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【おまけ】 カナマラ大明神の由来 ~有歯女陰(ヴァギナ・デンタータ)伝説~
しおりを挟む根岸鎮衛著 「耳嚢」
巻之一「金精神の事」より
津軽氏の家来の話では、津軽の道中に「カナマラ大明神」といって、黒銅で作られた男根を御神体としている所があるという。
私(鎮衛)が「・・・これは一体どういう由来のものなのでしょうか」と聞くと、土地の古老がその由来を語ってくれた。
昔、その地に裕福な長者の夫婦が住んでいた。
夫婦には一人の娘がいたが、その娘は類まれな美貌だったため求婚者が絶えなかった。
父母はこの美しい一人娘を寵愛した。
村の青年たちはこぞって長者に贈り物をし、その美しい娘を嫁に欲しいと申し出たが、長者としても一人娘ゆえ、よく婿を選んで容姿も家柄も申し分ない青年を娘の婿に迎えた。
娘の将来は順風満帆に思えたが、どういう理由か、婿は娘との初夜の晩にあっけなく死んでしまった。
長者は仕方なく、次の婿を迎えたが、これも新婚初夜の晩に変死を遂げてしまう・・・。
それからというもの、何人もの男が娘の婿としてやってきたが、あるいは変死し、あるいは大怪我をしてすぐに逃げ出してしまい、美しい娘の閨(寝室)は空しいものになってしまった。
父母は大変悲しみ、娘に訳を聞いてみた。
「どうして婿が死んだり逃げたりしてしまうのだろう・・・おまえ、なにか心当たりはあるのかい」
「・・・私もその理由が分からないのです、なぜか初夜の時に殿方が死んでしまうか、恐れて逃げてしまうのです・・・」
娘はそう言って泣くばかりだった。
父母も、娘の因果を感じ嘆き悲しんで暮らしていた。
ある村に一人の若者がいた。
若者は長者の娘の噂を聞き、娘の婿になって男根に大怪我をして、命からがら逃げてきた男に話を聞いた。
「・・・あの女の女陰には鬼牙があるのだ、それで男のモノに噛み付いて食い千切ってしまうのだ・・・俺はこうして命は助かったが、あれは恐ろしい魔物だぞ」
若者は一計を案じた。
若者は鍛冶屋であるものを拵えてもらい、娘に求婚した。
すでに娘の噂は近郷まで広まり、婿になろうという男はどこにもいなかったので、父母は大変に喜んで若者を迎えた。
さて、娘と若者が祝言を終えて初夜を迎え、二人は閨に入った。
そして、いよいよ交わるという時に、男は自分の男根を挿入するふりをして、かねて用意していた黒銅製の男根を娘に挿入した。
男根が入ってきた瞬間、娘の女陰からはおびただしい鋭い鬼牙が生えてきて男根に噛み付いてきたが、銅で出来た男根に、牙はすべて折れ砕かれてしまった。
それからというもの、娘は普通の女となり若者と幸せに暮らしたという。
長者の家では、この黒銅の男根を御神体として奉り崇拝するようになったということだ。
カナマラ大明神というと、現在は神奈川県川崎市の「金山神社」が世界的にも有名(Iron Penis Festival として外国人も沢山やってくるとか)ですが、青森県でも古くから生殖器崇拝があったようです。
太古の人類が子孫繁栄の象徴として性器を神聖視する、というのは非常に理解できます。
先史時代(人類が文字を発明する以前)の出土品として有名な、通称「ヴィレンドルフのヴィーナス」も、女性の乳房や性器が大変誇張した造形で作られています。
生殖器崇拝は、原始宗教の名残を色濃く残している風習なのでしょう。
それにして、この有歯女陰(ヴァギナ・デンタータ)伝説は、世界各国に類話が見られるとか。
これが非常に不思議な気がします。
民俗学や文化人類学、そしてフロイトの精神分析学等、色んな側面から研究したら非常に面白い気がしました。
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