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第六十七話 「大上戸の事」

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 「当世手打笑」作者不詳 延宝九(1681)年刊 「大上戸の事」より


 大変な酒飲みの男がいた。

 度々大酒を飲んで正体を失い大暴れするので、親類達が集まって色々と意見をするが聞き入れない。

 ある時、男はいつものように大酒を食らって吐いてしまう。
 親類が一計を案じて、男の吐いたものの中にどこから拾ってきたのか、鶏の肝を置いておき、かの男に意見する。

 「・・・・こりゃ、人の腹の中には五臓といって五つの臓があって、それがあってこそ命があるものじゃ、見てみい、お前さんは酒ばかり飲んでいるからに、その五臓の一つを吐き出してしまったぞい、こんな事では命は長くないぞ、もう酒は止めることだ・・・」

 そう言われた男は平然としている。

 「いえ叔父様、一臓くらいはなんともありません」

 「なぜじゃ?」

 「もろこしには、二臓足りない「三法師」というお方もいらっしゃいます、それに比べれば私はまだ四臓も残っているのですから・・・・」


 当時大流行した小噺や笑い話、愛好家によるサークルもあり、集まっては新作を披露し合っていたと言います。
 「当世手打笑」も、そんな素人が持ち寄った笑い話を集めたもの。
 この話などは今でも笑えます。

 ちなみに、「五臓六腑に染みわたる」なんて事を言いますが、五臓とは心臓、肝臓、腎臓、肺臓、脾臓のこと。


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