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第七十四話 「もみ消された大奥の大スキャンダル」
しおりを挟む松浦静山著「甲子夜話続篇」
巻六十三、五「大城大奥の部屋に比丘尼入るを禁じせし訳」より
風の噂に聞いた話である。
江戸城の大奥は男子禁制の場所で、男性の立ち入りはもとより禁止されているのであるが、女﨟(大奥に仕える女性)方の父母兄弟等の命日などには、女﨟方の部屋に法要の為の比丘尼(尼僧)が立ち入ることは許されている。
誦経に来る比丘尼の中には、時として大奥に泊まってゆく者もあったという。
ある日の事、大奥の便所を掃除する者が糞桶を担いで門を出ようとするのを門番が見ていると、糞桶の中に小さな人間の目鼻のようなものが見えた。
門番が呼び止めて桶の中を改めると、それは嬰児の死体だった。
門番から報告を受けた頭役が厳しく詮議したところ、女﨟方の部屋に出入りする比丘尼の中に、東門跡の若い僧が女性に化けて紛れ込み、時には大奥に泊まっていたという事が判明した。
そこで妊娠した女﨟がこっそり堕胎して、嬰児を便所に捨てたのである。
この事件は大変扱いが難しい問題となり、表沙汰になれば大量の処罰者が出ることが予想された。
その後は誰の知恵であろうか、法要の為に比丘尼を大奥に入れる際には「下々より大奥に入り来る者であるから、中には体の汚れた者もいるかもしれない」という理由で、外から入ってくる比丘尼には新たに設けた風呂で湯浴みをさせ、男でないことを確認してから奥に入れるように改めたという。
・・・・大奥の女性が妊娠、こっそり堕胎して嬰児を便所に遺棄したという大スキャンダルでした。
静山さんの文中には直接書いていませんが、文章の流れから言うと、この事件は公にはされず闇に葬られたのでしょう。
こんな事か公になったら、あの「江島生島事件」のように大量の処罰者が出るのは火を見るより明らかですしね。
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