかないのに、人がシャワーとか浴びた後はやたらいい香りがするんだよね。
……そんなことを感じられた経験など、人生においてほとんどないが。
「……ん、っと。ちょっと、確かめてみて、も、いい?」
「おお? 別に構わんが」
そう言って、カノンが俺の右肩あたりに遠慮がちに顔を近づけてくる。
女性として、やはりカノンも自分の放つ香りが気になっているのだろうか。
俺がカノンの香りでしかそれに気づけなかったように、カノンも人の香りでしか、この洗浄ミストに含まれている匂いに気づけないのかもしれない。
スンスン
(……。)
スンスン
(……。……)
スンスン
「――あ、あの。カノン、……さん?」
なんか恥ずかしいんだけど。
なにこのシチュエーション。
なぜ俺は黒髪の少女に匂いを嗅がれているんだ。
こんな状況がどのような経緯で発生しうるのかを、俺は自身の人生において露と知らない。
「――ッんゅん!? は、はいっ、なに、か?」
さきほどからカノンの発音のレパートリーが広い。
にゅん? ……違うな……。
「どう、匂い、わかった?」
「――うん。……いいにおい、だった」
「あ、やっぱり? なんだろな、これ」
どうやらカノンにもわかったようだ。
香水やアロマというほど主張が強くない、かなり気づきにくい微香。
これ、洗浄室のミストを蒐集して分析装置に掛ければ……いや、やめよう。
俺一人なら好奇心を抑えきれなかったかもしれないが、カノンの前でそれをやる動機も勇気もない。
幾らなんでも、それは不粋だということは俺にもわかる。
*────
「さて、洗浄室体験会はこのくらいにして。
俺が来るまでに、カノンは他にはなんかやってた?」
「ん、技能と、実績の、確認?
昨日、戻ってきたときに、幾つか出てたの」
「そうだそうだ。俺もそれ見たかったんだ」
マキノさんの拠点から帰ってきたあとのことだ。
あのタイミングで生えそうな技能と言うと……あれかな?
「……わたし、も、一緒に見てもいい?」
「いいぞー」
そして人差し指を親指で弾き、俺とカノンの眼前に来るように仮想ウィンドウを展開させる。
そのまま生体情報をタップタップ。
予想通り、技能と実績に新規追加があるようだ。
「では技能をば」
現在の技能はこちら。
──────────────────
【装備換装】 ── Lv1
【潜水】 ── Lv1
【測量】 ── Lv1 → Lv2
【旅歩き】 ── new!!
──────────────────
「おっ、やっぱり【旅歩き】来てんじゃん。今作めっちゃ便利そうだよな。
カノンも来てた?」
「うん。……前作だと、あるきのスタミナの消費量、減る感じ、だったけど」
「今作だと、スタミナゲージもなにもないしな。
歩きの長距離移動で疲れにくくなるとかそんな感じかな?
疲れにくいように姿勢のアシストでもしてくれるのかね。
もしかして、ちょっと歩きの速度も上がったり?」
「だったら、いいね? 広いもん、ね。この世界」
「うむ、歩いてるだけで鍛えられるだろうし、
しばらくはスロットに挿しっぱなしでいいだろうな」
これで取得した技能は4つ。
旅歩きはありがたいが、【測量】もちゃっかり成長してるな。
日時計作って確かめるだけで上がるのか?
流石に上りが早すぎる気がするが、他にもなんかやったっけ?
というか測量術のアクションアシストってどんな感じなんだろ。
今のところイマイチ実感がない。
「うん、順調順調。欲しい技能は出先で気が向いたときにでもどんどん拾っていこう」
続いて実績を見てみよう。
新しい実績はこちら。
―――――――――――――――――――――
【シェイク・ハンズ】
条件:プレイヤー1人以上とフレンドになる。
―――――――――――――――――――――
【惑星カレドの異邦人】
条件:10km以上移動する。
―――――――――――――――――――――
やっぱり云人とフレンドになる系もあるみたいだ。
あって然るべきだろう。
こういう実績が用意されていることで、このゲームに不慣れな人でも、フレンド機能の利用を公式が推奨していると知ることができる。
しかし――
「【惑星カレドの異邦人】、カノンも出てる?」
「ん、出てない、かも?」
「――なるほどなぁ」
昨日のカノンとの散策道中は往復2時間程度だった。
かなりゆっくり歩いたのもあって、その移動距離は恐らく8kmもない。
そして、俺が落ちた川からこのカノンの拠点までの移動距離、1kmほど。
その移動距離を足し合わせても、恐らく10kmに届いていないのだ。
だから、カノンには【惑星カレドの異邦人】の実績が出ていない。
だが、俺には出ている。ならば、その意味は?
昨日の時点で、うっすらと気づいていた。
実績【■■■■■との遭遇】を見た時点からだ。
すなわち、技能とは違い、実績の解禁には、死に戻りは関係ないのではないか。
俺が既に10km移動しているのは、テレポバグ先で走り回った分がカウントされているから。
そしてよくわからないなにかと遭遇したのも、きっとテレポバグ先でのこと。
そう考えれば、つじつまが合う。
……というようなことをかいつまんでカノンにも伝えておく。
カノンが知らないところで俺がなにかをやっているのでは、なんて不安を与えたくはない。
「――ってなわけで、実績は死に戻り関係ないんじゃないかという推測」
「実績はメリットない、から、気にしなかった、のかな?」
「あるいは、死に戻りしても一応得るものはある、っていうプレイヤーへの情けか」
「んっ、あと、イベントとかで、実績、貰いやすいように、とか?」
「おお、確かに。親玉とかヌシっぽいやつ倒したけど、相打ちで死んだせいで実績貰えませんでしたーとか興醒めだしな」
なるほど、カノンの考察はもっともらしい話だ。
実績の確認についてはこんくらいにしとこうか。
*────
さて、脱出ポッド内壁の小窓を見れば、外は夕暮れ。
このセドナの時刻で言えば、午後6時を回った、といったところだ。
ここから長い夜が来るわけだが――
「じゃ、お待ちかねの資源分析と道具づくりと行くか」
「んっ、行こっか」
とりあえず、昨日拾ってきたもろもろを分析してみよう。
まずはやれることからやっていけばいい。
どうせこの星の夜は長いんだ。
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