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第三話 「制札(お触書)三条」 ~シンプル・イズ・ベスト~
しおりを挟む山崎美成著「堤醒紀談」嘉永三(1850)年刊
「制札三条」より
徳川家康公が三河の地に入られた時、本多作左衛門、高力左近、天野三郎兵衛の三人を奉行に仰せつけられた。
これまで今川領だったこの地は、代々続く争いなどで揉め事が多い地域であり、本多作左衛門が視察し制札(法令、お触書を記した札)を見たところ、お触れが百姓には分からない難しい言葉でたくさん書かれている。
作左衛門はすぐさま、制札を次のように作り替えた。
一、 人を殺すものは命がないぞ
一、 火を付けると火あぶりになるぞ
一、 狼藉をはたらくと作左衛門が叱るぞ
その後、三河の地は良く治まったという。
また、ある時、作左衛門が留守を守っている妻に宛てて、手紙を書いた。
その内容は、
「一筆啓上、火の用心、おせん泣かすな、馬肥やせ」
本多作左衛門は徳川家康の重臣で、「三河三奉行」として同地の民政にあたった人だそうです。
難しい漢字でたくさん書かれていた法律を、民衆に分かりすく、かな文字でたった三条に改めた作左衛門。
まさに、シンプル・イズ・ベスト!
後段の妻への手紙は、無駄のない簡潔な文章として古くから有名だそうです。
一切の無駄を省いた簡潔な文章と言えば、世界的に有名なのが、
「来た、見た、勝った」 (Veni, vidi, vici)
ではないでしょうか。
あの古代ローマの英雄、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が書いた手紙で、紀元前47年のゼラの戦いの勝利をローマ本国にいる腹心に知らせた手紙だそうです。
「賽は投げられた」「ブルータス、お前もか」など現在にも残る名言を残したカエサルらしい手紙と言えます。
また、時代は変わりますが最近はあまり使う機会のなくなった「電報」。
文字数制限があり、昔はカタカナでしか送れなかった電報で模範とされた文章があります。
「ダンナハイケナイワタシハテキズ」
旦那はいけない(死んでしまった)、私は手傷(軽傷)・・・という電報
明治九年十月二十四日、不平士族の反乱である「神風連の乱」で暗殺された熊本鎮台司令官、種田政明のお妾さんだった小勝という人が親元に送った電報です。
もうこれだけで、旦那と小勝自身の安否という、親族が一番知りたい肝心な情報が理解できます。
簡潔で無駄がなく、内容が判りやすい電報の好例として新聞紙上で紹介され有名になったとか。
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