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第十八話 何かが起こる女泣村の夜 ~菊のそっけない態度と謎の言葉~

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 幸介が菊と「男と女」の関係になった翌日・・・いつもと何も変わらない朝が始まる。

 ・・・それは幸介がちょっと拍子抜けするくらいだった。

 菊は昨晩の幸介との危険な情事などまるで忘れたかのように淡々と幸介に接し、にこやかな笑顔で普段通り世話をしてくれる。
 幸介もあえて昨晩の事には触れず、菊に対していつもどおりの挨拶をしたが、どうしても彼女の顔を真っ直ぐに見ることが出来なかった。

 ・・・・わからない・・・菊さんの考えていることが僕には・・・


 幸介は役場で仕事をしている最中も菊の不可思議な行動が頭にこびりついて離れなかった。
 いや、菊だけではない、改めてこの村の奇妙な点について気になり始めたのだった。

 ・・・そういえば、この村は八割が女性の「女村」で珍しい女系社会・・・そして西村さんの言うには、村では男の子はなかなか育たないし、無事育ったとしても病弱で子供も作れないといっていたな・・・。

 ・・・男には鬼門の村・・・。

 『この目名来村は男にとっては鬼門というか、あまり良くない土地らしいねぇ・・・「呪い」のようなものかなぁ』

 ・・・西村さんの言っていた「呪い」って一体何なんだろう・・・

 幸介は改めて西村の不思議な言葉を思い出す。

 ・・・そういえば、この村の「呪い」について、ずっと誰かに聞こうとしてすっかり忘れていたな・・・・今日帰ったら菊さんに聞いてみようか、この村に生まれた彼女ならきっと知っているだろう。


 役場のチャイムが午後五時を知らせると、幸介は挨拶もそこそこに役場の玄関を飛び出し、寄宿先の蜂ヶ谷の屋敷にに走る。
そして、夕食時になって給仕をしている菊にさりげなく聞いてみた。

 「・・・そういえば菊さん・・・僕がこの村に来た時に不思議に思った、この目名来村の由来と「伝説」についてなんですけどね・・・この村生まれの菊さんなら知っていますかね?僕もいつか役場の奥の部屋の書架で調べてみようと思っていたんですが、どうも横着してしまってね・・・もしよかったら教えてもらえませんか?その「伝説」というのを・・・」

 菊はちょっとハッとしたように黙り込むと、いつもと変わらない口調で返事をする。

 「・・・この村の名の由来・・・伝説ですか?」

 「ええ、この村、今は「目名来村」って書きますけど昔は女が泣く村・・・で「女泣村」っていっていたそうですね?・・・なんか面白い名前だなと思ってね」

 「幸介さん・・・村の由来や伝説については長い話になりますから・・・今ここでは・・・・そのうちまた機会を作ってお話しますわ・・・それより幸介さん?」

 「・・・うん?なにかな、菊さん?」

 「今夜から、ちょっと変わったことがあるかもしれませんが、どうか驚かないでくださいね・・・お願いします・・・」

 「・・・か、変わったこと・・・ですか?そりゃあ一体?・・・なにか幽霊でも出るのかな?アハハハッ!」

 「・・・いえ幽霊では・・・と、とにかく、何があっても驚かないように・・・どうかお願いします・・・あっ、あの・・・ご飯おかわりなさいますかっ?」


 菊は村の伝説や由来について明らかに話題を逸らし、かえって幸介が気になることを口にする。
 幸介はなにかモヤモヤした気持ちで夕飯を済ませると、いつもの通り湯殿へと向かい風呂に入った。

 「・・・幸介さん・・・お背中を流しますね・・・」

 幸介が楽しみにしている、湯殿での恒例となった行事・・・今夜も菊が湯文字一枚の艶っぽい姿となって湯殿へ入り、彼の背中を流してくれる。

 幸介は湯文字一枚の菊の形の良い乳房や、チラチラと透けて見える陰毛を横目で盗み見し、つい昨晩の事を思い出す。
 ほとんど強引に菊から誘惑し、避妊もせずに二度も彼女と交わった情熱の夜。

 ・・・柔らかなお椀型の乳房、雪のように白い桃尻、小鳥のような菊の甘いさえずり・・・

 そんな事を思い出しているうちに彼のペ〇スにグングンと血液が集まり出し、アッという間に完全に交尾の準備を整えた剛直が痛いほどに硬直し股間から反り返って湯殿の天井を仰いでしまう。
 既に「男の女」の間柄となった幸介と菊・・・上手くゆけばこの湯殿での秘密の情事も期待できるかもしれない。


 いつもなら、菊が幸介の背中に張りのある乳房を押し付け、後ろから両手を回してカチカチに硬直したペ〇スを撫でさすってくれるはずだ!
 彼はそれを期待して待っていたが、なぜか菊は、今夜に限って彼のペ〇スには指一本触れず、乳房の接触さえ避けるように努めて事務的に・・・無言で彼の背中を流し湯殿から下がってしまった。

 昨晩、自分と二度も交わった菊とはまるで別人のような態度・・・しかし、幸介は自分の方から菊に淫らがましい言葉をかけることは出来なかった、この屋敷に寄宿させてもらっている身として、それは出来ようはずはないのである。

 幸介はまたもや彼女の行動が理解できなかった。

 ・・・もしかして・・・・嫌われてしまったのかなぁ?・・・でも、どうして?


 彼がやや腑に落ちない顔で自分の部屋に戻ると、既に布団が敷いてあり菊がチョコンと襖の横にかしこまっていた。

 ・・・・その顔はやはりどこか他人行儀な・・・いや、やや緊張しているように幸介には思えた。

 「幸介さん、お布団を敷いておきました・・・それではわたくしはこれで・・・」

 「・・・あっ、菊さんっ・・・」

 「・・・・し、失礼します!」

 菊は幸介に挨拶をすると逃げるように部屋を出ようとする。

 「菊さん、ちょっと・・・ちょっと待って」

 「幸介さん・・・今夜は何があっても・・・受け入れて・・・」

 菊は幸介の方には振り向かずに、聞こえるか聞こえないかというほどの小声でそう言うと、音もさせずに襖を閉めてそのまま出ていてしまった。


 ・・・・今夜・・・一体何があるっていうのだろう・・・それに菊さんが言った言葉!・・・

 幸介はなにやら目隠しをされたようなモヤモヤした気持ちで布団に入り、気分転換にポオの詩集に手を伸ばしてパラパラとページをめくってみたが、普段は大好きな彼の詩も今夜は全く頭に入ってこなかった。




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