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第ニ話 「慈愛と性愛」~無垢な丁稚に添い寝をするお照の母性~

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 「ああっ、鶴吉というのかい・・・良かったねぇ、今日からうちで小僧さんとして働いておくれよ、丁稚奉公は大変だけど頑張るんだよ」

 「・・・・ありがとうございます、旦那さま、お内儀さま」

 鶴吉は人形のように可愛らしく、ペコリと頭を下げた。

 そうして、鶴吉は近江屋の丁稚となり「鶴松」と呼ばれるようになった。
 近江屋に五人いる丁稚の中でも最年少の鶴松を、お照はなにかと気遣った。


 お照には十八の時に生んだ長男を始め一男ニ女がいたが、元々子供好きで、近所でも評判の篤志家であるお照は、可愛らしくて素直な鶴松を殊に可愛がった。

 母を亡くした可哀想な子である鶴松に、彼女の母性本能が刺激されたのであろう。
 商家で主人に次ぐ権力を持つ内儀に目をかけられている鶴松は、先輩の丁稚達からいじめられることもなく、夜はお照自らが読み書き算盤そろばんを教えた。


 賢く素直な鶴松をお照はさらに溺愛するようになった。

 寒い冬は自分の寝床に鶴松を入れ、添い寝をしてやるほどの溺愛ぶりだった。
 周囲は、そんなお照の優しさをさして特別なことと思わずに気にも止めなかった。

 「・・・・まあっ、鶴松、冷たい手だねぇ、寒いだろう?ほらっ、私の懐に入っておいで・・・温めてあげるよ」

 お照は、小柄で可愛らしい鶴松を自分の胸に抱いて彼が眠りにつくまで頭を撫でてやるのだ。
 鶴松も早くに母を亡くした寂しさからか、お照にしっかりと抱きついてスヤスヤと眠るのだった。


 ・・・・それから四年が過ぎた、鶴松も◯◯歳となり、背も伸びて少年らしくなってきた。
 成長するにつれ、さらに輝きを増してきた役者のように整った可愛らしい顔、仕事もよく覚え、明るく真面目に働く鶴松は主人の伊左衛門にも可愛がられ、伊左衛門が商用で外出する時は決まって鶴松を供に選ぶのだった。


 ・・・・しかし、お照はすっかり体格も良くなり、少年らしくなってきた鶴松に、相変わらず添い寝をするのを止めなかった。
 長年の習慣となった生活様式はなかなか変えるのは難しい、さらにはお照が鶴松の急速な成長・・・特に身体の変化にまで気が回らなかったせいもあろう。

 むしろお照は、美少年に成長した鶴松を以前にも増して溺愛するようになっていたのだった。


 夫の伊左衛門にはめかけがいた。
 それは伊左衛門が吉原で豪遊していた時の馴染みで、彼が妾として請け出して神田の閑静な長屋に囲っている女だった。

 ・・・それはお照も公認の妾であった。

 「江戸で知らないものはいないという札差・近江屋の旦那ですもの、妾の一人や二人囲うのは男の甲斐性ってものですわ、おまえさん、私は構わないからその女を請け出しておやりなさいな、その方が吉原に通い詰めて無駄金を使うよりもかえって安く上がるってもんでしょう」

 物分かりの良い女房を持ったことを喜び、伊左衛門は廿一にじゅういちになる女郎を請け出して囲い者にして、三日に一度は妾の所で夜を明かすのだった。
 そんな訳で、伊左衛門、お照夫婦は夫婦仲は決して悪くなかったが、夜の生活はすっかりご無沙汰となっていたのである。


 ・・・その夜は伊左衛門のいない、蒸し暑い夜だった。

 大家たいけらしく、お照は奉公人たちがいる店ではなく、贅を尽くして風流に造られた庭に面した離れで寝るのを常としていた。

 すっかり年頃の少年となった鶴松は、相変わらず夜着の中でお照に抱かれていた。
 お照の豊かな乳房に顔をうずめて眠るのが鶴松の数年来の習慣となっていたのである。

 ・・・それは鶴松が◯◯歳になった今でも変わることはなかった。

 「・・・鶴松、今夜は本当に蒸し暑いねぇ・・・・」

 お照は、汗でジットリと濡れた胸元を大きくはだけて乳房を露わにする。

 そして、まるで小さな◯供にしてやるように、団扇うちわで鶴松をあおいでやるのだ。

 「・・・はい、お内儀さま・・・今夜は暑いですね」

 「ああっ、こんなに蒸し暑くっちゃあ寝られやしないわ!」

 お照が大きく寝返りを打った瞬間だった。
 彼女の寝乱れた寝間着の大きくはだけた裾から剥き出しになった、ムッチリと肉感的な太股に何か硬いものが当たったのである!

 「・・・あっ・・・えっ・・・つ、鶴松っ?」

 「・・・・」

 鶴松は、一瞬ビクッ・・・と体を震わせ、慌ててお照の体から離れようとする。

 「・・・・い、今のは・・・鶴松・・・おまえ・・・ひょっとして魔羅を硬くしているのかい?」

 「・・・ごっ、ごめんなさい、お内儀さま・・・」

 ◯◯歳のときに引取ってからというもの、抱き寝をして育ててきた女の子のように可愛らしい鶴松が、いつの間にか魔羅を逞しく勃起させている!

 ・・・・まだまだ◯供だと思っていた鶴松の以外な成長を目の当たりにしてお照は驚愕し、また狼狽した。
 しかし、冷静に考えれはそれは無理もないことだった。

 鶴松も今年◯◯歳の少年盛りである・・・まだまだ女の色気がムンムンと匂い立つ大年増の胸に抱かれ、ムッチリと弾力のある太股に触れ、甘く蕩けるような異性の体臭に刺激されて魔羅を硬くしてしまうのは、むしろ自然なことなのだ。

 それは◯◯歳の少年のごく自然な生理現象なのである。

 ・・・・お照は狼狽すると同時に、三十四歳・・・娘盛りをとうに過ぎて、女としての自信を失いかけていた自分の熟れた肉体で欲情し、まだ成長途中の魔羅を激しく勃起させている鶴松を猛烈に愛おしく思ったのである。

 ・・・・カチカチに硬直し、ふんどしを押し上げ、夜着の裾から顔を出している男の証・・・・勃起した男根をどうしていいのか判らず泣きそうな顔をしている美少年。

 小さな行灯あんどんの灯が、風もないのにチラチラと小さく揺らめき、二人しかいない離れの寝床の雰囲気を艶かしく演出する。

 ・・・・次第に妖しく妖艶な空気が小さな寝間を支配してゆく。

 鶴松はと言えば、身の置き所もないように、ピーン!と褌を突っ張らかしたまま、両手で股間を押さえモジモジとしているのだ。
 そんな初心な鶴松を、お照は心から可愛らしいと思った。

 ・・・・と同時に、お照の目にトロンとした妖しい光が宿る・・・・それは熟れた肉体を持て余す大年増の発情の眼差しだった。


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